税務ニュース2025年04月18日 暗号資産取引の申告分離実現に現実味(2025年4月21日号・№1071) 金融庁が環境整備に向けディスカッション・ペーパーを公表
所得税法上、個人が暗号資産取引により得た利益は原則として雑所得に区分され、他の所得と合わせて総合課税の対象となり超過累進税率が適用される。暗号資産取引は高額所得者が行うことが多く、利益が出れば高税率による税負担が生じる。また、雑所得の計算上生じた損失は損益通算の対象外となっている。損益通算が可能な事業所得とするためには、暗号資産取引が社会通念上「事業」と判定される必要がある。
こうした中、20%(地方税含む)の申告分離課税や、損失が生じた場合には暗号資産に係る所得から3年間繰越控除することなどを求める業界団体の要望を受け、与党令和7年度税制改正大綱の「検討事項」には、「広く国民の資産形成に資する金融商品として業法の中で位置付け、投資家保護等の必要な環境整備が行われる」ことを前提に、暗号資産取引に係る課税方法の見直しを検討する旨が盛り込まれた。その後、自民党デジタル社会推進本部に組成された「web3ワーキンググループ」が2025年3月6日に「暗号資産を新たなアセットクラスに~暗号資産に関する制度改正案の概要~(案)」を公表、さらに2025年4月10日には金融庁から「暗号資産に関連する制度のあり方等の検証」と題するディスカッション・ペーパーが公表され、5月10日までパブリックコメントに付されている。金融庁は、暗号資産を金融商品取引法上の金融商品と位置付け、前提となる環境を整備することが重要としている。
暗号資産取引による所得が申告分離課税の対象とならないのは、投資家保護規制が十分に講じられていないことに加え、国として強く支援、保護する政策的必要性が存在するとは言えないことが理由とされている。しかし、今般の自民党、金融庁の動きからは、令和8年度税制改正における暗号資産に係る課税方法の見直しが現実味を帯びてきたことがうかがえる。暗号資産取引には、①情報開示・提供の充実、②利用者保護・無登録業者への対応、③投資運用やアドバイスに係る不適切行為への対応、④価格形成・取引の公正性の確保といった課題があるが、過重な規制を課せばWeb3ビジネスが窒息して海外の取引市場への流出を招くことにもなりかねない。利用者保護とイノベーション促進のバランスの取れた環境整備をいかに図れるかが、税制改正実現に向けた試金石となろう。
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