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解説記事2023年12月11日 税務マエストロ お問合せの多いご質問(2023年12月11日号・№1006)

税務マエストロ
お問合せの多いご質問
#294
 税理士 熊王征秀

マエストロの解説

 令和5年11月13日に「お問合せの多いご質問」が更新された。冒頭に「お問合せの多いQ&A TOP10」なるものが新設されており、国税庁が様々な工夫を凝らし、事業者の利便性に配慮しながらインボイス制度の定着を図ろうとしている様子が伺われる。
 ただ、事業者に気を遣うあまり、参考資料のタイトルが逆にわかりづらくなってしまっていることが残念である。国税庁が公表している資料には、「お問合せの多いご質問」のほか、「インボイス制度において事業者が注意すべき事例集」、「インボイス制度の開始に向けて特にご留意いただきたい事項」、「公表サイトに関するよくある質問」、「適格請求書発行事業者公表サイトの運営方針」など、紛らわしい名称の資料が乱発されている。このほかにも、財務省から「インボイス制度の負担軽減措置のよくある質問とその回答」なるものも公表されているので、これらの情報を一覧にして整理していただかないと、収拾が付かないような気がしている。ついでに言えば、内容のイメージが重複してしまうような中途半端なタイトルは一掃して、もう少しセンスの良いタイトルにしていただきたい。
 更新された「お問合せの多いご質問」を読んでみると、従来のものは既存のQ&Aから図表などを抜粋して並べ替えただけという、ある意味手抜きの資料であったのに対し、今回更新されたものは、既存のQ&Aに+αの情報が多く掲載されているようである。
 そこで本稿では、令和5年11月13日にリニューアルされた「お問合せの多いご質問」について、その内容を検討する。

問①(登録申請の処理状況及び自らの登録番号の確認方法)

 私は先日、適格請求書発行事業者の登録申請書を提出しましたが、まだ登録通知を受けていません。登録申請の処理状況を確認したい場合は、どうしたらよいでしょうか。
 また、自分の登録番号が記載されている通知書を紛失してしまった場合、どうすればよいでしょうか。

<ポイント>
1 登録申請の処理状況の確認方法

 登録申請書を提出してから登録通知までに要する期間は、「インボイス制度特設サイト」の「適格請求書発行事業者の登録件数及び登録通知時期の目安について」に掲載されているので、まずはこの登録通知時期の目安を確認したうえで、必要に応じてインボイス登録センターへ状況確認のための問合せをされたい。
2 登録番号がわからなくなった場合の確認方法
 登録済の事業者が登録番号を確認したい場合には、インボイス登録センターの案内ページに記載の問合せ先に問合せをすることができる。
 法人番号を有する法人の登録番号は「T+13桁の法人番号」となる(法人番号については、「国税庁法人番号公表サイト」で検索ができる)。
 また、登録通知をe-Tax(電子データ)で受領することを希望した場合、e-Tax(電子データ)で確認ができる(具体的な確認手順は、「インボイス制度特設サイト」の「申請手続」にある「登録通知データ確認マニュアル」を参照)。

問②(適格請求書発行事業者公表サイトの検索結果とレシート表記が異なる場合)

 屋号が記載されたレシート(適格簡易請求書)の交付を受けました。当該レシートに記載された登録番号に基づき、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」にて検索した結果、事業者の氏名又は名称のみが表示され、屋号は表示されませんでした。このような場合、当社は仕入税額控除の適用を受けてよいのでしょうか。

<ポイント>
 電話番号等によりインボイスを交付した事業者を特定することができるのであれば、インボイスに記載する氏名・名称は、屋号や省略した名称などの記載で差し支えないこととされている(インボイスQ&A問55)。
 こういった理由から、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」に表示された事業者が、インボイスに記載された屋号の事業者と同一かどうかがわからないことも考えられるところであるが、この「公表サイト」は、取引先から受領した請求書等に記載されている登録番号が取引時点において有効なものかを確認するために利用されるものであるため、その登録番号の有効性が確認できれば、有効なインボイスとして取り扱って構わないようである。
(参考)
 「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」に表示される事業者名とレシートに表記した屋号等が異なる場合、売手が顧客から問合せを受けることが考えられる。
 この場合の対策として、次のような方法を検討することも必要かと思われる。

問③(手書きの領収書による適格簡易請求書の交付)

 当社は旅館を経営しており、企業に懇親会でご利用いただくこともあります。領収書の発行を求められたときには手書きで領収書を作成し、交付してきました。これを適格請求書等とするためには、宛名や税率ごとの対象金額・消費税額を明記して交付しなければならないのでしょうか。
 また、温泉に入浴した顧客から受け取る対価には入湯税など課税対象外のものも含まれていますが、どのように記載したらよいでしょうか。

<ポイント>

問④(免税事業者の交付する請求書等)

 私は、免税事業者である個人事業者です。適格請求書等保存方式においては適格請求書発行事業者しか適格請求書を交付できないとのことですが、免税事業者はこれまで出していたような請求書や領収書等を交付することはできないのでしょうか。

<ポイント>
 免税事業者が消費税相当額を領収書に記載することは法令上問題とはならない。ただし、登録番号(T+13桁の数字)と類似した英数字や他の事業者の登録番号を記載した書類は「インボイス類似書類」に該当し、罰則の適用対象となるので注意が必要だ。
 また、免税事業者から課税仕入れを行う事業者は、区分記載請求書等の記載要件を満たした書類を保存しなければ、80%控除の経過措置を適用することができない(インボイスQ&A問113)。
(注)書類の交付を受ける事業者は、区分記載請求書であるかどうかに関係なく、必要経費(損金)として処理することができる。

問⑤(免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置の適用を受ける場合の請求書等)

 当社の取引先に適格請求書発行事業者以外の方がいるのですが、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置を受けるためには、どのような請求書や電磁的記録を保存すればよいのでしょうか。また、受け取った請求書等に「軽減対象資産の譲渡等である旨」等の記載がなかった場合、当社で追記することはできるのでしょうか。

<ポイント>
 非登録事業者からの課税仕入れにつき、経過措置の適用を受けるためには、「80%控除対象」など、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載をした帳簿及び区分記載請求書等の保存が必要となる。
 また、「軽減対象資産の譲渡等である旨」及び「税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額」については、受領者が自ら請求書等に追記して保存することが認められる。
(注)電磁的記録については、整然とした形式及び明瞭な状態で出力した書面に追記して保存することもできる。

問⑥(買手による適格請求書の修正)

 取引先から受領した適格請求書の記載事項に誤りがありました。この場合、取引先から修正した適格請求書の交付を受けなければならないと思いますが、例えば、取引先に電話等で修正事項を伝え、取引先が保存している適格請求書の写しに同様の修正を行ってもらえば、自ら修正を行った適格請求書の保存で仕入税額控除を行ってもよいでしょうか。

<ポイント>
 受領した適格請求書に買手が自ら修正を加えたものであっても、修正事項について売手に確認を受けることで、その書類はインボイスであるのと同時に修正した事項を明示した仕入明細書等にも該当することから、その書類を保存することで、仕入税額控除の適用を受けることができる。
 なお、これらの対応を行った場合でも、売手において当初交付した適格請求書の写しを保存しなければならない。また、売手において、売上税額の積上げ計算を行う場合には、確認を行った仕入明細書等を適格請求書等の写しと同様の期間・方法により保存する必要がある。

(参考)
 適格請求書や仕入明細書等の修正については下記のQ&Aにおいて解説がされている。

問⑦(適格請求書発行事業者からの課税仕入れに係る経過措置の適用等)

 当社は、仕入先が多数あり、登録番号の記載のない請求書の交付を受けることも多くあります。この場合、適格請求書発行事業者から交付を受けた登録番号の記載のない請求書等を含め、登録番号の記載のない請求書等については、一律に、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受けてもよいでしょうか。

<ポイント>
 経過措置の適用は、取引の相手方が適格請求書発行事業者以外の者である場合に限らない。よって、適格請求書発行事業者から登録番号のない書類の交付を受けた場合には、区分記載請求書等の記載要件を満たすものであれば、あえてインボイスの発行を求めずに80%控除の経過措置を適用することができる。

問⑧(売手が負担する振込手数料相当額に係る適格返還請求書)

 当社は飲食料品を販売しており、取引は全て軽減税率(8%)対象となります。
 銀行振込みで代金請求するに当たり、取引当事者の合意の下で買手が振込手数料相当額を請求金額から差し引いて支払うこととしています(代金請求の際に既に適格請求書を交付しています)。売手である当社としては、売上げに係る対価の返還等として経理処理することとしていますが、この場合、当社は適格返還請求書を交付する必要があるのでしょうか。

<ポイント>
 振込手数料を売上値引として処理する場合には、適格返還請求書の交付義務が免除される(インボイスQ&A問29)。よって、取引の相手方から適格返還請求書の交付を求められたとしても交付する義務はない。
 また、軽減税率適用対象取引の値引であれば、当然に軽減税率が適用されることとなるのであるから、例えば値引額が振込手数料相当額の440円であったとしても、適用税率は8%になる。

問⑨(複数の契約に係る適格請求書の交付の可否)

 当社は、複数の事業所がある顧客との間では、その事業所ごとに契約を締結し、その代金を毎月まとめて顧客に請求しています。この代金請求に関しては、従来、毎月の請求額と消費税相当額の合計を記載した請求書に、その内訳として契約ごとの本体価格と消費税相当額(端数処理済)を記載したものを送付する方法で行ってきました。
 適格請求書等保存方式の開始により、消費税の端数処理については「一の適格請求書につき、税率ごとに1回」とされたことを踏まえ、一カ月分をまとめて請求するのではなく、個々の契約ごとに適格請求書を作成・交付する方法に変更しましたが、交付した適格請求書の写しとして保存すべき量が多量となることや顧客の利便性も勘案し、複数の契約に係る料金を1カ月分まとめて一の適格請求書で請求する方法に改めることを検討していますが、問題ないでしょうか。また、その際に気を付けるべき点としてはどういったことがあるでしょうか。

<ポイント>
 請求書の作成にあたり、契約ごとに消費税額等の端数処理をしていても、インボイスに記載する消費税額等の端数処理はインボイスの発行単位になることを注意喚起したのがインボイスQ&A問66である。問⑨は、インボイスに記載する消費税額等に関する端数処理のルールを受け、取引の都度インボイスを発行することとしたものの、保存書類が多量となるので月まとめのインボイスに変更することができるかというレベルの質問である。
 当然に問題はないが、この場合、月まとめのインボイスでの端数処理が必要となる。

問⑩(従業員が立替払をした際に受領した適格簡易請求書での仕入税額控除)

 当社は、事業に必要な消耗品等を従業員が自ら購入し、その際受領した適格簡易請求書と引き換えに、当該消耗品費を支払っています。この場合、当該適格簡易請求書の宛名には「従業員名」が記載されているのですが、これをそのまま保存することで、当社は仕入税額控除を行ってもよいでしょうか。

<ポイント>
 簡易インボイスには購入者の氏名や名称は記載されないのであるから、従業員が業務用の課税仕入れを行って簡易インボイスを受領した場合、立替金精算書は必要ない。
 【答】に書かれているのは、簡易インボイスに従業員の名前が記載されている場合の取扱いである。ネット通販などで、従業員のアカウントで会社の備品などを購入した場合がこれに該当するものと思われる。このようなケースでは、原則として立替金精算書が必要となるのであるが、従業員名簿がある場合には、立替金精算書の作成を省略できるという趣旨のようである(インボイスQ&A問94)。

問⑪(実費精算の出張旅費等)

 当社は、社員が出張した場合、旅費規程や日当規程に基づき出張旅費や日当を支払っています。この際、実際にかかった費用に基づき精算を行うため、社員からは、支払いの際に受け取った適格請求書等を徴求することとしています。この実費に係る金額について、帳簿のみの保存(従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等)により仕入税額控除を行ってもよいでしょうか。

<ポイント>
 出張旅費、宿泊費、日当などのうち、通常必要と認められる金額は、インボイスの保存がなくとも仕入税額控除が認められている(インボイスQ&A問107)。この取扱いは、実費精算による場合であっても当然に認められることとなるのであるから、3万円を超える交通費であってもインボイスの保存は必要ない。
※(参考)に書かれている「……実費精算が貴社により用務先へ……」の箇所であるが、ここにいう「用務先」というのは、宿泊施設や鉄道会社のことだと思われる。要は、事実上会社が払っているような旅費や宿泊費については、公共交通機関特例により、3万円判定が必要になるということなのであろう……。

問⑫(返信用封筒に貼付した郵便切手に係る仕入税額控除の適用)

 当社は、取引先に書類を送付し、その控えを返信用封筒で当社に送り返してもらうこととしています。この際、封筒に同封する返信用封筒に郵便切手をあらかじめ貼付していますが、この郵便切手により返送を受けるという引換給付についても仕入税額控除を行ってよいでしょうか。

<ポイント>
 郵便ポスト等への投函による郵便サービスは、インボイスの交付義務が免除されている。よって、自らが購入し、返信用封筒に貼付された郵便切手類にはこの「郵便局特例」が適用されるため、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる。
 ただし、郵便切手類の購入時に仕入税額控除を行うこととしている場合には、その後、返送を受けないことが明らかとなった郵便切手類の購入金額について、その明らかとなった課税期間において、仕入控除税額を調整することとされているようだ。
 私見ではあるが、あまりにも杓子定規な回答で、非現実的であると感じている。リストでも作成して、返信がなかった分の切手の購入金額を集計した上で調整することになるのであろうか……?

問⑬(2割特例を適用するよりも簡易課税制度を適用した方が有利な場合)

 当社は、ハンドメイド作家が作成した雑貨を仕入れ、小売店に販売する事業を営んでいる個人事業者です。これまで免税事業者でしたが、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者となり、令和5年分について初めて消費税の確定申告を行います。このような場合、消費税の納付税額を軽減できる2割特例や、簡易課税制度も適用できると思いますが、どのような方法により消費税の申告を行えばよいのでしょうか。

<ポイント>
 2割特例は、インボイスの登録をしなければ免税事業者となれるような小規模事業者について認められた仕入控除税額の特例計算である。要は、売上高のすべてを簡易課税の第2種事業として、80%のみなし仕入率により計算してよいということであるから、第1種事業に該当しない限り、基本的には2割特例のほうが実務上有利になる。
 【答】に記載のあるように、理屈の上では「卸売業」であれば90%のみなし仕入率を適用できるので、簡易課税のほうが有利になる。ただ、利幅の薄い卸売業で、年商1,000万円未満の事業者など果たして存在するのであろうか……?
 なお、免税事業者がインボイスの登録をした場合、登録日の属する課税期間中に「簡易課税制度選択届出書」を提出すれば、登録日の属する課税期間から簡易課税により計算することが認められている。この場合の届出書の提出期限は課税期間の末日であり、申告期限ではないことに注意する必要がある(インボイスQ&A問7・9・114)。
 また、「簡易課税制度選択届出書」の提出については効力発生日を定めたものであり、提出期限を定めたものではない。よって、課税期間の末日が土日祝日などであったとしても、その翌日に期限は延長されない(消法37①、国通10②)。

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