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解説記事2024年05月27日 新会計基準解説 実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」等の概要(2024年5月27日号・№1028)

新会計基準解説
実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」等の概要
 企業会計基準委員会専門研究員 大竹勇輝

Ⅰ はじめに

 企業会計基準委員会(ASBJ)は、2024年3月22日に実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」(以下「本実務対応報告」という。)を公表している(脚注1)。また、合わせて当該実務対応報告を適用する場合に実務に資するための情報を提供することを目的として、補足文書「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等に関する見積りについて」(以下「補足文書」という。)を公表している(脚注1)。本稿では、本実務対応報告及び補足文書(以下合わせて「本実務対応報告等」という。)の概要を紹介する。
 なお、文中の意見に関する部分は筆者の私見であり、ASBJの見解を示すものではないことをあらかじめ申し添える。

Ⅱ 本実務対応報告公表の経緯

 2021年10月に経済協力開発機構(OECD)/主要20か国・地域(G20)の「BEPS包摂的枠組み(Inclusive Framework on Base Erosion and Profit Shifting)」において、当該枠組みの各参加国によりグローバル・ミニマム課税について合意が行われた。これを受けて、我が国においても国際的に合意されたグローバル・ミニマム課税のルールのうち所得合算ルール(Income Inclusion Rule(IIR))に係る取扱いが2023年3月28日に成立した「所得税法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第3号)(以下「令和5年法律第3号」という。)において定められ、2024年4月1日以後開始する対象会計年度から適用することとされた。グローバル・ミニマム課税は、一定の要件を満たす多国籍企業グループ等の国別の利益に対して最低15%の法人税を負担させることを目的としており、当該課税の源泉となる純所得(利益)が生じる企業と納税義務が生じる企業が相違する新たな税制である。
 このため、当該税制について、現行の企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(以下「法人税等会計基準」という。)及び企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」等では、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等(当期税金)及び当該法人税等に関する税効果会計についてどのように取り扱うかが明らかでないとの意見が聞かれた。これを受けて、ASBJにおいて2023年1月より審議を開始し、税効果会計の取扱いについては、令和5年法律第3号の成立日以後に終了する連結会計年度及び事業年度の決算に係る税効果会計の適用の要否を明らかにする必要があったため、2023年3月に実務対応報告第44号「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い」(以下「実務対応報告第44号」という。)を公表した。
 その後、ASBJは、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等(当期税金)及び同制度適用後の税効果会計の取扱いについて審議を行った。本実務対応報告は、2023年11月17日に公表した実務対応報告公開草案第67号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い(案)」に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、公開草案の内容を一部修正した上で、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等(当期税金)の会計処理及び開示に関する取扱いについて公表するに至ったものである。

Ⅲ グローバル・ミニマム課税制度の概要及び特徴

1 グローバル・ミニマム課税制度の概要
 グローバル・ミニマム課税は、法人税の国際的な引下げ競争に歯止めをかけ、税制面における企業間の公平な競争条件を確保するため、国際的に合意されたものであり、グローバル・ミニマム課税には、次の図表1の3つのルールがある。

 このうち、IIRに係る取扱いが令和5年法律第3号によりグローバル・ミニマム課税制度として法制化されており、グローバル・ミニマム課税制度のイメージは次の図表2のとおりである。

2 グローバル・ミニマム課税制度の特徴
 グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等は、各対象会計年度終了の日の翌日から1年3か月(グローバル・ミニマム課税制度に関する申告書を最初に提出すべき場合には1年6か月)以内に申告書を提出しなければならないとされ、当該申告期限までに納付することが求められている(本実務対応報告BC2項)。また、当該制度に係る法人税等は、多国籍企業グループ等のうち、各対象会計年度の直前の4対象会計年度のうち2以上の対象会計年度の総収入金額が7億5,000万ユーロ以上である特定多国籍企業グループ等を対象としており、主に次のプロセスで算定される。

(1)適用対象となる「特定多国籍企業グループ等」及び「構成会社等」の特定
(2)「個別計算所得等の金額」及び「調整後対象租税額」の算定
(3)「国別実効税率」及び「会社等別国際最低課税額」の算定

 前述の「個別計算所得等の金額」、「調整後対象租税額」及び「国別実効税率」の算定については、図表3における算式のような関係がある。

 ここで、国別実効税率が15%を下回る構成会社等の判定(以下「対象範囲の判定」という。)並びに個別計算所得等の金額及び調整後対象租税額の算定において、次のようなグローバル・ミニマム課税制度特有の特徴があると考えられる。
(1)対象範囲の判定における特徴
 グローバル・ミニマム課税制度は、国別実効税率が15%を下回る場合に基準税率15%に至るまで追加的に課税を行うことを主要な定めとするものであるため、国別にグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の課税の対象となる子会社等を判定することが求められる。当該対象範囲の判定にあたっては、主に次のような特徴があると考えられる(本実務対応報告BC3項)。
① 国別実効税率は、各国の税額控除等を反映した後の税率であることから、当該国の法定実効税率が15%以上となる場合であっても、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等が課せられることがある。このため、対象範囲の判定にあたって、当該国の法定実効税率のみに基づき判断することができず、②の情報を収集することが求められる。
② グローバル・ミニマム課税制度の対象範囲の判定を行うに際しては、恒久的施設等及び特殊な会社等(共同支配会社等、被少数保有構成会社等及び各種投資会社等)に関する国別の情報(会計数値及びグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の算定に使用する会計数値以外の個別計算所得等の金額や調整後対象租税額の算定に使用する調整項目に関する情報等)を入手することが求められる。
(2)個別計算所得等の金額及び調整後対象租税額等の算定における特徴
 個別計算所得等の金額及び調整後対象租税額等の算定に際しては、主に次のような特徴があると考えられる(本実務対応報告BC4項)。
① 各構成会社等の個別計算所得等の金額は、当該構成会社等の各対象会計年度に係る当期純損益金額に一定の調整を行い算定されるが、当該調整項目については、例えば、適格給付付き税額控除額の調整等、各構成会社等の所在地国の税制の理解が必要となる場合がある。また、例えば、恒久的施設等がある場合には、当該恒久的施設等の単位で個別計算所得等の金額を算定することとなるため、子会社等から恒久的施設等の金額を把握する必要がある(図表4参照)。さらに、各調整項目の影響が重要か否かは項目ごとに一律ではなく、各構成会社等により異なると考えられる。

② 国別実効税率の算定の基礎となる調整後対象租税額は、会計上の法人税、住民税及び事業税等並びに法人税等調整額の合計額に一定の調整を加えて算定されるが、当該金額は、対象会計年度終了の日から3年以内に支払われることが見込まれない法人税、住民税及び事業税等や対象会計年度終了の日から5年以内に支払われることが見込まれない部分の繰延税金負債に係る法人税等調整額の調整などが求められている。また、調整後対象租税額の算定にあたっても、国別情報を把握することや、各構成会社等の所在地国の税制の理解が必要になる。

Ⅳ 本実務対応報告の概要

1 会計処理
(1)連結財務諸表及び個別財務諸表における取扱い

 グローバル・ミニマム課税制度については、「Ⅲ.2.グローバル・ミニマム課税制度の特徴」に記載のとおり、申告及び納付期限が各対象会計年度終了の日の翌日から1年3か月又は1年6か月以内とされており、通常の法人税等の申告期限の翌事業年度での申告が認められている。また、実務対応報告第44号の公開草案に対して、税効果会計のみならず、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の見積りにおいても困難が想定されることから、当該金額の見積りに関する当面の取扱い又は見積りに関する具体的な指針を示すことを求める意見が寄せられていた。
 このため、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の計上時期及び見積りに関する取扱いについて次のとおり検討を行った(本実務対応報告BC5項からBC9項)。
 ① 法人税等の計上時期
 グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等については、多国籍企業グループ等の当連結会計年度(対象会計年度)の連結財務諸表を構成する会社等の国別の純所得(利益)に基づいて算定されるものであり、連結財務諸表において当連結会計年度以外の年度に計上することは、税金等調整前当期純利益と、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等を含めた法人税、住民税及び事業税等とが対応しないことから、適切ではないと考えられる。
 また、個別財務諸表においては、親会社等の所得(利益)に対する税には直接的には該当しないものの、納税義務を生じさせる事象が対象会計年度となる当事業年度において生じている。
 ② 見積りの取扱い
 グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の見積りについては、グローバル・ミニマム課税制度の特徴を踏まえて、対象会計年度となる連結会計年度及び事業年度の決算時において、対象範囲の判定や個別計算所得等の金額等の算定にあたって必要な情報を適時に入手し、当該金額を算定することは困難である場合があるとの意見が聞かれた。
 これらの内容を踏まえ、本実務対応報告では、次のとおり定めている。

 グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等については、対象会計年度となる連結会計年度及び事業年度において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき当該法人税等の合理的な金額を見積り、損益に計上することとしている(本実務対応報告第6項)。
 また、財務諸表の作成時点において一部の情報の入手が困難な場合の見積りに関する次の考え方を示すこととしている(本実務対応報告BC10項及びBC11項)。
・特にグローバル・ミニマム課税制度の適用初年度については、従来情報を入手していない各構成会社等からの情報や国別報告事項等の必要な情報を適時かつ適切に入手する体制の構築等が困難な場合があると想定されるが、その場合は財務諸表の作成時点で入手可能な対象会計年度に関する情報に基づきグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等を見積ることとなる。
・適用初年度の翌年度以降は、入手可能となる情報が増加し、より精緻な見積りが可能となると考えられる。
・企業が当事業年度の財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき見積った金額と翌事業年度の見積金額又は確定額との間に差額が生じる場合があるが、各事業年度において財務諸表作成時に入手可能な情報に基づきグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の合理的な金額を見積っている限り、当該差額は誤謬にはあたらず、当期の損益として処理することになると考えられる。
・会計上の見積りの変更にあたって、当該差額に重要性がある場合には、企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第18項における「会計上の見積りの変更に関する注記」の定めに従い注記を行うこととなると考えられる。

(2)四半期財務諸表及び中間財務諸表における取扱い
 グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等は対象会計年度の年間の利益や税額控除等を用いて対象範囲の判定や見積りを行うことから、四半期会計期間及び中間会計期間の利益等に基づき、年度と同様の方法により計算することが困難な場合があると考えられる。
 また、四半期財務諸表の作成にあたって入手している情報は、年度に比して限定的な情報であると考えられることから、四半期財務諸表においては、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等を合理的に見積ることが年度に比して困難な場合があると考えられる(本実務対応報告BC12項)。
 本実務対応報告の公表時点では、グローバル・ミニマム課税制度が適用されておらず、企業が四半期連結会計期間及び四半期会計期間並びに中間連結会計期間及び中間会計期間において、適時に情報を入手し、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等を合理的に見積ることが可能であるかどうかについては追加的な検討が必要であると考えられる(本実務対応報告BC13項及びBC14項)。
 このため、本実務対応報告では、四半期連結財務諸表及び四半期個別財務諸表(以下「四半期財務諸表」という。)並びに中間連結財務諸表及び中間個別財務諸表(以下「中間財務諸表」という。)において、次の代替的な会計処理を認めることとした(本実務対応報告第7項)。

 四半期財務諸表及び中間財務諸表においては、本実務対応報告第6項の定めにかかわらず、当面の間、当四半期連結会計期間及び当四半期会計期間(以下「当四半期会計期間等」という。)並びに当中間連結会計期間及び当中間会計期間(以下「当中間会計期間等」という。)を含む対象会計年度に関するグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等を計上しないことができる。

2 開 示
(1)連結損益計算書における表示及び注記

 グローバル・ミニマム課税は多国籍企業グループ等の国別の利益に対して最低15%の法人税を負担させることを目的としており、連結財務諸表における税金等調整前当期純利益とグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等との対応関係を図るため、連結損益計算書において、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等は、法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)を示す科目に表示することとしている(本実務対応報告第9項及びBC17項からBC19項)。
 ただし、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等については、他の法人税等より不確実性が高いと考えられることから、連結財務諸表において注記を行うことにより有用な情報が提供されると考えられる一方、通常の法人税等の計算とは別に算定し金額を把握しているため注記に関する追加的なコストが大きくないと考えられる(本実務対応報告BC23項)。
 したがって、情報の有用性及びコストを勘案し、連結損益計算書においてグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等が重要な場合は、当該金額の注記を求めることとした(本実務対応報告第10項)。この際、重要であるか否かは企業のキャッシュ・フローの金額、時期及び不確実性を財務諸表利用者が理解するために有用であるかどうかを踏まえて判断することになると考えられる(本実務対応報告BC23項)。
(2)個別損益計算書における表示及び注記
 グローバル・ミニマム課税制度は、課税の源泉となる純所得(利益)が生じる企業と納税義務が生じる企業が相違する制度であることから、当該制度に係る法人税等は納税義務が生じる親会社等の所得(利益)に対する税には直接的には該当しない。
 この点、法人税等会計基準では、損益に計上する所得に対する法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)は、税引前当期純利益(又は損失)の次に、法人税、住民税及び事業税などその内容を示す科目をもって表示することとしている(法人税等会計基準第9項)一方、事業税の付加価値割及び資本割については、原則として、損益計算書の販売費及び一般管理費として表示することとしている(法人税等会計基準第10項)。このため、審議の過程では、個別損益計算書上、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等について、税引前当期純利益(又は損失)の次に表示するか、販売費及び一般管理費等の損益項目として表示するかについて次のとおり検討を行った(本実務対応報告BC24項及びBC25項)。
・連結財務諸表と個別財務諸表とで表示区分が異なることが必ずしも財務諸表利用者に理解しやすい情報を提供しないと考えられたため、個別財務諸表における表示について、連結財務諸表における表示と合わせることとし、販売費及び一般管理費等の損益項目として表示せずに、税引前当期純利益(又は損失)の次に表示する。
・その上で、課税の源泉となる各子会社等の個別計算所得等の金額は、親会社等の個別財務諸表上、法人税等会計基準第4項(7)において定義する所得には含まれないことから、親会社等の所得に対して計上される法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)とは区分することが適切であると考えられる。
 これらの検討を踏まえて、本実務対応報告では、個別損益計算書の表示及び注記について、次のとおり定めている(本実務対応報告第11項及び第12項)。

① 個別損益計算書において、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等は、法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)を表示した科目の次にその内容を示す科目をもって区分して表示するか、法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)に含めて表示し当該金額を注記する。
② 個別損益計算書において、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の金額の重要性が乏しい場合、①の定めにかかわらず、法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)に含めて表示することができる。この場合は当該金額の注記を要しない。

(3)四半期財務諸表及び中間財務諸表における注記
 本実務対応報告第7項の定めにより、四半期財務諸表及び中間財務諸表においては、当面の間、代替的な会計処理が認められることとなるため、審議の過程では、この当面の取扱いを適用した場合に注記を行うかどうかの検討を行った。
 この点、四半期会計期間において、当四半期会計期間等を含む対象会計年度においてグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等が生じるかどうかの判断が困難な場合があると考えられるが、当四半期会計期間等を含む当連結会計年度及び当事業年度において、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等が重要であると見込まれる場合には、本実務対応報告第7項を適用している旨の注記を行うことが有用であるという意見があった(本実務対応報告BC26項)。
 一方、公開草案に寄せられたコメントでは、重要であることが合理的に見込まれるかどうかについては判断が困難であるとの意見が聞かれたことから、注記を行うことによる情報の有用性及び実務上の負担を考慮し、本実務対応報告では、当四半期会計期間等において、本実務対応報告第7項を適用するときは、その旨を注記することとしている(本実務対応報告第13項及びBC27項からBC31項)。
 また、中間会計期間においても、四半期会計期間と同様に、当年度の対象範囲の判定を行うことが困難である等の理由により当中間会計期間等を含む対象会計年度においてグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等が生じるかどうかの判断が困難な場合があると考えられるため、中間財務諸表においても同様の取扱いとすることとしている(本実務対応報告第13項及びBC31項)。
 なお、当該四半期財務諸表及び中間財務諸表における注記については、一般的な重要性の考え方に基づき、重要性が乏しい場合には注記を省略することができると考えられる。

3 適用時期等
 グローバル・ミニマム課税制度は2024年4月1日以後開始する対象会計年度から適用されることから、本実務対応報告についても、2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとしている(本実務対応報告第14項及びBC32項)。
 ただし、当該制度に関連する法令等の公表から当該制度の適用開始までの期間が短く、また、本実務対応報告の公表から適用までの準備期間も短いことから、特に適用初年度については、当四半期会計期間等及び当中間会計期間等を含む対象会計年度においてグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等が生じるかどうかの判断をすることは困難であると考えられるため、四半期財務諸表及び中間財務諸表において代替的な取扱いを採用した場合の本稿Ⅳ.2.(3)の四半期財務諸表及び中間財務諸表における注記の定めについては、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとしている(本実務対応報告第14項及びBC33項)。
 3月決算を前提とした場合の適用時期のイメージは図表5のとおりである。

Ⅴ 補足文書の概要

1 目 的
 ASBJが公表する本実務対応報告を適用する場合に実務に資するための情報を提供することを目的として(補足文書第1項)、補足文書を公表している。
 補足文書は、企業会計基準、企業会計基準適用指針及び実務対応報告(以下「企業会計基準等」という。)を追加又は変更するものではなく、企業会計基準等の適用にあたって参考となる文書である(補足文書第2項)。

2 公表の経緯
 適用初年度については、グローバル・ミニマム課税制度の特徴を踏まえて、当該制度に係る法人税等の見積りについて、財務諸表作成者からは、見積りにあたって次のような困難さがあるため、見積りに関する具体的な指針を求める意見が聞かれた(補足文書第9項)。

・対象範囲の判定を行うに際しては、従来の連結財務諸表の作成にあたって恒久的施設等及び特殊な会社等から国別の情報を入手していない場合には、対象会計年度となる連結会計年度及び事業年度の決算時においてより詳細な情報を入手することが求められるが、これらの情報を適時かつ適切に入手することが困難である場合がある。
・個別計算所得等の金額の算定にあたっては、国別に情報を把握することや、各構成会社等の所在地国の税制の理解が必要になるが、これらの情報は、従来の連結財務諸表の作成にあたって入手していない場合があると考えられ、対象会計年度となる連結会計年度及び事業年度の決算時において、これらの情報を適時に入手し、当該金額を算定することは困難である場合がある。
・国別実効税率の算定の基礎となる調整後対象租税額の算定にあたっては、会計上の法人税、住民税及び事業税等並びに法人税等調整額について、追加的な判断が求められる場合があり、また、国別に情報を把握することや各構成会社等の所在地国の税制の理解が必要になる。この点、調整後対象租税額に関するこれらの情報は、従来の連結財務諸表の作成にあたって入手していない場合があると考えられ、対象会計年度となる連結会計年度及び事業年度の決算時において、これらの情報を適時に入手し、当該金額を算定することは困難である場合がある。

 検討の結果、企業の状況により入手可能な情報とそれに基づく見積りは異なると考えられるため、本実務対応報告においては見積りに関する具体的な指針を示さず、適用初年度において情報の入手が困難な場合に考えられる見積りの一例を示すことで、関係者の理解を深め、実務において当該見積りを行うための手掛かりを与えるため、補足文書を公表することとしている(補足文書第10項)。

3 情報の入手が困難な場合の会計上の見積りの例
(1)適用初年度

 グローバル・ミニマム課税制度の特徴及び困難性を踏まえると、特にグローバル・ミニマム課税制度の適用初年度については、必要な情報を適時かつ適切に入手する体制の構築等が困難な場合があると考えられる(補足文書第11項)。
 このため、グローバル・ミニマム課税制度の適用初年度については、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づく当該制度に係る法人税等の合理的な金額の見積りが次のように限定的な情報に基づく場合があり得ると考えられる(補足文書第12項)。

・対象範囲の判定を行うに際しては、従来の連結財務諸表の作成にあたって入手していない国別報告事項に関する情報や恒久的施設等及び特殊な会社等からの情報を適時に入手することができない場合には、従来の連結財務諸表の作成にあたって入手している子会社等の情報のみに基づき国別実効税率を算定する等の方法により対象範囲の判定を行う。
・子会社等におけるグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の算定に際して、個別計算所得等の金額及び調整後対象租税額並びに給与適用除外額及び有形資産適用除外額の算定において必要な情報について、従来の連結財務諸表の作成にあたって入手しておらず対象会計年度となる連結会計年度及び事業年度の決算時において適時に入手することができない場合には、従来の連結財務諸表の作成にあたって入手している子会社等の会計数値に基づき当該金額を見積る。

 なお、補足文書においては、前述の見積りの例は、適用初年度において従来の財務諸表の作成にあたって入手している以上の情報を入手できない場合に考えられる見積りの一例であり、グローバル・ミニマム課税制度の適用初年度における当該制度に係る法人税等の合理的な見積りの方法は、前述の方法に限られるものではない点に留意が必要である旨を示している(補足文書第13項)。
(2)適用初年度の翌年度以降
 適用初年度の翌年度以降は、適用初年度に比べればグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の申告に向けて情報を入手する体制がより強化され、実績値の把握等によって、入手可能となる情報が増加することがあると考えられるが、グローバル・ミニマム課税制度の特徴を踏まえると、対象範囲の判定や個別計算所得等の金額等の算定にあたって必要な情報を適時かつ適切に入手することが困難である場合があると考えられる。このような場合には、適用初年度の翌年度以降においても、「Ⅴ.3.(1)適用初年度」において示した例を参考とすることが考えられる(補足文書第14項)。

Ⅵ おわりに

 前述のとおりASBJは本実務対応報告とともに補足文書を公表しており、実務においてグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等を見積る際に参考にしていただきたい。本稿が、本実務対応報告等の概要やその趣旨をご理解いただくための一助となれば幸いである。

脚注
1 本実務対応報告及び補足文書の全文については、ASBJのウェブサイト(https://www.asb-j.jp/jp/practical_solution/y2024/2024-0322_02.html)を参照のこと。

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