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解説記事2020年01月27日 税務マエストロ 中小事業者の特例計算(売上税額の特例計算)(2020年1月27日号・№820)

税務マエストロ
中小事業者の特例計算(売上税額の特例計算)
 税理士 熊王征秀

マエストロの解説

 二度にわたる増税延期などの影響もあり、中小事業者の軽減税率制度への対応は驚くほどに停滞しているようである。複数税率の時代となったものの、売上高や仕入高を税率ごとに区分することが困難な中小事業者は、相当数存在するものと思われる。
 今月からは、中小事業者について認められている売上税額や仕入税額の特例計算について確認する。

1 売上高を税率ごとに区分できない場合の特例

 基準期間における課税売上高が5,000万円以下の中小事業者で、売上高を税率の異なるごとに区分することにつき困難な事情がある事業者については、次の図表1の割合により売上高を税率ごとに区分することが認められている(平成28年改正法附則38・改正令附則14①②)。

(1)仕入割合(小売等軽減仕入割合)
 卸売業や小売業は、仕入商品にマージンを乗せて販売するので、仕入高の合計額に占める軽減税率が適用される仕入高の割合が売上比率とおおむね連動することになる。そこで、次の図表2の「仕入割合」を図表3の算式に当てはめて、軽減税率対象課税売上高と標準税率対象課税売上高を計算することが認められているのである。

 なお、税込課税売上高を仕入割合によりあん分計算する関係上、「仕入割合」も税込課税仕入高を基に計算することに注意する必要がある。
(2)10営業日割合(軽減売上割合)
 「10営業日割合」とは、任意の10日間の売上高を基に下記図表4の算式で計算した割合を、上記図表3の算式に当てはめて、軽減税率対象課税売上高と標準税率対象課税売上高を計算する方法である。

 「仕入割合」は卸売業と小売業に限り適用が認められていたのに対し、「10営業日割合」は、すべての事業について採用できるので、卸売業や小売業であっても当然に適用は可能となる。
(3)50%の割合
 50%の割合による計算は、仕入割合や10営業日割合による計算が困難な事業者に限り、適用が認められている(平成28年改正法附則38④)。また、「おおむね」の要件については、軽減通達23と国税庁のパンフレット(消費税軽減税率制度の手引き-令和元年8月版(国税庁)42~43頁)で、飲食料品の販売対価が課税売上高のおおむね50%以上という書き方をしている。
 そうすると、50%の割合を採用することができる飲食料品などを取り扱う事業者は、50%の割合により計算すると必ず不利になり、納税額が増加することになる。よって、50%の割合の適用に当たっては、慎重な判断が必要になりそうだ。

2 困難な事情と有利選択の是非

 「仕入割合」や「10営業日割合」による計算は、税率ごとに売上高の管理が行えない場合に認められている簡便計算であるが、その適用に当たっては、困難の度合いを問わないこととされている(軽減通達21)。
 よって、実務では「仕入割合」と「10営業日割合」の有利選択が可能となる。また、「10営業日割合」の計算期間は、適用対象期間中であればいつでもよいことになっているので、実務上は最も有利になる期間を切り取って採用することができる。
 ただし、飲食料品のみを対象としたバーゲンセールなど、特別な営業日の売上高は、「10営業日割合」の計算に含めることはできない。このような営業日がある場合には、その日を除いたところで「10営業日割合」を計算することになるので、図表5のケースでは、1日~5日と8日~12日の売上高で「10営業日割合」を計算することができる(軽減通達22)。

3 売上税額の簡便計算の選定単位

 複数の事業を営む中小事業者が、仕入割合と10営業日割合を併用することは禁止されている。ただし、複数の事業を事業ごとに区分した上で、区分した事業ごとの売上高に、仕入割合又は10営業日割合のいずれかの特例を適用することは認められている(平成28年改正法附則38②前文・国税庁のパンフレット(消費税軽減税率制度の手引き-令和元年8月版(国税庁)48頁)。
 例えば、家賃収入と商品売上高がある事業者の場合であれば、家賃収入は10%税率の売上高として区分した上で、商品売上高を仕入割合又は10営業日割合のいずれかの方法により計算することができるということである。
<具体例>
 ハンバーガーやドリンクなどを提供するファストフード店において、イートイン《店内飲食》の売上高(標準税率)とテイクアウト《持ち帰り》の売上高(軽減税率)を区分することができないため、その合計額を飲食売上高として処理している。また、レジの隣に仕入商品を陳列して販売しているが、仕入商品には飲食料品とおもちゃがあり、この売上高も区分することができないため、その合計額を小売売上高として処理している。
 このようなケースでは、図表6のような組み合わせによる計算ができることになる。

 また、国税庁のパンフレット(消費税軽減税率制度の手引き-令和元年8月版(国税庁)49頁)によると、複数の事業を営んでいる事業者は、事業ごとに異なる10営業日割合を採用することができることになっている。
 例えば、A事業とB事業を営んでいる事業者が、それぞれの事業ごとに異なった10営業日割合を採用する場合の具体的な計算は次頁<計算例>のようになる。

4 売上税額の簡便計算の適用期間

 売上税額の簡便計算は、決算期に関係なく、令和元年10月1日から令和5年9月30日までの期間に限り、適用が認められている。よって、3月決算法人の適用期間は図表7のようになる。

 また、簡便計算を適用した場合であっても、その後課税売上高が増加して基準期間における課税売上高が5,000万円を超えることとなった場合には、その課税期間については当然に簡便計算は使えないこととなる。

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