資料2024年05月27日 重要資料 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(抄)(3・了)(2024年5月27日号・№1028)
(編注:国税庁が令和6年4月8日に更新したQ&Aのうち、追加したQ&Aを掲載)
重要資料
消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(抄)(3・了)
(金融機関の入出金手数料や振込手数料に係る適格請求書の保存方法)
問103−2 金融機関の窓口又はオンラインで決済を行った際の金融機関の入出金手数料や振込手数料について、仕入税額控除の適用を受けるために、何を保存すればよいでしょうか。【令和6年4月追加】
【答】
入出金手数料や振込手数料について仕入税額控除の適用を受けるには、原則として適格簡易請求書及び一定の事項が記載された帳簿の保存が必要となります(注1)(消法30⑦)。
他方、金融機関における入出金や振込みが多頻度にわたるなどの事情により、全ての入出金手数料及び振込手数料に係る適格簡易請求書の保存が困難なときは、金融機関ごとに発行を受けた通帳や入出金明細等(個々の課税資産の譲渡等(入出金サービス・振込サービス)に係る取引年月日や対価の額が判明するものに限ります。)と、その金融機関における任意の一取引(一の入出金又は振込み)に係る適格簡易請求書を併せて保存する(注2・3)ことで、仕入税額控除を行って差し支えありません。
また、基準期間における課税売上高が1億円以下であるなど一定規模以下の事業者については、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除の適用を受けることができる経過措置(少額特例)も設けられていますので、上記のような対応は必要ありません(28年改正法附則53の2、改正令附則24の2①)(少額特例の詳細については、問111《一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置》をご参照ください。)。
(注)1 一般的に、金融機関の入出金サービスや振込サービスについては、不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う事業に該当し、適格簡易請求書の交付対象になるものと解されます。また、金融機関のATMによるものである場合、機械装置のみにより代金の受領と資産の譲渡等が完結するものとして、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除が可能です(詳細については、問47《自動販売機及び自動サービス機の範囲》をご参照ください。)。
2 インターネットバンキングなど、オンラインで振込みを行った際の手数料等について、電磁的記録により適格簡易請求書が提供される場合には、当該電磁的記録をダウンロードする必要があります。ただし、同種の手数料等の支払いが繰り返し行われているような場合において、当該手数料等の適格簡易請求書に係る電磁的記録が、インターネットバンキング上で随時確認可能な状態であるなど一定の要件を満たすのであれば、必ずしも当該適格簡易請求書に係る電磁的記録をダウンロードせずとも、仕入税額控除の適用を受けることが可能です(電子帳簿保存法の取扱いについては「電子帳簿保存方法一問一答」の「お問合せの多いご質問 電取追2−2」をご参照ください。)。
3 金融機関が適格請求書発行事業者の登録を取りやめないことを前提に、一回のみ取得・保存することで差し支えありません。また、金融機関から各種手数料に係るお知らせ(適格請求書発行者の氏名又は名称及び登録番号、適用税率、取引の内容が記載されたものに限ります。)を受領した場合には、当該一のお知らせを保存することで適格簡易請求書の保存に代えることが可能です。
4 国税庁ホームページ「インボイス制度特設サイト」に掲載しているユーチューブ動画「3分でわかる 銀行振込手数料のインボイス対応」も併せてご参照ください。
(電気通信利用役務の提供と適格請求書の保存)
問103−3 当社は、国外事業者との間でリバースチャージ方式の対象となる取引(インターネット広告の配信)や、消費者向け電気通信利用役務の提供に該当する取引(電子書籍の購入)を行っていますが、仕入税額控除を行うために適格請求書の保存は必要でしょうか。【令和6年4月追加】
【答】
国外事業者が行う「電気通信利用役務の提供」のうち、「事業者向け電気通信利用役務の提供」(例:「インターネット広告の配信」等)については、特定課税仕入れとして、当該役務の提供を受けた国内事業者に申告納税義務が課されます(リバースチャージ方式)(消法5①、28②、45①)。また、当該リバースチャージ方式により申告・納税を行う消費税額については、仕入税額控除の対象となりますが、その適用要件として適格請求書の保存は必要なく、一定の事項が記載された帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能となります(消法30⑦)。
これに対し、国外事業者が行う事業者向け電気通信利用役務の提供以外の電気通信利用役務の提供(いわゆる消費者向け電気通信利用役務の提供)(例:「電子書籍・音楽の配信」等)について仕入税額控除の適用を受けるためには、売手である国外事業者から交付を受けた適格請求書(当該適格請求書の記載事項に係る電磁的記録を含みます。)の保存が必要です(消法30⑦)。
また、国外事業者が行う消費者向け電気通信利用役務の提供について、適格請求書の保存がない場合に、適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れについて一定割合(80%、50%)を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受けることはできませんが(改正令附則24)、少額特例(一定規模以下の事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に行う税込み1万円未満である課税仕入れについて、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除の適用を受けることができる経過措置)の適用を受けることはできます(28年改正法附則53の2、改正令附則24の2①)。
詳細については、問111《一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置》をご参照ください。
(注)令和5年9月1日時点で登録国外事業者(適格請求書等保存方式の開始前において、消費者向け電気通信利用役務の提供を行うため、国税庁長官の登録を受けた国外事業者をいいます。)であり、かつ、同日において「登録国外事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出していない事業者は、令和5年10月1日に適格請求書発行事業者の登録を受けたものとみなされ、登録番号(T+13桁の数字)が付番されています(28年改正法附則45①)。
また、そうした国外事業者においては、令和6年3月31日までは登録国外事業者として付番されている番号(00001等の5桁の番号)を登録番号として適格請求書に記載することができることとされています。
(参考)電気通信利用役務の提供やリバースチャージ方式の詳細については、「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係について」をご参照ください。
(返信用封筒に貼付した郵便切手に係る仕入税額控除の適用)
問106−2 当社は、取引先に書類を送付し、その控えを返信用封筒で当社に送り返してもらうこととしています。この際、封筒に同封する返信用封筒に郵便切手をあらかじめ貼付していますが、この郵便切手により返送を受けるという引換給付についても仕入税額控除を行ってよいでしょうか。【令和6年4月追加】
【答】
郵便切手類は、購入時においては原則として、課税仕入れには該当せず、役務又は物品の引換給付を受けた時にその引換給付を受けた事業者の課税仕入れとなります。
適格請求書等保存方式においては、仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として適格請求書等の保存が必要となりますが、郵便切手類のみを対価とする郵便ポスト等への投函による郵便サービスは、適格請求書の交付義務が免除されており、買手においては、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除の適用を受けることができます(基通11−3−7)。
この点、ご質問のように、返信用封筒に貼付された郵便切手類(自らが購入した郵便切手類)により返送を受けるのであれば、郵便切手類のみを対価とする郵便ポスト等への投函による郵便サービスを受けたものとして、帳簿のみの保存で仕入税額控除を行うこととして差し支えありません。
(注)この場合、当該郵便切手類の購入時に仕入税額控除を行うことも可能ですが、その後、返送を受けないことが明らかとなった際には、その明らかとなった課税期間において、仕入控除税額を調整することとして差し支えありません。
(実費精算の出張旅費等)
問107−2 当社は、社員が出張した場合、旅費規程や日当規程に基づき出張旅費や日当を支払っています。この際、実際にかかった費用に基づき精算を行うため、社員からは、支払の際に受け取った適格請求書等を徴求することとしています。この実費に係る金額について、帳簿のみの保存(従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等)により仕入税額控除を行ってもよいでしょうか。【令和6年4月追加】
【答】
社員に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額については、課税仕入れに係る支払対価の額に該当するものとして取り扱われ、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(消法30⑦、消令49①一ニ、消規15の4二、基通11−6−4)。
この社員に対する支給には、概算払によるもののほか、実費精算されるものも含まれますので、実費精算に係るものであっても、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額については、帳簿のみの保存で仕入税額控除を行うことができます。
(注)帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる「その旅行に通常必要であると認められる部分」については、所得税基本通達9−3に基づき判定しますので、所得税が非課税となる範囲内で、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められることになります。
(参考)実費精算が貴社により用務先へ直接対価を支払っているものと同視し得る場合には、通常必要と認められる範囲か否かにかかわらず、他の課税仕入れと同様、一定の事項を記載した帳簿及び社員の方から徴求した適格請求書等の保存により仕入税額控除を行うこととなります。
その際、3万円未満の公共交通機関による旅客の運送など、一定の課税仕入れに当たるのであれば、当該帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(消法30⑦、消令49①一イ、70の9②一)。
(派遣社員等や内定者等へ支払った出張旅費等の仕入税額控除)
問107−3 当社は、自社で雇用している従業員と同様に、派遣社員や出向社員が出張した際にも、旅費規程に基づき出張旅費を支払っています。当該出張旅費については、派遣元企業や出向元企業を通じて当該社員に支払われることになるのですが、仕入税額控除の要件として派遣元企業や出向元企業から請求書等の交付を受け、これを保存する必要はありますか。また、内定者や採用面接者に対し、内定者説明会会場や面接会場までの交通費等を支給する場合の取扱いはどうなりますか。【令和6年4月追加】
【答】
従業員等に支給する出張旅費、宿泊費、日当等(以下「出張旅費等」といいます。)のうち、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額については、課税仕入れに係る支払対価の額に該当するものとして取り扱われ、この金額については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(消法30⑦、消令49①一ニ、消規15の4二、基通11−6−4)(以下「出張旅費等特例」といいます。)。
1 派遣社員や出向社員に対して支払われる出張旅費等について
派遣社員や出向社員(以下「派遣社員等」といいます。)に対して支払われる出張旅費等については、それぞれ次のとおり取り扱うこととなります。
(1)派遣元企業等に支払うもの
当該出張旅費等が直接的に派遣社員等へ支払われるものではなく、派遣元企業や出向元企業(以下「派遣元企業等」といいます。)に支払われる場合、派遣先企業や出向先企業(以下「派遣先企業等」といいます。)においては、人材派遣等の役務の提供に係る対価として、仕入税額控除に当たり派遣元企業等から受領した適格請求書の保存が必要となります。
(2)派遣元企業等を通じて派遣社員等に支払うもの
派遣元企業等が当該出張旅費等を預かり、そのまま派遣社員等に支払われることが派遣契約や出向契約等において明らかにされている場合には、派遣先企業等において、出張旅費等特例の対象として差し支えありません。この場合、当該出張旅費等に相当する金額について、派遣元企業等においては立替払を行ったものとして課税仕入れには該当せず、仕入税額控除を行うことはできません。
2 内定者や採用面接者に対して支払われる交通費等について
内定者のうち、企業との間で労働契約が成立していると認められる者※に対して支給する交通費等については、通常必要であると認められる部分の金額について出張旅費等特例の対象として差し支えありません。
※ 労働契約が成立していると認められるか否かは、例えば、企業から採用内定通知を受け、入社誓約書等を提出している等の状況を踏まえて判断されることとなります。
一方、採用面接者は通常、従業員等に該当しませんので、支給する交通費等について、出張旅費等特例の対象にはなりません。
(注)1 出張旅費等特例の対象となる出張旅費等や交通費等(以下「旅費交通費等」といいます。)には、概算払によるもののほか、実費精算されるものも含まれます。なお、出張旅費等特例の対象とならない場合の派遣社員等、内定者又は採用面接者(以下「派遣社員・内定者等」といいます。)に対して支払われる旅費交通費等については、貴社が当該旅費交通費等を派遣社員・内定者等を通じて公共交通機関(船舶、バス、鉄道又は軌道)に直接支払っているものと同視し得る場合には、3万円未満の支払について、一定の事項を記載した帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められます(以下「公共交通機関特例」といいます。)。
2 海外出張のために支給する出張旅費等については、原則として課税仕入れには該当しません。
3 上記の出張旅費等特例や公共交通機関特例の対象にはならない旅費交通費等について仕入税額控除の適用を受けるには、派遣社員・内定者等が交付を受けた旅費交通費等に係る適格請求書又は適格簡易請求書の提出を受け、それを保存する必要があります(宛名として派遣社員・内定者等の氏名が記載されている場合には、原則として、立替金精算書の保存も必要となります。詳細については、問94−2《従業員が立替払をした際に受領した適格簡易請求書での仕入税額控除》をご参照ください。)。
(クレジットカードにより決済されるタクシーチケットに係る回収特例の適用)
問108−2 当社は、クレジットカード会社が発行しているタクシーチケットを利用しています。そうしたタクシーチケットは、タクシー事業者等が発行しているものとは異なり、クレジットカード利用明細書しか送られてこず、また、タクシーチケット自体取引先等に手交していることから、タクシーを利用した際に交付を受ける適格簡易請求書の保存をすることもできません。この場合、当社は仕入税額控除の適用を受けるためにどうすべきでしょうか。【令和6年4月追加】
【答】
クレジットカード会社が発行しているタクシーチケットにつき、その使用された金額について仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として、その使用に当たってタクシー事業者(当該タクシー事業者に係る事業者団体など、個々の契約等により当該タクシー利用に係る課税売上げを計上すべきこととされている者を含みます。以下同じです。)から受領した適格簡易請求書の保存が必要となります。
しかしながら、ご質問のようにタクシーチケットは取引先等に手交されることも多いことを踏まえれば、適格簡易請求書の保存が困難といった事情があると考えられます。そのため、受領したクレジットカード利用明細書及び以下の資料に記載された内容等に基づき、利用されたタクシー事業者が適格請求書発行事業者であることが確認できる場合には、適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている証票が使用の際に回収される取引として、帳簿のみの保存により仕入税額控除の適用を受けることとして差し支えありません。
・利用されたタクシー事業者のホームページ
・クレジットカード会社のホームページ等に掲載されている利用可能タクシー一覧
なお、適格請求書発行事業者以外のタクシー事業者の利用であったことが確認された場合には、当該タクシー利用時に受領した領収書(未収書等)や、別途当該タクシー事業者から発行を受けた書類など、区分記載請求書の記載事項を満たした書類及び一定の事項を記載した帳簿の保存があれば、仕入税額相当額の一定割合(80%、50%)を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受けることができます(28年改正法附則52、53)。
(自動販売機特例又は回収特例における3万円未満の判定単位)
問110−2 帳簿の記載事項である「仕入れの相手方の住所又は所在地」の記載が不要となる、自動販売機や自動サービス機からの商品の購入等又は3万円未満の課税仕入れについて回収特例が適用される取引かどうかは、どのような単位で判定するのですか。【令和6年4月追加】
【答】
売手における適格請求書の交付義務が免除されている3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等又適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される課税仕入れ(3万円未満のものに限ります。)については、帳簿に仕入れの相手方の住所又は所在地を記載する必要はありません(消令49①、令和5年国税庁告示第26号)。
これらの取引に該当するかどうかは、1回の取引の税込価額が3万円未満かどうかで判定します。
例:① 自動販売機で飲料(1本150円)を20本(3,000円)購入する場合
⇒1回の商品購入金額(1本150円)で判定
② 〇〇施設の入場券(1枚2,000円)を4枚(8,000円)購入し使用する場合
⇒1回の使用金額(4枚8,000円)で判定

(適格請求書発行事業者からの課税仕入れに係る経過措置の適用等)
問113−2 当社は、仕入先が多数あり、登録番号の記載のない請求書の交付を受けることも多くあります。この場合、登録番号の記載のない請求書等に係る課税仕入れについて、適格請求書発行事業者から交付を受けたものを含め、一律に、その仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受けてもよいでしょうか。【令和6年4月追加】
【答】
適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れであっても、適格請求書等保存方式開始から一定期期間は、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています(28年改正法附則52、53)。
ただし、当該経過措置の適用は、取引の相手方が適格請求書発行事業者以外の者である場合に限りませんので、例えば適格請求書発行事業者から交付を受けた登録番号のない請求書等を含め、区分記載請求書等の記載事項を満たしたものの保存がある場合には、一律に、当該経過措置の適用を受けることとなります。
(消費税課税事業者選択届出書を提出しても2割特例の適用ができる場合)
問116−2 私は、今まで免税事業者であったものの、令和5年に入ってから適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者(課税事業者)となった個人事業者です。当該登録申請書の提出に当たり、「消費税課税事業者選択届出書」も同時に提出したのですが、その提出日によっては令和5年分の確定申告において2割特例が適用できないことがあると聞きました。私のような場合には、令和5年分の申告において2割特例を適用できますか。【令和6年4月追加】
【答】
2割特例は「消費税課税事業者選択届出書」の提出により課税事業者となった事業者も適用を受けることができますが、令和5年10月1日より前から同届出書の提出により引き続き課税事業者となる同日を含む課税期間、つまり、令和5年9月30日以前の期間を含む課税期間の申告については、2割特例の適用を受けることはできません(注1)(28年改正法附則51の2①)。
「消費税課税事業者選択届出書」の効果は、原則として、その提出した日の属する課税期間の翌課税期間から生じるところ、ご質問の場合、その効果は令和6年1月1日から生じるため、令和5年分については、令和5年10月1日(適格請求書発行事業者の登録日)から令和5年12月31日までの期間に行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについて申告を行うことになり、令和5年9月30日以前の期間を含まないことから、2割特例の適用を受けることができます(注2)。
(注)1 「消費税課税事業者選択届出書」の提出により令和5年10月1日の属する課税期間から課税事業者となった事業者が、同日より前に登録申請書を提出している場合は、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を当該課税期間の末日までに提出することで、令和5年10月1日を含む課税期間に係る申告につき2割特例の適用を受けることができます(その場合、上記と同様、登録日から課税期間の末日までの期間に行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについて申告を行うことになります。)。
2 令和6年1月1日から課税事業者となる効果が生じますが、令和6年分の申告においても、基準期間である令和4年分の課税売上高が1,000万円以下である場合には、原則として、2割特例の適用を受けることができます。
(2割特例を適用するよりも簡易課税制度を適用した方が納付税額が少なくなる場合)
問117−2 当社は、ハンドメイド作家が作成した雑貨を仕入れ、小売店に販売する事業を営んでいる事業者です。これまで免税事業者でしたが、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者となり、令和6年9月期について初めて消費税の確定申告を行います。このような場合、消費税の納付税額を軽減できる2割特例や、簡易課税制度も適用できると思いますが、どのような方法により消費税の申告を行えばよいのでしょうか。【令和6年4月追加】
【答】
消費税の申告方法は、仕入控除税額について実額で計算する「一般課税」、業種ごとに決められたみなし仕入率を適用し仕入控除税額を計算する「簡易課税制度」、そして、適格請求書等保存方式を機に免税事業者から適格請求書発行事業者となった方を対象に、売上税額の2割を納税額として計算する「2割特例」による方法があります。
貴社の行っている事業は、「卸売業」に該当し、簡易課税制度を適用して申告する場合、90%のみなし仕入率が適用されることになりますので、2割特例を適用するよりも、消費税の納付金額が少なくなると考えられます。
2割特例については、適用を受ける旨を確定申告書に付記することで適用できますが、簡易課税制度は、原則として、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります(その課税期間の基準期間における課税売上高が5,000万円以下である場合に限ります。)。しかし、免税事業者が登録日から課税事業者となる経過措置の適用を受ける場合には、その登録日の属する課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した届出書をその課税期間中に提出すれば、その課税期間から、簡易課税制度の適用を受けることができることとされています。
したがって、ご質問のような前提のもと、令和6年9月期の申告について簡易課税制度の適用を選択する場合には、課税期間の末日(令和6年9月30日)まで(注)に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。
なお、多額の設備投資などがあり、課税仕入れ等に係る消費税額が課税売上げに係る消費税額を上回る場合、一般課税であれば還付税額が生じますが、簡易課税制度や2割特例を適用している場合には、通常、還付税額が生じることはありませんので、その点も踏まえ申告方法をご検討ください。
(注)課税期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日その他一般の休日、土曜日又は12月29日、同月30日若しくは同月31日であったとしても、これらの日の翌日とはなりませんのでご留意ください。
(参考)免税事業者が登録日から課税事業者となる経過措置についての詳細については、問7《免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合》を、簡易課税制度を選択する場合の手続等についての詳細については、問9《簡易課税制度を選択する場合の手続等》を、それぞれご参照ください。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。
週刊T&Amaster 年間購読
新日本法規WEB会員
試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。
人気記事
人気商品
-
-
団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス -
Copyright (C) 2019
SHINNIPPON-HOKI PUBLISHING CO.,LTD.