解説記事2025年04月07日 ニュース特集 令和7年3月期における法人税の誤りやすいポイント(2025年4月7日号・№1069)
ニュース特集
雇用者給与等支給額の計算に注意
令和7年3月期における法人税の誤りやすいポイント
4月に入り、3月決算作業も忙しくなってくるが、例年、課税処理が明確にもかかわらず、申告の際に処理が誤っている項目が散見されているので留意したい。例えば、中小企業向け賃上げ促進税制では、雇用者給与等支給額の計算において、給与等に充てるための他の者から支払を受ける金額が控除されていないケースがあるという。また、減価償却制度では、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備および構築物について、定率法を適用している誤りがある。本特集では、3月決算において中小企業が誤りやすい法人税処理の留意点を解説する。
前期の雇用者給与等支給額と一致しない場合は誤り
改正が頻繁に行われていることもあり、例年、誤りが散見されるのが中小企業向け賃上げ促進税制だ。例えば、雇用者給与等支給額の計算において、給与等に充てるための他の者から支払を受ける金額が控除されていないケースが多いという。雇用者給与等支給額とは、適用事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される全ての国内雇用者に対する給与等の支給額のこと。ただし、補填額(その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額から「雇用安定助成金額」及び「役務の提供の対価として支払を受ける金額」を除いた金額)がある場合には、給与等の支給額から控除することとされている。
また、前期も中小企業向け賃上げ促進税制の適用を受けている場合、当期の申告書(別表六(二十四)(令和6年4月1日以後終了事業年度分))の「5」欄(比較雇用者給与等支給額)の金額と前期の申告書の「4」欄(雇用者給与等支給額)の金額が一致することになるが、一致しない場合には税額控除の計算に誤りがあるとしている。なお、前期の月数と当期の月数が異なる場合や組織再編成があった場合は、税額計算に誤りがなくても不一致になる場合がある。
その他、国内雇用者に対する給与等の支給額の計算においては、使用人から役員の特殊関係人は除かれることになるので留意したい。
中小企業投資促進税制の税額控除は資本金3,000万円以下が対象
多くの中小企業が適用している中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除)における税額控除は、資本金の額等が3,000万円以下の法人等に限られているが、3,000万円を超えているにもかかわらず、税額控除を適用していたり、資本金の額等が1億円を超える大規模法人の子会社(資本金の額等が1億円以下の法人で、発行済株式等を同一の大規模法人に1/2以上保有されている、又は複数の大規模法人に2/3以上保有されている法人等)は同税制の適用対象外となるが、適用しているケースがあるので留意したい。
そのほか、小型自動車に関しては、貨物の運送用に供されるものであっても同税制を適用することができないので要注意だ。同税制の対象資産となる「車両及び運搬具」は、①道路運送車両法施行規則別表第一に規定する「普通自動車」であること、②貨物の運送の用に供されるものであること、③車両総重量が3.5トン以上のものであることの3つの要件を満たすものとされている。
構築物の償却方法は定額法のみ
研究開発税制(試験研究費を行った場合の税額控除制度)については、試験研究費に充てる目的で他の者から支払を受けた補助金等を試験研究費の額から控除していなかったケースや、中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)では、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受ける必要があるが、認定を受けていないにもかかわらず特別控除の適用を受けていたり、認定を受けた設備以外の設備について、特別控除の適用を受けていたケースがあるという。
また、減価償却制度についても、申告において誤りが見つかることがあるという。例えば、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備および構築物の償却方法は定額法のみとされており、定率法は適用できないこととなったが、定率法を適用し、損金の額に算入しているケースがあるとされているので留意したい。
「その他」欄記載の役員給与は別表四で加算
役員給与関係では、使用人兼務役員とされない監査役、同族会社の特定役員に対し、使用人の職務に対する給与を支給し、損金の額に算入していたり、定期同額給与、事前確定届出給与及び損金となる業績連動給与のいずれにも該当しない役員給与等の内訳書の「その他」欄記載の給与については、別表四で加算しなければならないが、加算していない誤りが見受けられるとしている。
特定同族会社の判定誤りに注意
また、特定同族会社の判定誤りも例年多く見られる項目の1つだ。判定の基礎となる株主等については、株主等と特殊の関係のある個人及び法人の持ち株数を含めることになるが、これを含めず特定同族会社に該当しないとして留保金課税を適用していなかったケースや、特定同族会社の判定の際に、議決権のない株式数を発行済株式総数に含めて判定したため、特定同族会社に該当しないとして留保金課税を適用していなかった誤りがあるとしている。
また、別表二「同族会社等の判定に関する明細書」の「判定基準となる株主等の株式数等の明細」の各欄に記載されている内容から判断すると、資本金の額等が5億円以上の法人との間に完全支配関係がある法人(大法人の子会社)に該当することが明らかであっても、「判定結果」欄の記載漏れや誤りにより留保金課税を適用していないケースもいまだにあるという。
そのほか、前期末配当等の額及び当期末配当等の額(平18.5.1以後にその支払に係る基準日がある配当等の額)については、会社法施行後、期末配当は別表四で留保所得とし、別表三(一)の留保金額の計算で留保所得に当期末配当を減算し、前期末配当を加算する調整が必要となっているが、その調整を誤っていたケースも見受けられるとしている。
大会社の子会社は定額控除限度額(800万円)の適用できず
交際費等の損金不算入に関しては、資本又は出資を有しない医療法人で期末資本金等相当額が1億円超であるものが、定額控除限度額(800万円)を適用して損金不算入額の計算を行っているほか、大法人の子会社に該当するにもかかわらず、定額控除限度額を適用して損金不算入額の計算を行っていたケースがあるという。
そのほか、資本金の額等が5億円以上の大法人の100%子会社であるにもかかわらず中小法人の特例を適用しているケースも多い。この場合、資本金の額等が1億円以下の法人であっても、①法人税の軽減税率、②貸倒引当金の損金算入、③欠損金等の繰越控除の控除限度額、④欠損金の繰戻しによる還付については適用することはできないので留意したい。
ETFの収益の分配の額は益金不算入の対象
受取配当等の益金不算入については、「非支配目的株式等(保有割合:5%以下)」を「その他株式等(保有割合:5%超3分の1以下)」に区分して誤った益金不算入割合を適用するケースがいまだに見受けられるという。また、外国株価指数連動型特定株式投資信託以外の特定株式投資信託(ETF)の収益の分配の額は、「非支配目的株式等」として益金不算入の対象となるが、「その他株式等」と記載し、誤った益金不算入割合を適用していた誤りがあるとしている。
そのほか、①公社債の利子の額、②MMF(追加型公社債投資信託)等の公社債投資信託の収益の分配の額、③公社債投資信託以外の証券投資信託の収益の分配の額(外国株価指数連動型特定株式投資信託以外の特定株式投資信託(ETF)の収益の分配の額を除く)、④不動産投資信託の収益の分配の額、⑤オープン投資信託の特別分配金の額、⑥外国法人、特定目的会社、投資法人から受ける配当等の額、⑦匿名組合契約に基づいて受ける利益の分配の額については、受取配当等の益金不算入の対象とならないとしている。
源泉所得税は配当の額の15.315%
その他、法人が支払を受ける配当等に係る所得税等の額の全額は、原則として所得税額控除の対象となる。しかし、上場株式等の配当に係る源泉所得税は配当の額の15.315%であるが、20.42%で計算し過大に所得税額控除を適用していたケースがあるので注意したい。
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