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解説記事2020年03月30日 SCOPE 最高裁、譲渡所得課税への評価通達文理適用は違法と認定(2020年3月30日号・№828)

納税者に起死回生の時価論はあるか?
最高裁、譲渡所得課税への評価通達文理適用は違法と認定


 最高裁判所第三小法廷(林景一裁判長)は3月24日、取引相場のない株式の低額譲渡課税事案について、「譲渡所得課税の趣旨に照らせば、譲渡人の会社への支配力の程度に応じた評価方法を用いるべきもの」などと判示、国が敗訴した東京高裁判決を破棄し「本件株式譲渡の時における本件株式の価額等について更に審理を尽くさせるため、」事案を東京高等裁判所に差し戻す判決を言い渡した。

事案の経緯(上告審受理)から想定どおりの判決

 本件は、法人への株式の譲渡に係る譲渡所得の収入金額につき、被上告人らが、その譲渡における代金額を1株当たり75円として所得税の申告をしたところ、税務署長から、上記譲渡は所得税法59条1項2号所定の低額譲渡に当たるとして増額更正処分等を受けた(上記株式の譲渡の時における価額は1株当たり2505円とされた。)ため、その取消しを求めた事案である。
 原判決(東京高裁)は、配当還元方式を用いるのは譲受人が少数株主に該当する場合であるとし、本件の譲受人は少数株主に当たるから配当還元方式を用いるべきであるなどとして、被上告人らの請求を一部認容した。
 一方、国(上告人)は、上告受理申立理由として、「譲渡直前に譲渡人が保有する状態に基づいて判定されるべきこと」を主張し(本誌812号40頁参照)、上告審として受理されていた(本誌821号8頁、826号7頁参照)。
 最高裁第三小法廷の林裁判長は、原判決(東京高裁)の上告人敗訴部分の破棄、本件の東京高等裁判所への差し戻しを言い渡した。
 判決理由では、国の上告受理申立て理由を受け入れ、「譲渡所得に対する課税は、資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、これを清算して課税する趣旨のものである。」との最高裁判決を引用し、「譲渡所得課税の趣旨に照らせば、譲渡人の会社への支配力の程度に応じた評価方法を用いるべきものと解される。」と判示した。さらに、「原審は、本件株式の譲受人であるCが評価通達188の(3)の少数株主に該当することを理由として、本件株式につき配当還元方式により算定した額が本件株式譲渡の時における価額であるとしたものであり、この原審の判断には、所得税法59条1項の解釈適用を誤った違法がある。」として、原判決中の上告人敗訴部分を破棄した。
 原判決を見直す場合には上告審として受理し、口頭弁論を開催することから、本件についても原判決の破棄が想定されていた。

審理を尽くさせるための差し戻しに活路はあるか?

 ただ、原判決の破棄の理由が明確であるにもかかわらず、なぜ最高裁は自判せずに本件株式の価額等について審理を東京高裁に差し戻したのか疑問は残る。
 その理由としては、原判決が評価通達の文理解釈を採用したため、時価についての高裁での審理が不十分だったことがあげられる。今回の最高裁判決が譲渡人の立場での評価と判示している以上、国側の主張が圧倒的に優位な状況となったわけだが、被上告人は当初より「譲渡の時における価額は、買主の事情も考慮すべき」「利害相反する第三者間で成立した売買価額は税務上、原則として正常な取引条件で成立した適正価額(時価)として取り扱われるべき」と主張しており、また、その旨の学者の意見書も提出してきた。争える余地は狭められたものの、納税者側には、起死回生となる説得力のある時価論が求められている。

【表】一審での時価論(譲渡代金をもって時価とする主張と判示)

納税者の主張 一審の判示
 利害相反する第三者間で成立した売買価額は、税務上、原則として正常な取引条件で成立した適正価額(時価)として取り扱われることになる。
 譲受人Cは、既存のA(対象会社)の持株会を補完するものとしてAの役員や従業員の福利厚生を目的に設立され、現に株主の負担においてCへの出資がされており、Cから株主への配当もされている等、CはB(譲渡人)とは独立した第三者であり、本件株式譲渡は、利害相反する第三者間で行われたものである。
 本件株式譲渡の経緯や実態等に鑑みると、本件株式譲渡を原告らのいう利害相反する第三者間の取引(正常な株式の売買)とみることはできず、その対価をもって本件株式の時価(客観的交換価値)ということはできない。
 このような譲渡をしたことの目的としては、Aにおける経営の安定を一定程度保持しつつ、本件株式の譲渡による対価収入を減らしてでも、自身の相続人の相続税の負担を軽減するということ以外に考え難く、譲渡対価による収益を目的とする通常の取引としての合理性には乏しいものといわざるを得ない。

宇賀克也裁判官と宮崎裕子裁判官の補足意見
 本判決には、宇賀克也裁判官と宮崎裕子裁判官からの補足意見が付されている。
 宇賀克也裁判官は、「原審の通達に関する判示(通達の意味内容についてもその文理に忠実に解釈するのが相当であり、通達の文言を殊更に読み替えて異なる内容のものとして適用することは許されない。)について、課税に関する予見可能性の点についての原審の判示及び被上告人らの主張には首肯できる面があり、より理解しやすい仕組みへの改善がされることが望ましいと思われる。」としている。
 宮崎裕子裁判官は、「本件は、通達作成手法の問題点が顕在化した事案であったということができる。」としたうえで、「より重要なことは、ある通達に従ったとされる取扱いが関連法令に適合するものであるか否か、すなわち適法であるか否かの判断においては、そのような取扱いをすべきことが関連法令の解釈によって導かれるか否かが判断されなければならない。」「通達に従った取扱いは、当該通達が法令の内容に合致していない場合には適法とはいえない。」としている。

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