解説記事2023年11月13日 SCOPE 事前確定届出給与を巡り審判所が原処分の全部を取消し(2023年11月13日号・№1003)
過去の職務執行期間の業績は参考情報にすぎず
事前確定届出給与を巡り審判所が原処分の全部を取消し
事前確定届出給与に該当するか争われた裁決で、国税不服審判所は、各役員給与は毎月の定額報酬と同様、職務執行期間の職務執行の対価として決議されたものであり、事前確定届出給与の要件を充足しているとの判断を示し、原処分の全部を取り消した(仙裁(法)令4第11号)。また、請求人が外国で課された罰金を分割払いしたことによる利息が罰金に該当するか否かも争点となっていたが、日本の罰金等に相当するものとは認められないとしてこちらも原処分を取り消している。
各役員給与は職務執行期間の職務執行の対価として決議
本件は、請求人が事前確定届出給与として所轄税務署長に提出した届出書に基づき支給した給与の額及び請求人が外国から課された罰金を分割払いしたことによる利息の額を、それぞれ支払った事業年度の損金の額に算入して法人税の申告をしたのに対し、原処分庁が役員給与は過去の職務執行の対価であることから事前確定届出給与には該当せず、また、利息は罰金に相当するものに該当するため、いずれも損金の額に算入できないとして法人税の更正処分を行ったことからその全部の取消しを求めた事案である。
請求人は取締役会設置会社であり、定款で取締役の任期は選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする旨を定め、事業年度ごとに定時株主総会において取締役を選任している。また、取締役の報酬については、定款で株主総会において定めるとし、各取締役の支給額等については取締役会に一任することになっている。
原処分庁、過去の職務執行の対価と主張
請求人は、各役員給与は支給を決定した取締役会と同日に開始する職務執行期間の職務執行の対価であるから、各届出書は職務の執行の開始の日から1月を経過する日までに提出されていると主張。一方、原処分庁は、請求人が事前確定届出給与として届け出た各役員給与は、過去の職務執行期間の業績を考慮して決定されていたことから、過去の職務執行期間の対価であると認められるため、届出は、職務執行開始の日から1月を経過する日までにされていないことになること、また、法人の業績を示す指標を基礎として算定されており業績連動給与に該当することから、事前確定届出給与に該当しないと主張した。
次の株主総会までの取締役報酬を決議
審判所は、取締役の報酬等の額については、毎事業年度の終了後一定の時期に招集される定時株主総会の決議(本件では取締役会の決議)により、次の定時株主総会までの間の取締役会の報酬等の支給時期及び支給額が定められるのが一般的であるとした上で、請求人の定時株主総会と同日開催の取締役会の議事録には、各役員給与をいつの職務執行に対する役員給与として決定したかを明確に示す記載はないものの、各役員給与が過去の職務執行の対価であることをうかがわせる記載もなく、むしろ、請求人が各役員給与を、同日開催された定時株主総会で選任(再任)された各取締役を対象に、職務執行期間における職務執行の対価と認められる毎月の定額報酬の額と合計した上で承認していたことからすれば、各役員給与は毎月の定額報酬と同様、職務執行期間の職務執行の対価として決議されたと考えるのが自然であるとした。
また、各役員給与は業績評価期間(過去の職務執行期間)の業績を考慮して算定されたものではあるものの、各役員給与の支給額はあくまで業績評価期間後の取締役会の決議により初めて決定するものであって、業績評価期間の業績等はその具体的な支給額の決定のために用いられる指針ないし参考情報にすぎないから、各役員給与は過去の職務執行期間の対価とは認められず、業績連動給与にも該当しないと指摘。したがって、審判所は、各役員給与は事前確定届出給与の要件を充足しているとの判断を示した。
事前確定届出給与とは
事前確定届出給与とは、その役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭等を交付する旨の定めに基づいて支給される給与で、定期同額給与及び業績連動給与のいずれにも該当しないもの。事前確定届出給与に関する定めをした場合は、原則として、①株主総会等の決議によりその定めをした場合におけるその決議をした日(その決議をした日が職務の執行を開始する日後である場合にはその開始する日)から1か月を経過する日又は②その会計期間開始の日から4か月を経過する日のうちいずれか早い日までに所定の届出書を提出する必要がある。
刑事訴訟手続を経ても刑罰として認められない場合は罰金に該当せず
もう1つの争点は、請求人が外国で課された罰金を分割払いしたことによる利息が罰金等に該当するか否かだ。
審判所は、本件利息については判決によって、請求人に対し、罰金元本とともに納付することが命じられたものであり、刑事訴訟手続を経て課されるものと認められるが、法人税法が「外国又はその地方公団体が課する罰金又は科料に相当するもの」(法法55条⑤一)と限定的に規定している趣旨を踏まえると、利息がその支払の原因となった行為に対する刑事上の制裁としての性格が認められない場合には、同号に規定する「外国又はその地方公団体が課する罰金又は科料に相当するもの」には該当しないとの見解を示した。
本件について審判所は、判決の日から罰金を支払わない場合に日歩で利息を付するとしていることからすると、商品代金の分割払いに係る一般的な利息計算と同様、支払を一定期間猶予することに対して経済的な見返りを求めるものと見ることができるとしたほか、利息は請求人の行為に対する刑罰と認めるに足る根拠はなく、日本の罰金又は科料に相当するものとは認められないとの判断を示した。
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