カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2024年08月05日 ニュース特集 改正リース会計基準、2027年4月1日から適用へ(2024年8月5日号・№1038)

ニュース特集
会計処理の適用が困難な場合には改めて検討
改正リース会計基準、2027年4月1日から適用へ


 企業会計基準委員会(ASBJ)が開発している改正リース会計基準等だが、公開草案から寄せられたコメントの対応を終えつつあり、その概要が固まってきた。適用時期については、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からとされる方向だ(早期適用可)。2年超の準備期間で会計システムの構築や税法への対応が間に合うのかといった懸念も寄せられていたが、収益認識会計基準第96項と同様、実務上著しく困難な状況が生じ、市場関係者からその旨が提起された場合には、改めて別途検討することで解決を図るとしている。
 本特集では、公開草案からの変更点を中心に改正リース会計基準等の概要を紹介する。

会計システムや税法への対応が間に合うのかといった懸念の声に対応

 改正リース会計基準の開発が終盤に差し掛かっており、遅くとも2025年3月末までには正式決定され、公表される可能性が高くなってきた。これを踏まえ、企業会計基準委員会は2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用(早期適用も可)する方針を固めている。公開草案では、会計基準公表から2年程度経過した「20XX年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から適用する」との考え方を示すことにとどまっていたものである。
 適用時期に関しては、適用までに会計システムを構築することができるのか、また、会計基準が決定した後に取扱いが定まる税法への対応が間に合うのかといった懸念の声が聞かれていたが、同委員会では、リース会計基準の実務への適用を行う過程で同会計基準の開発時に想定していなかった事態に備えることができるように、収益認識会計基準第96項と同様の取扱いを設けるとしている。
 具体的には、リース会計基準の実務への適用を検討する過程で、会計基準における定めが明確であるものの、これに従った処理を行うことが実務上著しく困難な状況が市場関係者により識別され、企業会計基準委員会にその旨を提起した場合には、改めて別途検討を行うことで解決を図るとしている。

収益認識会計基準の適用時には検針日基準について改めて検討
 収益認識会計基準の適用の際には、電気事業連合会及び一般社団法人日本ガス協会より、決算月に実施した検針日から決算日までに生じた収益の見積りが実務的に困難であるとの理由で、廃止された検針日基準を代替的な取扱いとして認めて欲しいとの提案を受け、企業会計基準委員会は、別途の対応を図ることの要否等について審議を行っている。審議の結果、最終的に検針日基準は認められなかったものの、見積方法の代替的な取扱いが認められたという経緯がある。

税務上の取扱いは令和7年度税制改正で
 また、適用時期に並び最大の論点の1つとなっていたのが個別財務諸表にも連結財務諸表と同じ会計処理を適用するかどうかという点だ。改正リース会計基準は、IFRS第16号「リース」と同様、借手のリースについて、リースがファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかにかかわらず、すべてのリースを金融の提供として捉えて、使用権資産に係る減価償却資産及びリース負債に係る金利費用をそれぞれ認識する単一の会計処理モデルを採用しており、現行のリース会計基準と大きく異なっている。同委員会では、原則として、連結財務諸表と個別財務諸表の両方について同じ会計基準を適用することとしているが、個別財務諸表にも適用することとした場合には、税務上の取扱いなどに大きな影響を及ぼすからだ。しかし、同委員会では、会計基準を開発する上で、会計上の取扱いの変更に合わせて税法上の取扱いが変更されることを前提とした基準開発を行うことは難しいと判断。公開草案通り、個別財務諸表にも改正リース会計基準を適用することとしている(本誌1036号12頁参照)。
 なお、改正リース会計基準の早期適用については、2025年4月1日以後開始する連結会計年度等の期首から早期適用が可能となることが想定されているため、税制上の取扱いについては、令和7年度税制改正で議論されることになる。
鉱物等の探査等は範囲から除外
 リース会計基準の範囲については、「鉱物、石油、天然ガス及び類似の非再生型資源を探査する又は使用する権利の取得」が除外されることになった。また、収益認識会計基準の範囲に含まれる貸手による知的財産のライセンスの供与についても除外されているが、製造又は販売以外を事業とする貸手は、当該貸手による知的財産のライセンスの供与についてリース会計基準等を適用することができることとされている。

原則はリースとリースを構成しない部分に分けて会計処理も

 リースの識別については、基本的にIFRS第16号の定めと整合させて、借手と貸手の両方に適用することとしている。リースの識別に関する定めは企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」では規定されていなかったものだ。
 例えば、借手及び貸手は、リースを含む契約について、原則として、リースを構成する部分とリースを構成しない部分とに分けて会計処理を行うこととされているが、借手は、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごと又は性質及び企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに、リースを構成する部分とリースを構成しない部分とを分けずに、リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分とを合わせてリースを構成する部分として会計処理を行うことを選択することができるとされている。また、貸手は、リースを含む契約についてリースを構成しない部分が収益認識会計基準の適用対象であって、かつ、①リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分の収益の計上の時期及びパターンが同じである、②リースを構成する部分がオペレーティング・リースに分類される−との2つの要件を満たす場合には、契約ごとにリースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分を合わせて会計処理の単位として取り扱うことができることとされている。
貸手のリース期間、借手と同じ選択も可
 リース期間に関しては、借手のリース期間はIFRS第16号の定めと同様に、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間及び借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間を加えて決定することとしている。
 一方、貸手のリース期間は、公開草案では、企業会計基準第13号等を踏襲し、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間(事実上解約不能と認められる期間を含む)にリースが置かれている状況からみて借手が再リースする意思が明らかな場合の再リース期間を加えて決定する方法とされていたが、これに加えて、借手のリース期間と同様に決定する方法についても選択適用できることとなった。これは、IFRS第16号と整合的な方法となる。
短期及び少額リースの簡便的な取扱いも可
 現行のリース会計基準と同様、短期及び少額リースについては簡便的な取扱いが可能となっている。リース会計基準では、「短期リース」について、リース開始日において、借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースと定義している。借手は、短期リースについて、企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」の取扱い及びIFRS第16号の取扱いと同様に、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することを認めることとしている。
 「少額リース」に関しては、重要性が乏しい減価償却資産や、①企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース、又は②新品時の原資産の価値が少額であるリースについては、借手はリース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用計上を認めている。
 なお、①の企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリースは、企業会計基準適用指針第16号において定められていたリース契約1件当たりの借手のリース料が300万円以下であるかどうかにより判定する方法を踏襲したもの。また、リース契約1件当たりの金額は、原則として、借手のリース期間中に貸手に支払うリース料によるが、契約期間に貸手に支払うリース料によることができるとされ、加えて、借手のリース料から維持管理費用相当額の合理的見積額を控除することができるとしている。一方、②の新品時の原資産の価値が少額であるリースは、IFRS第16号と同様の方法を認めることを目的として取り入れたもの。当該方法は、IFRS第16号の結論の根拠で示されているIFRS第16号の開発当時の2015年において新品時に5千米ドル以下程度の価値の原資産のリースを念頭に置いている。
残存価額をゼロとすることも
 リース会計基準では、借地権の設定に係る権利金等は、使用権資産の取得価額に含め、原則として、借手のリース期間を耐用年数とし、減価償却を行うことになる。この場合、借手のリース期間の終了時に残存価額があると認められるときには借手のリース期間の終了時における残存価額を見積った上で残存価額を控除した金額により減価償却を行うことが考えられるが、借地権の承継が行われる可能性を見込むことや借り手のリース期間の終了時に予想される譲渡価額を見積ることができないときには、残存価額をゼロとすることも考えられるとしている。

セール・アンド・リースバック取引はIFRS第16号と異なる定め

 セール・アンド・リースバック取引については、IFRS第16号の取扱いとは異なる定めを置いている。リース会計基準では、セール・アンド・リースバック取引に該当する場合には、Topic842を参考に、(1)収益認識会計基準などの他の会計基準等に従うと売手である借手による資産の譲渡が損益を認識する売却に該当しない又は(2)収益認識会計基準などの他の会計基準等に従うと売手である借手の資産の譲渡が損益を認識する売却に該当するが、リースバックにより、売手である借手が資産からもたらされる経済的利益のほとんどすべてを享受することができ、かつ、資産の使用に伴って生じるコストのほとんどすべてを負担することとなる−のいずれかを満たすときは、売手である借手は、当該セール・アンド・リースバック取引について資産の譲渡とリースバックを一体の取引とみて、金融取引として会計処理を行うことになる。
 一方、セール・アンド・リースバック取引に該当する場合に(1)及び(2)を満たさないときは、売手である借手は、当該資産の譲渡について収益認識会計基準などの他の会計基準等に従い損益を認識し、リースバックについてリース会計基準等にしたがい借手の会計処理を行うこととしている。

フリーレント期間も含め契約期間で使用料計上
 企業会計基準第13号では、オペレーティング・リース取引は、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行うことのみを定めていた。リース会計基準では、フリーレント(契約開始当初数か月間賃料が無償となる契約条項)やレントホリデー(数年間賃貸借契約を継続する場合に一定期間賃料が無償となる契約条項)に関する会計処理を明確にして収益認識会計基準との整合性を図るため、貸手は、オペレーティング・リースによる貸手のリース料について、貸手のリース期間にわたり原則として定額法で計上することとしている。
 ただし、貸手が、貸手のリース期間について、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間にリースが置かれている状況からみて借手が再リースする意思が明らかな場合の再リース期間を加えて決定する場合、貸手のリース期間に無料賃借期間が含まれるときは、貸手は契約期間における使用料の総額について契約期間にわたり計上することとしている。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索