解説記事2024年04月01日 SCOPE 「継続企業」及び「後発事象」の会計基準開発は可能(2024年4月1日号・№1021)
ASBJ、実務指針移管の調査研究を公表へ
「継続企業」及び「後発事象」の会計基準開発は可能
企業会計基準委員会(ASBJ)は、日本公認会計士協会の会計に関する実務指針等を移管する「移管指針の適用(案)」を4月上旬にも公表する予定だが、会計と監査に関する内容を含む「継続企業」及び「後発事象」に関しては、実務指針等の移管に係る実行可能性の調査研究を公表するとしている。調査研究では、「継続企業」及び「後発事象」にも、「財務諸表の公表の承認日」の概念を取り入れる方向で基準開発が可能であると結論づけている。
「継続企業」は国際的な動向を踏まえて適切な時期に開発
企業会計基準委員会は4月2日にも移管指針公開草案「移管指針の適用(案)」を決定する予定だ(本誌1020号12頁参照)。移管指針の適用案は、日本公認会計士協会が2024年3月31日時点までに公表した会計に関する実務指針等を企業会計基準委員会に移管するというものである。
ただし、会計に関する実務指針等以外は、会計と監査に関する内容を振り分ける必要があり、多大な事務負担と時間を要し適時に移管できない可能性があるため、国際的な会計基準に照らして優先順位が高いとされる「継続企業」と「後発事象」については、実務指針等の移管に係る実行可能性に関する調査研究を行うとしており、このほどその概要が明らかとなった。
調査研究では、まず「継続企業」に関しては、2019年に企業会計基準委員会で「企業の清算若しくは事業停止の意図がある」とされる範囲などについて検討を行い、その後途中で止まったことを踏まえると基準開発が難しい可能性があるが、同論点についても継続企業の前提に関する会計基準の開発範囲に含めることが考えられるとしている。
「財務諸表の公表の承認日」の概念採用も
また、国際監査・保証基準審議会(IAASB)では、現在、ISA570(継続企業)の改訂に向けた検討が行われており、ここでは、継続企業の評価期間の起算日を現行の「期末日」から「財務諸表の公表の承認日」へ見直すこととしている。企業会計審議会の監査部会においても、同様の見直しを行う方向で検討が開始される予定だ(本誌1019号15頁参照)。改訂が行われた場合には、監査基準と会計基準が整合的であることが望ましいとの考えから、「財務諸表の公表の承認日」の概念を取り入れるかどうかも含め、適切な時期に開発を進めることが考えられるとしている。
過去の「継続企業の前提の判断規準」の開発は中止
企業会計基準委員会は、当時の基準諮問会議の提言を受け、「財務諸表を継続企業の前提に基づき作成することが適切であるかどうかの判断規準の作成」に関する会計基準の開発を行っていたが、開発の途中段階で中止となった。同テーマについては、日本公認会計士協会の監査基準委員会報告書570「継続企業」の定めを参考とすることを前提に検討が進められていた。しかし、この監基報570の第A25項は、企業の清算直前の状況を想定した上で、継続企業を前提として財務諸表を作成することが適切ではない場合の例示を示しているが、IAS第1号「財務諸表の表示」第25項においては、「企業の清算若しくは事業停止の意図」がある場合のうち、「事業停止の意図」があるケースについては、必ずしも企業の清算直前の状況のみを意味するわけではない(いわゆる休眠会社の状態も含まれ得る)ことから、監基報570における判断規準を会計基準として定めること自体から検討し直す必要があると判断され中止に至っている。
修正後発事象、当面は開示後発事象の取扱いと同様に
後発事象についても、包括的な会計基準が定められていなかったことから、およそ14年前に企業会計基準委員会において基準開発が行われていた。しかし、修正後発事象がある場合において、財務諸表を会計期間に係る財務諸表に反映させるよう財務諸表を修正した場合、会社法の計算書類と乖離するなどの実務上の強い懸念が経済界等を中心に示されたことから、途中で審議が中止されている。
このため、調査研究では、後発事象に関する会計基準を開発する上では、①後発事象の定義及び②金融商品取引法の財務諸表における修正後発事象の取扱いが大きな課題になるとしている。まず、後発事象の定義については、国際的な会計基準との整合性を図ることから、「財務諸表の公表の承認日」の概念を取り入れる方法を採用することが考えられるとしている。また、金融商品取引法の財務諸表における修正後発事象の取扱いについては、「開示後発事象に準ずる」という案1と「財務諸表を修正する」という案2の2つが示されている。案1を採用した場合は、会社法の計算書類と金融商品取引法の財務諸表の一元性を確保することができるが、後発事象の定義に「財務諸表の公表の承認日」を取り入れることとした場合、会社法の計算書類に係る「監査報告書日」と一致しない可能性があり、現行実務から変わる可能性があるとしている。一方、案2を採用した場合には、国際的な会計基準との整合性が図られることになるが、財務諸表を修正することになるため、計算書類との一元性が確保されず、実務上の混乱(例えば、株主総会における株主の意思決定への影響や、計算書類の信頼性に対する疑義等)が生じる懸念があると指摘し、財務諸表作成者にとっては、会社法の計算書類に係る「財務諸表の公表の承認日」以後に生じた修正後発事象について財務諸表を修正することを要求されるため、開示後発事象に準じて取り扱う場合に比べ、実務上の負担が大きくなる可能性があるとしている。
この点、今回の検討は日本公認会計士協会から実務指針等を移管することが趣旨であること及び会社法と金融商品取引法の開示制度が併存する我が国の状況を踏まえ、当面の間は、現行の取扱いを引き継ぐ「開示後発事象に準ずる」という案1の方法を採用することが考えられると結論づけている。
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