カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2023年12月04日 SCOPE LLPは外国法人に該当、構成員課税適用の原処分取消し(2023年12月4日号・№1005)

審判所、LLP事業から生じた所得は「雑所得」
LLPは外国法人に該当、構成員課税適用の原処分取消し


 米国で組成されたLLPが法人に該当するか否かが争われた裁決で、国税不服審判所は、本件LLPは自ら法律行為の当事者となることができ、かつ、その法律効果がLLPに帰属するものということができることから、外国法人に該当するとの判断を示し、原処分を取り消した(大裁(所)令4第31号)。また、請求人がLLPから得た利益については、LLP契約の定めに基づき、LLPの各年分の純利益を資本割合に応じて請求人の分離資本勘定に組み入れることによって生じたものであるから、雑所得に該当するとの判断を示した。

平成27年最高裁判決に従いLLPが法人に該当するか判断

 本件は、請求人が所得税等の確定申告に当たり、米国において組成したリミテッド・ライアビリティー・パートナーシップ(以下「LLP」)の事業活動から生じた所得を請求人の所得に含めずに申告したが、原処分庁は、LLPは任意組合等に該当し、パス・スルー課税(構成員課税)が適用されるとして、LLP事業活動から生じた所得を請求人の事業所得とする所得税等の更正処分等を行ったことから、請求人が原処分の全部の取消しを求めた事案である。
 原処分庁は、本件LLPは、設立根拠法令である州PS(パートナーシップ)法上、日本法上の法人に相当する法的地位を付与されていないことが疑義のない程度に明白であり、また、権利義務の帰属主体であるとは認めることができないため、外国法人には該当せず、任意組合等に該当するから、LLPの事業活動から生じた所得は、構成員である請求人に直接帰属し、請求人の事業所得に該当すると主張。一方、請求人は、本件LLPは外国法人に該当するとした上、LLPの事業活動から生じた所得をLLPの事業活動から生じた利益の分配として受領しており、当該分配は「法人から受ける剰余金の配当」に類似するものであることから、配当所得に該当すると主張した。
判断基準は2点
 審判所は、外国法に基づいて設立された組織体が事業を行う組織体が外国法人(所法2条①七、法法2条四)に該当するか否かを判断するに当たっては、平成27年最高裁判決を踏まえ、①組織体に係る設立根拠法令の規定の文言や法制の仕組みから、組織体が外国の法令において日本法上の法人に相当する法的地位を付与されていること又は付与されていないことが疑義のない程度に明白であるか否かを検討することになり(判断基準①)、これができない場合には、次に、②組織体が権利義務の帰属主体であると認められるか否かを検討して判断すべきものであり、具体的には、組織体の設立根拠法令の規定の内容や趣旨等から、組織体が自ら法律行為の当事者となることができ、かつ、その法律効果が組織体に帰属すると認められるか否かという点を検討することとなるもの(判断基準②)と解されるとした。
 その上で、審判所は、まず判断基準①に関して検討。州PS法では、パートナーシップについて、パートナーとは別個の主体(an entity distinct from its partners)であると規定しているが、州PS法を含む米国の法令において「entity」が日本法上の法人に相当する法的地位を指すものであるか否かは明確でなく、パートナーとは別個の主体とされていることをもって直ちに日本法上の法人に相当するということはできないから、「an entity distinct from its partners」であるとされる組織体が日本法上の法人に相当する法的地位を有すると評価することができるか否かについても明確ではないといわざるを得ないとした。
 次に判断基準②では、州PS法は、利益を目的に2名以上の者が共同所有者として事業を行う団体をパートナーシップといい、この事業には、すべての取引、職業及び専門職を含み、パートナーシップが行うことができる事業について制限を設ける規定は置いていないことなどからすると、本件LLPは、自ら法律行為の当事者となることができ、かつ、その法律効果がLLPに帰属するものということができるから、権利義務の帰属主体であると認められると指摘。本件LLPは、日本の租税法上の法人に該当し、外国法人に該当するとの判断を示した。
外国法人か否かは個別具体的な判断
 原処分庁は、LLPが外国法人に該当するとの判断は、統一法に準拠した州法に基づいて組成された米国のパートナーシップはすべて外国法人に該当すると判断するのと同じであり、所基通36・37共−19の「外国におけるこれらに類するもの」に当たるものが存在し得ないこととなるなど、通達の趣旨に照らして不合理であると主張したが、本件LLPが権利義務の帰属主体であると認められるとの判断は、あくまで州PS法を準拠法とする本件LLPに関しての個別具体的な判断であるから、当該判断をもって、統一法に準拠した州法に基づいて組成された米国のパートナーシップがすべて外国法人に該当することにはならないとした。
LLPの組成契約による配分はなされず
 本件LLPは外国法人に該当するとの判断が示されたが、請求人がLLPから得た利益については、LLP契約の定めに基づき、LLPの各年分の純利益を資本割合に応じて請求人の分離資本勘定に組み入れることによって生じたものであるから、利子所得、不動産所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しないことは明らかであり、雑所得に該当するとの判断を示した。
 本件利益は、LLPの組成契約の定めに従った配分はなされておらず、LLPの各パートナーが、各自の必要に応じて都合のよいときにLLPの銀行預金口座から出金することを認めていたことからすると、各パートナーは、LLPから各自の分離資本勘定の残高の金額を限度として、LLPの銀行預金口座を自由に管理支配できる権限を与えられていたものといえることから、請求人が収入すべき金額は、請求人の分離資本勘定への組入額となると指摘。そして、その所得区分は、LLPと各パートナーとの間において、LLP契約に定める分配が省略されていたことから、配当所得には当たらないとした。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索