解説記事2024年07月29日 SCOPE 大手から中小事務所への異動に監査審査会が問題意識(2024年7月29日号・№1037)
合併を除く監査人異動は115件と減少傾向も
大手から中小事務所への異動に監査審査会が問題意識
大手監査法人から準大手監査法人又は中小規模監査事務所へ会計監査人を変更する傾向が続いているが、公認会計士・監査審査会は、大手監査法人がリスクの高い企業の監査を回避し、監査態勢が十分に整っていない中小規模監査事務所に異動している状況に問題意識を持っていることがわかった。監査の担い手としての中小規模監査事務所の役割が増大している状況を踏まえ、公認会計士・監査審査会の検査では、中小規模監査事務所に対する検査をより重視した運用を行う方針を示している。
中小規模監査事務所に対する検査を重視した運用
公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という)は7月19日、「令和6年版モニタリングレポート」を公表した。それによると、令和6年6月期の会計監査人の異動は200件であり、合併による異動の影響を除いた件数は115件であり、令和4年6月期の228件(合併による異動を除く)をピークに減少傾向となっている(図表1参照)。一方で、監査事務所の規模別では、大手監査法人から準大手監査法人又は中小規模監査事務所へ変更する傾向が依然として続いている(図表2参照)。このような状況について審査会は、大手監査法人を主とした監査報酬、監査リスク、業務遂行に必要な人員等を考慮した監査契約の検討や被監査会社による継続監査期間の長期化、監査報酬の相当性を考慮した会計監査人の選定が一巡したとみている。

公認会計士・監査審査会は、大手監査法人がリスクの高い企業の監査を回避し、監査態勢が十分に整っていない中小規模監査事務所に異動している状況については問題意識を持っているようだ。大手監査法人から準大手監査法人又は中小規模監査事務所への変更は、上場会社監査の担い手としての中小規模監査事務所の役割が増大していることを意味するが、中小規模監査事務所に対する審査会の検査では、監査業務を適切に実施する態勢が十分でないものも見受けられており、中小規模監査事務所に対する監査品質の維持・向上が喫緊の課題となっていると指摘している。
このため、審査会の令和6事務年度監査事務所等モニタリング基本計画では、中小規模監査事務所については、日本公認会計士協会の品質管理レビュー結果のほか、監査事務所の業務管理態勢や上場被監査会社に係る監査上のリスクの程度等を踏まえ、監査事務所の品質管理態勢を早急に確認する必要性を検討するとしている。加えて、改正公認会計士法において上場会社等監査人登録制度が導入されたことに鑑み、令和6事務年度においても、中小規模監査事務所に対する検査をより重視した運用を行うとしている。
登録制度導入で監査の品質を担保
令和4年5月の公認会計士法の改正により、上場会社等監査人登録制度が導入された。中小規模監査事務所への交代が進む状況を踏まえ、監査の品質を担保するため、上場会社の監査を行うには上場会社等監査人名簿への登録が必要となる(なお、令和6年7月18日現在で66事務所が登録済み)。登録を受けるには人的体制や品質管理体制の整備が必要となる。例えば、品質管理体制では、業務の品質の管理に係る選任の部門の設置、業務の品質の管理に主として従事する公認会計士の選任が必要とされており、監査リスクに対応できる体制の整備が求められている。
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