解説記事2024年12月23日 ニュース特集 中小企業経営強化税制、収益力強化設備に建物を追加(2024年12月23日号・№1056)
ニュース特集
適用要件を見直し令和9年3月末まで2年間延長
中小企業経営強化税制、収益力強化設備に建物を追加
中小企業の多くが適用している中小企業投資促進税制及び中小企業経営強化税制については、令和7年3月31日で適用期限切れとなるため、令和7年度税制改正では、適用期限が延長されるか否かが大きな注目点の1つとされていた。これらの投資減税については、適用期限が2年間延長されるとともに、中小企業経営強化税制については、インセンティブ措置としての機能を発揮できるよう適用要件等の見直しが行われることになった。特に中小企業経営強化税制の収益力強化設備(B類型)については、売上高100億円超を目指す中小企業を対象に建物を新たに追加する。
また、同じく令和7年3月31日で適用期限切れとなる中小法人等の軽減税率の特例も2年間延長することとなったが、所得10億円超の中小法人等は税率が2%上がり17%とされた。中小法人等の軽減税率は、リーマンショックの際の経済対策として時限的に設けられた措置であることを踏まえ、次の適用時期の到来時に改めて見直しを検討することとされている。
売上高100億円超をめざす中小企業へのインセンティブ措置
中小企業の多くが適用する中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制だが、令和7年度税制改正により令和9年3月31日まで2年間延長されることになる。特に中小企業経営強化税制については、成長意欲の高い中小企業の設備投資を後押しするため、収益力強化設備(B類型)について、売上高100億円を目指す中小企業に係る拡充措置を講ずることとしている(図表1参照)。

取得価額は1,000万円以上
具体的には、売上高100億円超を目指す投資計画が、経営規模拡大要件を満たすものである場合に、その計画に基づいて行う設備投資について、B類型の対象資産に建物を追加するというもの。①賃上げ率2.5%以上の計画の場合は、建物に対する特別償却15%又は税額控除1%、②賃上げ率5%以上の計画の場合は、建物に対する特別償却25%又は税額控除2%を適用できる。建物は、併せて取得する附属設備も含まれ、取得価額の合計額が1,000万円以上のものとされている。なお、経営規模拡大要件とは図表2の通りとなっている。
【図表2】経営規模拡大要件
〇売上向上のための施策及び設備投資時期を示した行程表(ロードマップ)を作成していること |
ただし、拡充措置に係る計画期間中は、中小企業投資促進税制及び中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例については適用不可とする方向であるため留意したい。
暗号資産マイニング業用の設備を完全に除外
中小企業経営強化税制の各類型の要件の見直しも併せて行われる。「生産性向上設備」であるA類型については、現行制度では、「旧モデルと比べて生産性が年平均1%以上改善する設備」とされているが、この生産性の指標が見直される。生産性の指標については、「単位時間当たりの生産量」「歩留まり率」「投入コスト削減率」のいずれかにより評価することとされる。また、「収益力強化設備」のB類型では、「投資利益率が5%以上の投資計画に係る設備」が対象となっているが、投資利益率を「7%以上」に引き上げる。
なお、新型コロナ対応として令和2年度税制改正で導入された「デジタル化設備」のC類型については除外(適用期限で廃止)される。
そのほか、暗号資産マイニング業の用に供する設備が対象設備から除外される。令和5年度税制改正では、コインランドリー業(病院、寄宿舎等の施設内に設置されているものは除く)とともに暗号資産マイニング業が除外されており、多くの節税スキームが封じられることになった。ただし、除外となったのは、「管理のおおむね全部を他の者に委託する場合」に限られていたため、一部ではあるものの、形式的な要件を揃え、「事業の用に供した」として中小企業経営強化税制を適用した事例があったことから完全に対象設備から除外されることになっている。
また、食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律の改正を前提として、同法の認定を受けた持続的供給事業活動計画(仮称)に記載された経営力向上設備等も中小企業経営強化税制の対象とする。
中小法人の軽減税率の特例は2年延長も一律適用を見直し
中小法人等の軽減税率の特例については、賃上げや物価高への対応に迫られている中小企業の状況を踏まえ、2年間延長されることになった。
所得10億円超の中小法人等は17%に
ただし、リーマンショック以降一律に適用されてきた特例税率を一部見直すこととし、所得10億円超の中小法人等は2%上げて17%(現行15%)とする。見直しの影響額は1社あたり+16万円としている。また、グループ通算制度の適用を受けている法人については、特例税率の対象から除外する。
なお、中小法人等の軽減税率の特例については、リーマンショックの際の経済対策として時限的に設けられた措置であることを踏まえ、次の適用期限(令和9年3月31日)の到来時に改めて見直しの検討を行うとしている。この点、政府税制調査会の議論でも見直しや廃止・縮小を求める意見が寄せられている(本誌1053号39頁参照)。
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