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解説記事2024年12月09日 ニュース特集 法人課税信託を利用した株式交付型スキームに規制(2024年12月9日号・№1054)

ニュース特集
令和7年度改正、「退職金の5年ルール」の調整規定を見直し
法人課税信託を利用した株式交付型スキームに規制


 令和7年度税制改正では、法人課税信託に係る所得税の課税の適正化が図られることが明らかとなった。法人課税信託(受益者等の存しない信託)については、受益者等が指定され、法人課税信託に該当しなくなった場合には、受益者等は受託法人から信託財産の帳簿価額(簿価)を引き継ぐこととされている。一部には、この取扱いを適用し、信託内において信託会社が新株予約権を購入後、権利行使を行い株式を取得し、その後、役員等を受益者等に指定して株式を交付するスキームが行われており、この場合には受益者等の指定時には課税が行われず、株式の譲渡時まで課税を繰り延べることが可能になっている。
 また、いわゆる「退職年金の5年ルール」にも規制が入る。現行制度では、先に確定拠出年金の一時金を受け取った後、退職一時金を受取るまでの期間が5年以上経過していれば、いずれも退職所得控除を満額利用することが可能になっている。一方、退職一時金を先に受け取る場合の調整規定は受給をした年以前20年とされていることから、課税の公平性の観点から「10年内」に見直すこととしている。
 本特集では、令和7年度税制改正で課税の公平性等の観点から見直しが行われる項目について解説することとする。

受益者が指定された場合は受託法人から信託財産の簿価を引継ぎ

 令和7年度税制改正では、新たに法人課税信託を利用した株式交付型のスキームについて規制が入ることになった。
 現行、受益者等の存しない信託である法人課税信託については、受益者等が指定され、法人課税信託に該当しないこととなった場合には、受益者等は、受益法人から信託財産の帳簿価額(簿価)を引き継ぐこととされ、また、その引継ぎにより生じた経済的利益については課税を行わないこととされている(所法67条の3①②)。この規定を適用し、一部の信託会社では、①新株予約権の発行法人の役員等が法人課税信託に金銭を信託し、②信託内において受託者(信託)が新株予約権を購入後、③信託内において権利行使をして取得した株式を、④受益者等に役員等を指定して、⑤株式を交付することにより税負担の軽減を図る法人課税信託を利用した株式交付型のスキームが行われている(図表1参照)。この場合、受益者等の指定時には課税が行われず、株式の譲渡時まで課税を繰り延べることができる。

受益者が指定された時点で給与所得課税

 このため、令和7年度税制改正では、法人課税信託に係る所得税の課税の適正の観点から見直しが行われる方向となっている。
 具体的には、法人課税信託の信託財産に属する株式(譲渡制限解除時に課税がされる特例譲渡制限株式等を除く)について、受益者等が指定されて法人課税信託に該当しなくなったときに、受益者等のその株式の取得に係る経済的利益について給与所得等として課税を行うこととし、その受益者等はその時の価額によりその株式を取得したものとする(図表2参照)。給与課税を行う際には、発行法人が源泉徴収を行うことになる。

 なお、「委託者」とは、発行法人、発行法人の役員・従業員・株主、これらの者と特殊の関係のある者であることを要件とし、「法人課税信託」については、その信託財産に属する株式の発行法人の役員又は従業員の勤続年数等の基準を勘案して発行法人等が定めた受益者等の指定に関する取決めに従って、その役員又は従業員(役員又は従業員等であった者を含む)が受益者等となるべき者として指定されるものであることを要件とする。

既にDC一時金を受給している場合の調整規定を受給年以前10年内に

 定年の引き上げ等により退職一時金の受給年齢が65歳以降となるケースが増えているようだ。一定の期間(調整期間)内に複数の退職手当等の支払があった場合には、退職所得控除額の計算においては勤続年数の重複排除規定が設けられている。
 原則として、退職手当等の支払を受けた年以前5年内に他の退職手当等の支払を受けたことがある場合において、その受給年に支払を受ける退職手当等についての勤続期間の一部が他の退職手当等についての勤続期間と重複している場合には、課税の公平の観点から、それぞれの退職手当等の勤続期間について重複排除をしたところで勤続年数を計算することとされている。
 ただし、確定拠出年金に係る老齢一時金(DC一時金)については、60歳から75歳までの間に受給日を任意に選べることから、特例として、その受給をした年以前20年以内に他の退職手当等の支払を受けたことがある場合において、重複排除規定が適用される(図表3(i)参照)。しかし、先にDC一時金を受給した場合には、その重複排除に係る調整期間は原則どおり5年内とされているため、図表3の(ii)のケースでは、調整規定の対象とならず、(1)と(2)のいずれも退職所得控除を満額利用することが可能になっている。このため、すでにDC一時金を受給している場合には、「支払を受けた年以前5年内」を「支払を受けた年以前10年内」に延長する。

 また、調整規定及び合計所得金額判定の適正執行の観点から、現行は役員のみとされている退職所得の源泉徴収票の税務署長への提出について、一律で義務化することとする。

税務調査の際の資料等の提出拒否は令和8年度税制改正以降で検討

 本誌がお伝えした通り、国税庁が問題視し、11月13日の政府税制調査会の「経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合」(座長:岡村忠生京都大学名誉教授)で議題となった「税に対する公平感を大きく損なうような行為への対応」についても規制が入ることになった(本誌1052号9頁参照)。
 税務調査の際に、国税当局が求める資料等が提示・提出されず正確な事実関係を確認することができない事例が把握されていることを踏まえ(図表4参照)、納税者に協力を促すための措置について、令和8年度税制改正以降において検討していくこととしている。前述の専門家会合の委員からは、調査対象法人が資料提供の求めに応じない場合には、損金算入を否定する仕組みを導入すべきとの意見が寄せられている。

国税犯則調査手続をデジタル化
 また、国税犯則調査手続のデジタル化に対応するための制度についても、令和8年度税制改正で結論を得るとされた。例えば、税務職員が作成する調書・告発書等は、紙媒体による書類によることとされ、段ボール数十箱に及び告発書類等の出力や割印が必要になるなど、膨大な事務負担が課題となっている。
 今回の見直しは、政府が令和6年6月21日に閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において、「刑事手続に関連する各種犯則調査手続について、各調査機関を所管する省庁等は、法務省・最高裁判所・デジタル庁等と連携しつつ、刑事手続のデジタル化との一体性に配慮し、可及的速やかに、犯則調査手続のデジタル化に対応するための法令及びIT基盤の整備を実現する。」と明記されたことを踏まえたものである。

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