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解説記事2020年03月02日 ニュース特集 国外財産の提出義務あれば財産債務軽減措置はなし(2020年3月2日号・№825)

ニュース特集
財産債務調書には記載も国外財産調書が不提出のケース
国外財産の提出義務あれば財産債務軽減措置はなし


 財産債務調書は提出していたが、国外財産調書が不提出であったケースにおいて、国外財産加重措置及び財産債務軽減措置の適用の有無が争われた裁決事例が明らかになった。国税不服審判所は、居住者が国外財産調書を提出する義務を負う場合における国外財産については、財産債務軽減措置は適用されないとの見解を示した。その上で、請求人は、国外財産調書を提出しなかったのであるから、財産債務調書に記載していた外国株式に係る配当所得の部分も含めて国外財産加重措置が適用されるとした(令和元年6月27日、棄却)。

申告漏れの外国株式(配当)、財産債務調書には記載あり

 国外財産調書制度は、平成24年度税制改正で導入され、平成26年1月1日以後の提出分から適用されている。国税庁によると、平成30年分(平成30年12月31日時点)の国外財産調書の提出件数は9,961件となっている。同制度については、適正な提出を確保するための特例措置が設けられており、平成30事務年度の実地調査の結果では、軽減措置は194件、加重措置は245件で適用されている。令和2年度税制改正では、国外財産調書制度の更なる見直しも予定されている(本誌815号4頁参照)。
 今回の事案は、財産債務調書は提出していたものの、国外財産調書が不提出であったケースにおいて、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」(以下「国送法」)による国外財産加重措置及び財産債務軽減措置の適用の有無が争われたものである。
 請求人は、税務調査により外国株式に係る配当所得の申告漏れがあるとの指摘により、修正申告とともに、国外財産の合計額が5,000万円を超えたとして国外財産調書を提出したが、原処分庁は過少申告加算税の賦課決定処分を行う際に国外財産加重措置を適用したもの(図表1参照)。請求人は修正申告した所得の基因となった外国株式については財産債務調書に記載して期限内提出していることから、過少申告加算税のうち当該外国株式に係る配当所得の部分は、財産債務軽減措置が適用されるなどと主張していた(図表2参照)。

【図表2】当事者の主張

原処分庁 請求人
 次の理由により、本件過少申告加算税については、本件株式に係る配当所得の部分も含めて国外財産加重措置が適用され、財産債務軽減措置は適用されない。
・国送法6条2項は、国外財産に係る所得税に関し修正申告があり、通則法65条の規定の適用がある場合において、国送法5条1項の規定により税務署長に提出すべき国外財産調書について提出期限内に提出がないときは、過少申告加算税の額に5%加重する旨規定しているところ、請求人は、本件国外財産調書を提出期限内に提出せず、本件修正申告とともに原処分庁に提出したのであるから、本件過少申告加算税については、国外財産加重措置が適用される。
・国外財産である本件株式を記載した本件財産債務調書の提出が、適正な財産債務調書の提出と評価されるとしても、国送法において、財産債務調書を国外財産調書とみなす旨の規定はないから、本件財産債務調書の提出義務が免除されることにはならない。そして、請求人は、国外財産調書の提出義務を履行しなかったのであるから、本件過少申告加算税については、本件株式に係る配当所得の部分も含めて国外財産加重措置が適用され、財産債務軽減措置は適用されない。
 次の理由により、本件過少申告加算税のうち、本件株式に係る配当所得の部分については、財産債務軽減措置が適用され、国外財産加重措置は適用されない。
・国送法6条の3第1項は、財産債務調書を提出期限内に提出した場合には、財産債務調書に記載のある財産債務に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税については5%軽減する旨規定しているところ、請求人は、本件財産債務調書に、本件株式も記載して提出期限内に提出していたのであるから、本件過少申告加算税のうち、本件株式に係る配当所得の部分については財産債務軽減措置が適用されるべきである。

・国送法6条の3第1項は、同項の適用が除外される財産について、「同法第6条の2第2項の規定により、財産債務調書への記載を要しない国外財産」と規定しているところ、同項の規定は、国外財産調書が財産債務調書とともに提出期限内に提出されている場合に、国外財産調書に記載した国外財産は、財産債務調書への記載を省略できるとするものであるから、国外財産調書と財産債務調書がいずれも提出期限内に提出されている場合を前提とするものであって、本件のように、国外財産調書が提出期限内に提出されていない場合は、同法6条の2第2項は適用されず、本件においては、同法6条の3第1項の適用が除外される財産はないことになる。

両調書の提出義務ある場合は国外財産特例措置のみが適用

 国税不服審判所は、財産債務特例措置の適用対象は財産債務調書への記載を要しない国外財産を除く財産に関して生ずる所得に対する所得税であるとされており(国送法6条の3①)、財産債務調書への記載を要しない国外財産とは、居住者が国外財産調書を提出する義務を負う場合における当該国外財産であり、当該国外財産については財産債務特例措置が適用されないとした。したがって、居住者が国外財産調書及び財産債務調書の両方について提出義務を負う場合において、国外財産に係る所得税等に関し修正申告があり過少申告加算税が賦課されるときは、財産債務特例措置は適用されず、国外財産特例措置のみが適用されることになるとの見解を示した。
 本件についてみると、請求人は5,000万円を超える国外財産を有しており国外財産調書の提出義務を有していたが、これを履行しなかったと認められると指摘。したがって、国送法6条2項に規定する国外財産調書について提出期限内に提出がないときに該当するため、本件過少申告加算税は外国株式に係る配当所得の部分も含めて国外財産加重措置が適用されると判断した。
 また、請求人の本件外国株式は提出期限内に提出した財産債務調書に記載していたのであるから、過少申告加算税のうち外国株式に係る配当所得の部分は財産債務軽減措置が適用されるべきであるとの主張に対しては、居住者が国外財産調書を提出する義務を負う場合における国外財産については、財産債務特例措置は適用されないところ、本件外国株式は国外財産調書に記載すべき国外財産であるから、これを財産債務調書に記載して提出期限内に提出したとしても、財産債務軽減措置は適用されないとした。

国外財産調書の提出制度
 居住者が、その年の12月31日においてその価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する場合は、翌年の3月15日までに当該国外財産の種類、数量及び価額等の明細を記載した国外財産調書を所轄税務署長に提出しなければならない。
 また、同制度では、国外財産調書の適正な記載及び提出を確保するためのインセンティブとして、国外財産特例措置が講じられている。具体的には、国外財産調書を提出期限内に適正に記載して提出した場合には、記載された国外財産に関して所得税等の申告漏れが生じたときであっても、加算税を5%軽減する(国外財産軽減措置)一方、国外財産調書を提出期限内に提出しなかったとき又は提出された国外財産調書に記載がない国外財産に関して所得税等の申告漏れが生じたときは、加算税を5%加重する措置が設けられている(国送法5条、同法6条①②)。

財産債務調書の提出制度
 所得税の申告書を提出すべき者が、当該申告書に記載すべきその年分の総所得金額及び山林所得金額の合計額が2,000万円を超え、かつ、その年の12月31日においてその価額の合計額が3億円以上の財産等を有する場合には、その年の翌年の3月15日までにその財産の種類、数量及び価額並びに債務の金額等の明細を記載した財産債務調書を所轄税務署長に提出しなければならない。
 また、同制度においても、国外財産調書の提出制度と同様、適正な記載及び提出を確保するためのインセンティブとして、財産債務特例措置が講じられている。具体的には、財産債務調書を提出期限内に適正に記載して提出した場合には、記載された財産又は債務に関して所得税等の申告漏れが生じたときであっても、加算税を5%軽減する(財産債務軽減措置)一方、財産債務調書を提出期限内に提出しなかったとき又は提出された財産債務調書に記載がない財産若しくは債務に関して所得税等の申告漏れが生じたときは、加算税を5%加重する措置(財産債務加重措置)が設けられている(国送法6条の2①、同法6条の3①②)。

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