税務ニュース2025年02月28日 OECDでは第1の柱の進展期待できず(2025年3月3日号・№1065) 第2の柱の恒久的セーフハーバーやリモートワーク課税の議論に期待
包摂的枠組みの共同議長声明(1月13日)によると、第1の柱の利益Aについては、米国が「利益Bの枠組みについてコンセンサスが得られていない」として反対したため、多国間協定は合意に至らなかった。利益Bについても、基礎的マーケティング・販売活動を行う納税者に適用を義務付けるか未だ結論が出ていない。さらに、トランプ氏が発出したGlobal Tax Dealに関する大統領令では、前政権が行ったグローバル税制改革に関する合意は米国内では効力がないことをOECDに通知しており、今後も利益Aの議論の進展は見通せない。加えて、この大統領令では、DST(デジタルサービス税)やUTPR(軽課税所得ルール)も念頭に対抗措置を講じるとしている。米国ではUTPRは租税条約違反との主張がある中、日本におけるUTPRの法制化が両国に緊張関係をもたらす恐れもある。
一方、第2の柱については、日本を含む各国で既に法制化・実施されており、2025年はガイダンス等の検討に進展が見られそうだ。特に、IIR(所得合算ルール)の申告実務上、多くの企業が依拠している移行期間CbCRセーフハーバーは2024年4月1日から2026年12月31日までの間に開始する会計年度(2028年6月30日までに終了するものに限る)にのみ適用されるため、各国内の法制化や実施、システム対応に係る準備期間等も考えれば、2025年にはOECDで恒久的セーフハーバーの議論が大きく進み、一定の結論が出る可能性がある。包摂的枠組みでは議論が続いているが、現在のCbCRに準拠した移行期間セーフハーバーのような簡素な仕組みを企業が要望する中、OECDが示す方向性が注目される。
また、OECDでは、ホームオフィスがOECDモデル租税条約第5条のPEに当たるか議論が続いている。リモートワークの定着で欧米の一部の国・州では税収への影響が政治的にも無視できなくなっている。令和7年度与党税制改正大綱前文の「経済活動のグローバル化やデジタル化による国境を越えたビジネスや人の往来の一層の拡大等も踏まえて、非居住者の給与課税のあり方について、今後とも検討を行っていく」との記述もこの点を踏まえたものであり、OECDでの議論の進展が期待される。
なお、国連では国際租税協力の枠組み条約の制定に向けた議論が2025年.2027年の間に行われる。越境サービスやデジタル課税などOECDと同じテーマが再度議論され、異なる結論が出る可能性がある。
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