会社法ニュース2024年05月24日 源泉税用の株売却はインサイダー規制外(2024年5月27日号・№1028) 株式報酬、企業からは「速やかな売却」等の更なる解釈明確化望む声
証券取引等監視委員会が公表している「インサイダー取引規制に関するQ&A」に4月19日、応用編問9及び問10という2つの新たな解釈指針が追加された。応用編問9では、事後交付型株式報酬であるRSUやPSUにおいて、ベスティング時(権利確定時)に自己株式の処分を通じて現物株式を付与してもインサイダー取引規制違反にはならないことが明確化されている。
注目されるのは応用編問10だ。応用編問10は、事前交付型のRS、事後交付型のRSUやPSUのベスティング時には所得税課税が生じるところ、その源泉徴収税額に充当するために速やかに行われる現物株式の売却は、インサイダー取引規制違反には当たらないことを明確にした。これまで日本企業はインサイダー取引規制への抵触を恐れ、株式報酬信託スキームを用いてあらかじめ信託内で税金相当分の現金に換価するか、あえて株式報酬とキャッシュプランを併存させて導入することによりベスティング時に納税分の現金が自動支給されるようにするといった手間とコストのかかる手法を講じてきた。こうしたなか公表された応用編問10は、キャッシュインのない課税、すなわち、所得税を納めるのに必要な資金を株式の売却により確実に工面できないという日本の株式報酬の問題点の解決に資すると言えるが、企業からは不満の声も聞かれる。
応用編問10では、インサイダー取引規制違反に当たらないための要件として、①べスティング後の源泉徴収税額へ充当するための速やかな売却であること、②役職員が指図を行わない売却の執行の仕組であること、③これらが社内規定や契約等で規定されていること、が挙げられているが、これらの要件を満たすためにどれほど厳格な対応が求められるのかは現状では明らかではない。仮に売却時期及び数量の詳細まで一切の裁量の余地なく事前に定めなければならないとなれば、事前の段階で詳細を社内規定や契約等でどこまで規定できるかが問題となる。
こうした中、企業からは更なる解釈の明確化を求める声が上がっている。
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