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解説記事2023年10月23日 未公開裁決事例紹介 国外公社債等の利子等か否かを巡る裁決(2023年10月23日号・№1000)

未公開裁決事例紹介
国外公社債等の利子等か否かを巡る裁決
国内の支払の取扱者を通じての交付にあらず


〇国外公社債等の利子等に該当するか争われた裁決。国税不服審判所は、本件社債利子はその支払を代理した各国外決済機関から請求人が交付を受けたものであって、国内における支払の取扱者を通じて交付を受けたものではないと指摘。したがって、本件社債利子は、国外公社債等の利子等に該当し、国内における支払の取扱者を通じて交付を受けたものではないから、確定申告を要しない利子等に該当しないとして、請求人の請求を棄却した(東裁(所)令4第52号、棄却)。

主  文

 審査請求をいずれも棄却する。

基礎事実等

(1)事案の概要
 本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)が支払を受けた社債利子は利子所得に当たるとして所得税等の更正処分等をしたのに対し、請求人が、当該社債利子に係る利子所得は、租税特別措置法第8条の5《確定申告を要しない配当所得等》第1項の規定により確定申告を要しない所得であるとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2)関係法令(略)
(3)基礎事実

 当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ 請求人は、平成29年分、平成30年分、令和元年分及び令和2年分の各年分(以下「本件各年分」という。)において、国内に住所を有していた。
ロ 請求人は、本件各年分において、別表1のとおり、××××××××が平成27年7月28日に国外において発行したアメリカ合衆国ドル建ての社債(以下「本件社債」という。)に係る利子(以下「本件社債利子」という。)の支払を受けた。
  なお、本件社債利子の支払期日は、平成28年1月30日以降、毎年1月30日及び7月30日とされていた。
ハ 本件社債は、国外の国際証券決済機関であるユーロクリア及びクリアストリーム(以下、ユーロクリア及びクリアストリームを併せて「本件各国外決済機関」という。)を通じて、購入者に交付された。
ニ 本件社債利子の原資は、××××から本件各国外決済機関へ送金され、本件社債の各保有者へ利子が支払われた。その際、本件各国外決済機関は、本件社債の各保有者が日本の非居住者であることを確認できなかった場合には、利子の額から当該金額の15.315%相当額を差し引いて支払を行い、当該差引額を××××に返金した。
(4)審査請求に至る経緯
イ 請求人は、本件各年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)について、各確定申告書に別表2の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。
ロ 請求人は、平成29年12月31日分国外財産調書を平成30年3月20日に、平成30年12月31日分国外財産調書、令和元年12月31日分国外財産調書及び令和2年12月31日分国外財産調書をいずれも提出期限内に、それぞれ提出した(以下、請求人が提出した各国外財産調書を併せて「本件各国外財産調書」という。)。
  なお、本件各国外財産調書には、いずれも本件社債が記載されていた。
ハ 請求人は、令和3年2月25日、平成29年分から令和元年分までの所得税等について、別表2の「修正申告」欄のとおりとする各修正申告書を提出した。
ニ 請求人は、令和3年5月31日、令和2年分の所得税等について、別表2の「修正申告」欄のとおりとする修正申告書を提出した。
  なお、請求人は、本件各年分の所得税等のいずれの申告においても、本件社債利子をその所得計算に含めていなかった。
ホ 原処分庁は、本件社債利子が利子所得に当たるとして、令和3年10月29日付で、別表2の「更正処分等」欄のとおり、本件各年分の所得税等の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
へ 請求人は、本件社債利子に係る利子所得は、措置法第8条の5第1項の規定により確定申告を要しない所得であり、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分に不服があるとして、令和3年12月14日に審査請求をした。

争点および主張

 本件社債利子に係る利子所得について、措置法第8条の5第1項の規定は適用できないか否か。具体的には、本件社債利子は、措置法施行令第4条の3第1項第5号に規定する「国外公社債等の利子等(国内における支払の取扱者を通じて交付を受けるもの及び恒久的施設を有する非居住者が支払を受けるものを除く。)」に該当するか否か。(争点に対する主張はのとおり)

【表】争点についての主張

原処分庁 請求人
 本件社債は、××××が平成27年7月28日に国外で発行したアメリカ合衆国ドル建ての社債であり、外貨建公社債に該当しない。
 また、本件社債利子は、本件各国外決済機関を通じて支払われたものであることから、平成28年1月1日以後に支払を受けるべき国外において発行された公社債の利子で、国外において支払われたものである。
 そして、本件各国外決済機関は、国外公社債等の利子等の受領の媒介、取次ぎ又は代理を国内においてする者ではない。
 したがって、本件社債利子は、措置法施行令第4条の3第1項第5号に規定する「国外公社債等の利子等(国内における支払の取扱者を通じて交付を受けるもの及び恒久的施設を有する非居住者が支払を受けるものを除く。)」に該当する。
 以上から、本件社債利子に係る利子所得について、措置法第8条の5第1項の規定は適用できない。
 本件社債利子の支払及びそれに伴う源泉徴収に係る所得税の納付の主体は××××であるから、同社は本件社債利子の支払者であるとともに、措置法施行令第4条の3第1項第5号に規定する「支払の取扱者」であるといえる。
 したがって、本件社債利子は、国内における支払の取扱者を通じて交付を受けたものであるから、措置法施行令第4条の3第1項第5号に規定する「国外公社債等の利子等(国内における支払の取扱者を通じて交付を受けるもの及び恒久的施設を有する非居住者が支払を受けるものを除く。)」に該当しない。
 そして、本件社債利子は、措置法第8条の5第1項第7号に規定する「特定公社債の利子」に該当するから、本件社債利子に係る利子所得について、同項の規定が適用できる。

審判所の判断

(1)認定事実
 原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ 請求人は、本件各年分において、本件社債利子を、シンガポール共和国所在の××××及び××××の各請求人名義預金口座へ入金される方法により、支払を受けた。
ロ 上記イの各預金口座へ入金された金額は、本件社債利子の金額から当該金額に15.315%を乗じた金額が、源泉徴収に係る所得税等相当額として控除された後のものであった。
(2)検討
イ 法令上の要件について
 措置法第8条の5第1項は、居住者が平成28年1月1日以後に支払を受けるべき所得税法第23条第1項に規定する利子等で措置法第8条の5第1項各号に掲げるものを有する場合、当該利子等に係る利子所得については確定申告を要しない旨規定している。
 一方、措置法第8条の5第1項、措置法施行令第4条の3第1項本文及び同項第5号は、措置法第3条の3第2項に規定する国外公社債等の利子等で国内における支払の取扱者を通じて交付を受けるもの及び恒久的施設を有する非居住者が支払を受けるもの以外のものについては、措置法第8条の5第1項の規定の適用対象となる利子等から除く旨規定している。
 そして、上記のとおり、請求人は本件各年分において国内に住所を有していたことに争いはなく、居住者であったと認められる。
 そうすると、本件社債利子が上記各規定により確定申告を要しない利子等に該当するためには、①本件社債利子が国外公社債等の利子等に該当しないか、②仮に国外公社債等の利子等に該当する場合には、本件社債利子が国内における支払の取扱者を通じて交付を受けたものである必要があるので、以下順に検討する。
ロ 本件社債利子が国外公社債等の利子等に該当するか否かについて
(イ)国外公社債等の利子等については、措置法第3条の3第2項は、外貨建公社債を除く平成28年1月1日以後に支払を受けるべき国外において発行された公社債等の国外において支払われる所得税法第23条第1項に規定する利子等である旨規定し、また、外貨建公社債については、措置法第3条の3第1項及び措置法施行令第2条の2第1項は、国若しくは地方公共団体又はその他の内国法人が昭和60年3月31日以前に国外において発行した公社債で外国通貨で表示されたものとする旨規定している。
  そうすると、本件社債利子が国外公社債等の利子等に該当するか否かは、①本件社債が外貨建公社債に該当しないか否か、②本件社債利子が平成28年1月1日以後に支払を受けるべき国外において発行された公社債等の国外において支払われる所得税法第23条第1項に規定する利子等であるか否か、以上により決まることとなる。
(ロ)これを本件についてみると、まず、本件社債は、上記のとおり、××××が平成27年7月28日に発行した社債であり、昭和60年3月31日以前に発行されたものではないから、外貨建公社債には該当しない。
  次に、本件社債利子は、上記のとおり、××××が国外において発行した社債に係る利子であり、請求人が、平成28年1月1日以後である本件各年分の各支払期日に支払を受けたものであること及び上記のとおり、本件社債利子の原資は、××××から本件各国外決済機関へ送金され、その後に本件社債の各保有者へ支払われたことからすると、本件社債利子は、平成28年1月1日以後に支払を受けるべき国外において発行された公社債等の国外において支払われる所得税法第23条第1項に規定する利子等に該当するものと認めるのが相当である。
  したがって、本件社債利子は国外公社債等の利子等に該当する。
ハ 本件社債利子が国内における支払の取扱者を通じて交付を受けたものであるか否かについて
 上記の各事実に加え、本件社債は本件各国外決済機関を通じて交付されたものであり、本件各国外決済機関は、本件社債の各保有者が日本の非居住者であることを確認できなかった場合には、利子の額から当該金額の15.315%相当額を差し引いて支払を行っていたところ、請求人は本件各年分において国内に住所を有していたことから日本の居住者に該当し、本件社債利子の金額から当該金額の15.315%を乗じた金額が源泉徴収に係る所得税等相当額として控除された後のものを××××及び××××の各請求人名義預金口座へ入金される方法により支払を受けたことがそれぞれ認められる。
 以上から、本件社債利子は、その支払を代理した本件各国外決済機関から請求人が交付を受けたものであって、国内における支払の取扱者を通じて交付を受けたものではない。
ニ したがって、本件社債利子は、国外公社債等の利子等に該当し、国内における支払の取扱者を通じて交付を受けたものではないから、確定申告を要しない利子等に該当しない。すなわち、本件社債利子に係る利子所得について、措置法第8条の5第1項の規定は適用できない。
(3)請求人の主張について
 請求人は、本件社債利子の支払及びそれに伴う源泉徴収に係る所得税の納付の主体は××××であるから、××××は本件社債利子の支払者であるとともに、措置法施行令第4条の3第1項第5号に規定する「支払の取扱者」であるといえる旨主張する。
 この点、本件社債を発行した××××は、当然に本件社債利子の支払者であり、また、本件社債利子は措置法第6条《民間国外債等の利子の課税の特例》第1項に規定する民間国外債に該当し、××××は、同条第2項の規定に基づき、本件社債利子の支払の際に所得税を徴収して国に納付しなければならないこととなるから、請求人の主張するとおり、本件社債利子の支払者及びそれに伴う源泉徴収に係る所得税の納付の主体は××××である。
 しかしながら、措置法施行令第4条の3第1項第5号に規定する「支払の取扱者」とは、措置法施行令第2条の2第2項において、「国外公社債等の利子等の受領の媒介、取次ぎ又は代理(業務として又は業務に関連して国内においてするものに限る。)をする者」である旨規定されているところ、本件社債利子の原資は、××××から本件各国外決済機関へ送金され、その後に本件社債の各保有者へ支払われていることからすると、本件社債利子はその支払を代理した本件各国外決済機関から請求人が交付を受けたものであるから、××××が本件社債利子の受領の媒介、取次ぎ又は代理を行っていないことは明らかであって、××××は措置法施行令第4条の3第1項第5号に規定する「支払の取扱者」に当たらない。
 したがって、請求人の主張には理由がない。
(4)本件各更正処分の適法性について
 本件各年分において、本件社債利子に係る利子所得に対し措置法第8条の5第1項の規定は適用できない。これに基づき、本件各年分の所得税等の総所得金額及び納付すべき税額を計算すると、いずれも本件各更正処分の金額と同額となる。そして、本件各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件各更正処分はいずれも適法である。
(5)本件各賦課決定処分の適法性について
 上記(4)のとおり、本件各更正処分は適法であり、また、本件各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 また、本件各国外財産調書にはいずれも本件社債が記載されていた。そして、平成30年12月31日分国外財産調書、令和元年12月31日分国外財産調書及び令和2年12月31日分国外財産調書については、いずれも提出期限内に提出されており、平成29年12月31日分国外財産調書は提出期限後に提出されているものの、当該国外財産調書の提出は本件社債に係る所得税についての調査があったことにより本件社債に係る所得税等について更正があるべきことを予知してされたものではない。そうすると、本件各年分の過少申告加算税の額は、国税通則法第65条の規定に基づき計算した金額から、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第6条《国外財産に係る過少申告加算税又は無申告加算税の特例》第1項の規定により計算した金額を控除することとなる。
 以上に基づき、本件各年分の所得税等に係る過少申告加算税の額を計算すると、いずれも本件各賦課決定処分の金額と同額となる。
 したがって、本件各賦課決定処分はいずれも適法である。
(6)結論
 よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり裁決する。

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