税務ニュース2025年05月09日 EU外の国がミニマム税導入を躊躇も(2025年5月12日号・№1073) 米、DSTには譲歩せず、UTPRについてはEU側の譲歩を予想
4月29日、米国のベッセント財務長官は、ホワイトハウスでの記者会見で欧州との関税協議の進捗について問われ、デジタル・サービス税(DST)が障害になっていることを明らかにした。長官は「欧州は一つではない。フランスやイタリアがDSTを導入する一方、ドイツやポーランドは導入していない。米国の偉大な業界の一つに対する不公平な税制は撤廃してもらう必要がある。EUは外部との交渉を始める前に、内部の問題を決着させる必要がある」と述べている。この発言から読み取れるのは、米国がDSTを容認しない姿勢であることと、EUが一枚岩ではないということだ。そもそも、DSTはEUが意思統一できなかったことが原因で生まれた。2018年にEU委員会が提案した3%のEU・DST提案は、アイルランドや北欧諸国が慎重な姿勢を示したため合意に至らず、その結果、2019年のフランスをはじめ、イギリスなどが「独自の措置」としてDSTの導入を始めた経緯がある。
1月20日に発出されたトランプ大統領令は、DSTのほか、15%グローバルミニマム課税を構成するUTPR(軽課税所得ルール)も問題視しているとみられるが(本誌1061号9頁参照)、ベッセント長官は今回、UTPRには言及していない。一方、EUはUTPRについて様々な“米国対策”を検討中だ。EU理事会議長国のポーランドは、4月29日の税制問題に関するハイレベル作業部会で、①米国の優遇税制による税負担減があってもUTPRの適用対象としない、②名目税率20%の国の多国籍企業にUTPRを適用しない「セーフハーバー」の延長、③米国のGILTI(グローバル軽課税無形資産所得)をOECDルールに適合するものとみなす、という3つの選択肢を用意したとされるが、EU各国が足並みを揃えるのは容易ではないだろう。記者会見で長官がUTPRに言及しなかった背景として、EU側の譲歩を予想している可能性が高そうだ。ただし、譲歩の内容によってはグローバルミニマム課税の趣旨を損なうことになりかねず、そうなればEU以外の国々がミニマム課税の導入に消極的になる恐れがある。議長国ポーランドは、米国が反対するUTPRを適用するべきかどうかが主要な検討項目であると述べている。向こう数か月のEUの動きが国際課税の行方を左右することになりそうだ。
当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。
週刊T&Amaster 年間購読
新日本法規WEB会員
試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。
人気記事
人気商品
-
-
団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス -
Copyright (C) 2019
SHINNIPPON-HOKI PUBLISHING CO.,LTD.