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解説記事2024年05月20日 SCOPE 最高裁、青色申告取消処分の事前の防御の機会認めず(2024年5月20日号・№1027)

納税者の上告を棄却するも反対意見あり
最高裁、青色申告取消処分の事前の防御の機会認めず


 青色申告の承認の取消処分について、納税者に事前に防御の機会が与えられなかったことが違憲であるかどうかが争われた事案で、最高裁第三小法廷(渡邉惠理子裁判長)は令和6年5月7日、「相手方に事前に防御の機会が与えられなかったからといって、憲法31条の法意に反するものとはいえない。」と判示し、納税者の上告を棄却した。
 なお、裁判官の多数は、最高裁平成4年7月1日大法廷判決に基づき上記の判断を下したものの、一部からは反対意見が出されている点、注目される。

不利益処分に係る事前手続の保証などの事情の変化、審査請求手続も考慮

 本件は、青色申告の承認の取消処分について、事前に防御の機会が与えられなかったことが、違憲であるかどうかが争われた事案である。
 最高裁は、「法人税法127条1項の規定による青色申告の承認の取消処分については、その処分により制限を受ける権利利益の内容、性質等に照らし、その相手方に事前に防御の機会が与えられなかったからといって、憲法31条の法意に反するものとはいえない。」と判示し、納税者の上告を棄却した。
 その上で最高裁は、「このことは、最高裁平成4年7月1日大法廷判決の趣旨に徴して明らか」としているが、平成4年最高裁判決は、「行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である」と判示している。
 この点について渡邉惠理子裁判官は、特に明確にしておきたいとする以下の2点を、補足意見として述べている。
 一点目は、国税不服審判所における充実した審査請求手続が設けられていることは、上記の総合較量において考慮されるべき要素の一つとなるという点。もう一点は、最高裁平成4年9月10日第一小法廷判決が出されて以降、不利益処分に係る事前手続の保障の原則を内容とする行政手続法の制定などの事情の変化もみられるという点であり、多数意見は、こうした事情の変化も念頭に置いた上で、憲法判断の変更は要しないと判断したと述べている。
反対意見は、青色申告取消処分に例外認めず
 一方、宇賀克也裁判官は、「処分庁が不利益処分を行う場合には、誤った不利益処分による権利侵害が行われないように事前にその根拠法条とそれに該当する事実を通知し、相手方に事前に意見陳述の機会を保障することが、憲法上の適正手続として要請されるのが原則であり、青色申告の承認の取消処分について、その例外を認めるべき合理的理由は見いだし難い」として、反対意見を述べている。
 原判決は、国税通則法74条の14第1項が、青色申告承認取消処分を含む「国税に関する法律に基づき行われる処分」について、行政手続法第3章(不利益処分)の規定の適用を除外していることに触れ、その理由を、の左欄のとおり述べているが、宇賀裁判官は、それらについて「いずれの点も合理的理由たり得ない」として、の右欄のとおり、その理由を述べている。
 その上で、上告理由のうち憲法31条違反をいう部分には理由があり、本件処分は違憲であるとし、平成4年9月10日最高裁判決は変更すべきとしている。

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