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解説記事2024年09月30日 ニュース特集 リヒテンシュタインの財団保有のバハマ法人に外国子会社合算税制(2024年9月30日号・№1045)

ニュース特集
個人に適用された外国子会社合算税制
リヒテンシュタインの財団保有のバハマ法人に外国子会社合算税制


 今回の特集では、個人に適用された外国子会社合算税制に関する裁決事例を2件紹介する。1件目は請求人がリヒテンシュタイン公国に設立した財団を通じて全株式を保有するバハマ法人が、請求人に係る「外国関係会社」に該当するか争われた裁決(広裁(所)令5第9号)。国税不服審判所は、請求人は財団の資本金の全額を拠出し、発行株式等の全部を保有していると認められることから、財団を通じて株式等を保有しているバハマ法人は、請求人に係る「外国関係会社」に該当するとの判断を示した。リヒテンシュタイン会社法には財団の株式等に関する定めはないが、本件財団については、請求人が資本金の全額を拠出し、自益権及び共益権を単独で有していることから、財団の「株式等の数」を有すると同視できると判断した。
 2件目は、請求人が外国子会社合算税制に規定する居住者に該当するか争われた裁決だ(東裁(所)令5第55号)。国税不服審判所は、外国子会社合算税制の適用に当たっては、租税特別措置法40条の4に規定する各要件とは別に、請求人の主張する支配力の有無等が同条の適用又は適用除外の要件になるものと解することはできないとして「居住者」に該当するとの判断を示し、外国子会社合算税制を適用した原処分庁の更正処分を適法とした。

リヒテンシュタイン会社法、財団への財産拠出者が保有すべき株式等の規定なし

 1件目に紹介する裁決は、バハマ国の法人が請求人(個人)に係る「外国関係会社」に該当するか否かが争われたもの。請求人はリヒテンシュタイン公国に設立した財団を通じて、バハマ国の法人の全株式を保有していることから、原処分庁が当該法人は外国関係会社に該当し、外国子会社合算税制の適用があるとして所得税等の更正処分等を行ったことに対し、請求人が外国子会社合算税制の適用はないとして原処分の全部の取消しを求めたものである。原処分庁は税務調査により、日本とリヒテンシュタイン公国、バハマ国、スイス連邦の各国との租税条約に基づき、情報の提供を要請し、今回の更正処分等に至ったものである。
 請求人は、リヒテンシュタイン会社法には、財団に対する財産の拠出者が保有すべき株式又は出資持分に相当するものに関する規定が何ら存しないから、同法に基づき設立される財団は、保有の対象となるべき株式又は出資持分が存しない法人であるとし、バハマ法人は請求人に係る「外国関係会社」には該当しないと主張した。なお、財団の資本金30,000スイスフランは請求人が全額を拠出しており、財団定款の要旨はのとおりとなっている。

【表】財団定款の要旨

・財団の「Stiftungskapital」(財団資本金)は30,000スイスフランである。設立者及び(又は)第三者は、いつでも財団に更なる資産を寄附することができる。財団の資産は、資産管理目的で、また、受益者のために、その受益の範囲内で担保に提供し、売却することが認められる(第2条 資産)。
・財団の目的は、財団の資産の管理、経済的助成を必要とする者に対する寄附又は他の経済的利益の供与を行うための資産及びその収益の使用である(第3条 目的)。
・財団の組織は、財団の評議会及び代表者とする。設立者は、財団の資産を管理するための特別組織などを設けることができる(第4条 財団の組織)。
・場合に応じて設置されるその他の組織の任務、責任、能力及び機能並びに職員の配置方法は、定款に記載がない限り、設置時に設立者によって決定される(第7条 その他の組織)。
・財団の資産に関して設立者が独自に設けた組織(特別組織)が存在する場合、財団の資産の管理については、この組織が単独で責任を負う。財団の資産の管理権限を有する特別組織は、制約を受けることなく、自らの義務に従う裁量で行動するものとする(第9条 財団の資産の管理)。
・最初の会計年度は、財団の設立日に開始し、その年の12月31日に終了する。それ以降の会計年度もそれぞれ12月31日に終了する(第12条 会計年度)。

資本金を拠出し、自益権及び共益権があれば「株式等の数」を有すると判断

 外国関係会社とは、外国法人で、その発行済株式等のうちに居住者及び内国法人並びに特殊関係非居住者が有する直接及び間接保有の株式等の数の合計数又は合計額の占める割合が100分の50を超えるものとされており(措置法40条の4第2項1号)、居住者の外国関係会社の支配関係を判定するための要件として、「株式等の数」を基準とするものとしている。審判所は、外国子会社合算税制は、内国における税負担の公平を図るため、軽課税国にペーパーカンパニー等を設立して、その事業を実質的に支配するなど、いわゆるタックスヘイブンを利用した租税回避に対する規制として導入されたものであり、このような制度趣旨から考えると、その支配関係の有無は形式上、名目上のものではなく、子会社の収益や資産を実質的に支配し得る地位の有無という観点から判定されなければならないと解されるとし、加えて租税特別措置法40条の4の規定が株式の数に限らず出資の金額までも判定の基準に加えていることに鑑みると、「株式等の数」とは、外国関係会社を支配し得る単位化された物的持分としての法的地位を指すものと解され、居住者がこうした法的地位を取得しているかどうかは、外国関係会社の設立準拠法のほか、定款や会社規則等の具体的事情を個別的に考慮して判定すべきものと解するのが相当であるとした。
 また、日本の会社法等によれば、株主は、引き受けた株式の引受価額を限度とする出資義務を負う一方、自益権(株主が会社から経済的利益を受けることを目的とする権利)と共益権(株主が会社の経営に参与することを目的とする権利)を有していると解されることからすれば、資本金を拠出し、自益権及び共益権を有しているのであれば、株式会社等における構成員の地位(法的地位)を取得しているものと評価でき、「株式等の数」を有すると同視できるものと解されるとした。
請求人は財団の資産の管理権限を単独で掌握
 本件財団については、請求人が資本金の全額を拠出し、財団の資産の管理権限を単独で掌握し、財団の資産及びその収入を単独で受けることができるのであるから、自益権及び共益権を単独で有しているものということができると指摘。株式会社等における構成員の地位(法的地位)を取得しているものと評価できるものであって、財団の「株式等の数」を有すると同視できるものとの判断を示した。
 したがって、請求人は、財団の資本金の全額を拠出し、発行済株式等の全部を保有し、本件財団を通じてバハマ法人の株式等を100%保有していることから、本件バハマ法人は請求人に係る「外国関係会社」に該当するとし、請求人の主張を斥けた(ただし、原処分の更正処分の金額を一部取消し)。

外国子会社合算税制の支配力の有無は要件にあらず

 2件目に紹介する裁決は、請求人が資産管理会社である外国法人から配当所得を得ており、当該外国法人に関して外国子会社合算税制が適用されたものだ。
 請求人は、株式を発行した法人から配当金を受領していないため、当該法人に対して訴訟を提起して配当金支払請求権の存在を認める判決を取得しなければならず、この判決を取得するという停止条件が満たされていない以上、権利の確定があったとはいえないことから、配当金は所得税法36条1項に規定する「収入すべき金額」に該当しないと主張。また、外国子会社合算税制の趣旨は、一定の支配力を有する株主が、軽課税国に設立した法人に利益を留保することによって日本での課税を免れることを防ぐこと等にあることから、租税特別措置法40条の4第1項1号に規定する「居住者」とは、法人の剰余金の配当を受け得る支配力を有する株主をいうと解されるため、外国法人に対する支配力を喪失している請求人は、同号に規定する「居住者」には該当しないなどと主張した。
配当金未払いは反対債権との相殺が理由
 審判所は、配当支払請求権は法人の取締役会における配当決議によって具体的な独立の債権として成立したことにより、配当決議があった日に法律上行使することができるようになるとともに、権利実現の可能性を客観的に認識することができる状態になり、その収入の原因たる権利が確定したと認められることから、本件配当金は「収入すべき金額」に該当するとの判断を示した。また、法人が配当金の支払をしない理由は、法人が有する反対債権と相殺したことにあるから、配当金の支払がないことをもって、勝訴判決を取得することという停止条件が付与されているものと評価することはできないとした。
 その上で、租税特別措置法40条の4の規定は、居住者が軽課税国に設立した外国法人を利用して経済活動を行い、外国法人に利益を留保することによって日本における課税を回避するような事態を防止し、課税要件の明確化や執行面における安定性を確保しつつ、税負担の実質的な公平を図ることを目的とするものと解されると指摘。その具体的な適用に当たっては、同条の各要件に係る判断を通じてその目的の実現を図ることとしたものと解するのが相当であり、同条が明文で規定する各要件とは別に、請求人の主張する支配力の有無等が同条の適用又は適用除外の要件になるものと解することはできず、請求人は、法人の発行済株式のうち100分10以上保有することから、同号に規定する「居住者」に該当するとして、請求人の主張を斥けた。

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