税務ニュース2023年09月29日 遺産未分割時の葬儀費用の債務控除者は(2023年10月2日号・№997) 葬儀を主宰し費用負担した共同相続人等である喪主の課税財産から控除
周知の通り、無制限納税義務者である相続人又は包括受遺者(以下、共同相続人等)が相続又は遺贈により取得した財産の価額から控除できる債務控除の金額は、被相続人の債務で相続開始の際に現に存するもののうち「その者の負担に属する部分の金額」に限られている(相法13①)。そして、遺産が未分割の場合における「その者の負担に属する部分の金額」とは、税務上、共同相続人等が実際に負担する金額が確定していなければ、民法900条~902条(法定相続分、代襲相続人の相続分、遺言による相続分の指定)までの規定に基づく相続分又は包括遺贈の割合に応じて負担する金額をいう(相基通13−3)。
もっとも、たとえ遺産が未分割でも、被相続人の葬儀は喪主によって執り行われるのが通常だ。この葬儀を主宰した共同相続人等である喪主が葬儀費用を負担していた場合、実務上、当該葬儀費用にも相基通13−3が適用されるのかが問題となる。この点、名古屋高裁平成24年3月29日判決は、まず①亡くなった者が予め自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず、かつ、②亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない場合には、追悼儀式に要する費用については同儀式を主宰した者、すなわち、「自己の責任と計算において」同儀式を準備・手配等し、挙行した者が負担することとしている。また、埋葬等の行為に要する費用については亡くなった者の祭祀承継者が負担するものと解するのが相当としている。
このように、被相続人に係る葬儀費用は「相続開始時に現存する被相続人の債務」ではないことから、特段の事情がない限り、葬儀を実施した者が負担するものと解するのが相当であり、ここでいう「葬儀を実施した者」とは葬儀を主宰した者、すなわち、一般的には「喪主」を指すことになる。ただし、喪主が形式的なものに過ぎない場合には、葬儀社等に対し葬儀に関する諸手続を依頼し、これに要する費用を交渉・決定した葬儀の主宰者が負担するものと解するのが相当とした裁決事例がある(平成27年6月3日公表裁決)。
要は、葬儀を主宰した共同相続人等である喪主が葬儀費用を負担した場合には相基通13−3の適用はなく、葬儀費用は同人の課税財産の価額から控除することになる。
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