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解説記事2025年06月02日 解説 SSBJによるサステナビリティ開示基準の概要(3)(2025年6月2日号・№1076)

解説
SSBJによるサステナビリティ開示基準の概要(3)
 サステナビリティ基準委員会 ディレクター 小西健太郎
 サステナビリティ基準委員会 ディレクター 桐原和香

Ⅰ はじめに

 2025年3月5日、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は我が国最初のサステナビリティ開示基準(以下あわせて「SSBJ基準」という。)を公表した。   
 SSBJ基準は、SSBJのウェブサイト(脚注1)より入手可能である(日本語のみ)。また、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が開発したIFRSサステナビリティ開示基準(以下「ISSB基準」という。)との差異の一覧(脚注2)及び項番対照表(脚注3)も、日本語及び英語で公表している。

・サステナビリティ開示ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」(以下「適用基準」という。)
・サステナビリティ開示テーマ別基準第1号「一般開示基準」(以下「一般基準」という。)
・サステナビリティ開示テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」(以下「気候基準」という。)

 本稿では、SSBJ基準について3回に分けて概説する予定であり、最終回となる今回は、気候基準(指標及び目標)並びに適用時期及び経過措置について説明する。
 なお、本稿の意見にわたる部分は筆者の私見であり、SSBJの公式見解ではないことをあらかじめ申し添える。

Ⅱ 気候基準の概要(前回からの続き)

※以下、本節の項番号は気候基準の項番号を示している。

1 指標及び目標
(1)開示目的

 指標及び目標に関する気候関連開示の目的は、気候関連のリスク及び機会に関連する企業のパフォーマンスを理解できるようにすることにある(第43項)。

(2)産業横断的指標等の開示
 産業横断的指標等に関連して、次の事項を開示しなければならない(第46項)。
(1)温室効果ガス排出(①から⑧参照)
(2)気候関連の移行リスク(⑨参照)
(3)気候関連の物理的リスク(⑨参照)
(4)気候関連の機会(⑨参照)
(5)資本投下(⑩参照)
(6)内部炭素価格(⑪参照)
(7)報酬(⑫参照)
 ① 温室効果ガス排出の絶対総量の開示
 当報告期間中に生成した温室効果ガス排出の絶対総量について、スコープ1温室効果ガス排出、スコープ2温室効果ガス排出及びスコープ3温室効果ガス排出に区分して開示しなければならない(第47項)。
 なお、2024年3月に公表した公開草案では、SSBJ基準独自の定めとして、スコープ1、スコープ2及びスコープ3の温室効果ガス排出の絶対総量の合計値を開示しなければならないとする定めを追加することを提案していたが、SSBJ基準の内容を可能な限りISSB基準にあわせるため、この定めは削除している。
 ② 温室効果ガス排出の測定及び測定方法ごとの温室効果ガス排出量の開示
 温室効果ガス排出は、「温室効果ガスプロトコルの企業算定及び報告基準(2004年)」(以下「GHGプロトコル」という。)に従って測定しなければならない。ただし、法域の当局又は企業が上場する取引所が、温室効果ガス排出を測定するうえで異なる方法を用いることを要求している場合、当該方法を用いることができる(第49項)。
 このただし書きに従いGHGプロトコルとは異なる方法により測定することを選択し、かつ、GHGプロトコルとは異なる方法により測定した温室効果ガス排出量に重要性がある場合、次の情報を開示しなければならない(第50項)。
(1)GHGプロトコルにより測定した温室効果ガス排出量
(2)GHGプロトコルとは異なる方法により測定した温室効果ガス排出量
 この定めに従い分解して開示するにあたり、GHGプロトコルとは異なる方法が複数の法域の法令又は企業が上場する取引所の規則に関するものである場合、特定の法域の法令又は企業が上場する取引所の規則が要求する方法により測定した温室効果ガス排出量が単独で重要性があるときは、当該方法のそれぞれについて、温室効果ガス排出量を区分して開示しなければならない(第51項)。
 なお、2024年3月に公表した公開草案では、SSBJ基準独自の定めとして、次の定めを追加することを提案していたが、SSBJ基準の内容を可能な限りISSB基準にあわせるため、これらの定めは削除している。
(1)「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づく「温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度」(以下「温対法」という。)により測定した温室効果ガス排出量を報告する場合、サステナビリティ関連財務開示の公表承認日において既に当局に提出した温室効果ガス排出量のデータのうち、直近のものを用いなければならない。
(2)(1)において、温室効果ガス排出量の報告のための算定期間と当該企業のサステナビリティ関連財務開示(及び関連する財務諸表)の報告期間の差異が1年を超える場合、一定の事項を開示しなければならない。
 温対法では、温室効果ガスの種類によって異なる2種類の算定期間が定められているため、企業が温対法により測定した温室効果ガス排出量をサステナビリティ関連財務開示において報告することを選択する場合、温室効果ガス排出量の報告のための算定期間が、企業のサステナビリティ関連財務開示の報告期間と異なるときは、合理的な方法により期間調整を行い、サステナビリティ関連財務開示の報告期間にあわせることが考えられる(図表2参照)。

 ③ スコープ1温室効果ガス排出及びスコープ2温室効果ガス排出の開示
 スコープ1温室効果ガス排出及びスコープ2温室効果ガス排出について、連結会計グループ(親会社及びその連結子会社で構成される。)に関するものと、その他の投資先(関連会社、共同支配企業及び非連結子会社が含まれる。)に関するものとに分解して開示しなければならない(第52項)。
 スコープ2温室効果ガス排出については、ロケーション基準によるスコープ2温室効果ガス排出量を開示しなければならない(第53項)。この定めに加え、主要な利用者の理解に情報をもたらすために必要な契約証書に関する情報がある場合には、当該契約証書に関する情報を提供しなければならない。ただし、マーケット基準によるスコープ2温室効果ガス排出量を開示することにより当該契約証書に関する情報の提供に代えることができる(第54項)。
 ここで、契約証書に関する情報の提供を求める定めはISSB基準の要求事項と同じであり、これをマーケット基準による開示で代替する定めはSSBJ基準において追加している選択肢である。マーケット基準により測定した数値には、企業の温室効果ガス排出削減の努力が反映されており、ロケーション基準により測定した数値とあわせて開示することが主要な利用者にとって有用である等の理由により選択肢を追加している(BC143項)。
 ④ スコープ3温室効果ガス排出の開示
 スコープ3温室効果ガス排出については、「温室効果ガスプロトコルのコーポレート・バリュー・チェーン(スコープ3)基準(2011年)」(以下「スコープ3基準」という。)に記述されているスコープ3カテゴリー(図表3参照)に従い、報告企業の活動に関連するカテゴリー別に分解して開示しなければならない(第55項)。

 ISSB基準は、スコープ3温室効果ガス排出の測定に含めたカテゴリーの開示を要求しているが、SSBJ基準では、性質や時間軸が異なる、さまざまな活動に関連する温室効果ガスを排出源別に示すことが可能になる等の理由により、カテゴリー別のスコープ3温室効果ガス排出の開示を要求している(BC148項)。
 ⑤ ファイナンスド・エミッション
 報告企業が次の1つ以上の活動を行う場合、ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報を開示しなければならない(第57項)。
(1)資産運用に関する活動
(2)商業銀行に関する活動
(3)保険に関する活動
 報告企業がこれらの活動を行う場合であっても、これらを業として営むことについて企業が活動する法域の法令により規制を受けていないときは、ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報を開示しないことができる(第58項)。
 ISSB基準では上記(1)から(3)の活動について定義していないが、SSBJ基準では「産業別ガイダンス」を参考にこれらの活動を図表4のように定義しており、当該定義を用いることができる(第59項及びBC152項)。

 なお、2024年3月に公表した公開草案では、「世界産業分類基準」(GICS)が無償で利用可能であるとの想定に基づき、商業銀行に関する活動又は保険に関する活動を行う場合、ファイナンスド・エミッションに関する追加的な情報の1つとして、報告期間の末日において入手可能な、最新のGICSの6桁の産業レベルのコードを用いて産業別に分解したファイナンスド・エミッションの絶対総量及びグロス・エクスポージャーに関する情報の開示を要求することを提案した。これに対し、GICSコードでの分類・開示を行うにあたり、特定の民間企業からライセンス料の支払を求められる可能性があり、SSBJが特定の民間企業へのライセンス料の支払を義務付けることは適切ではないとの意見が寄せられた。
 この点、我が国以外の法域においてもGICSを使用することについて懸念が示されており、当該法域のサステナビリティ開示基準においてIFRS S2号を修正したうえで取り入れることが検討されている。さらに、SSBJ基準公表時において、ISSBでは、世界中の法域からの指摘を受け、GICSを用いて産業別に分解したファイナンスド・エミッションの絶対総量及びグロス・エクスポージャーに関する情報の開示に関してIFRS S2号を改訂することが検討されていた(脚注4)。
 GICSを用いて産業別に分解したファイナンスド・エミッションの絶対総量及びグロス・エクスポージャーに関する情報の開示は、主要な利用者の意思決定に有用な情報を提供すると考えられるものの、上述の理由から、SSBJ基準では、GICSを用いて産業別に分解したファイナンスド・エミッションの絶対総量及びグロス・エクスポージャーに関する情報は、当面の間、開示しないことができるとする取扱いを定めることとした(C7項)。
 ⑥ 温室効果ガス排出の測定アプローチに関する開示
 温室効果ガス排出の測定にあたり、GHGプロトコルに従った場合、選択した測定アプローチ(持分割合アプローチ、経営支配力アプローチ又は財務支配力アプローチのいずれか)及び当該測定アプローチを選択した理由等を開示しなければならない(第61項)。
 また、GHGプロトコルとは異なる方法に従った場合、GHGプロトコルとは異なる方法を要求している法令の名称又は企業が上場する取引所及び当該取引所の規則の名称並びに当該方法を選択した理由と、適用した測定アプローチ及びそれを適用した理由等を開示しなければならない(第62項)。
 ⑦ 温室効果ガス排出の測定方法に関する開示
 温室効果ガス排出の測定に関して、次の事項を開示しなければならない(第63項)。
(1)温室効果ガス排出の測定方法
 i.直接測定の場合、排出量に関する情報及び測定にあたって報告企業が置いた仮定
 ii.見積りの場合、活動量及び排出係数に関する情報並びに測定にあたって報告企業が置いた仮定
(2)測定方法について開示した各項目を選択した理由
(3)当報告期間において測定方法を変更した場合、その変更の内容及び変更の理由
 ⑧ スコープ3温室効果ガス排出の測定
 スコープ3温室効果ガス排出の測定に使用する測定アプローチ並びに測定にあたって用いる要素及び仮定を選択するにあたり、合理的で裏付け可能な情報を用いなければならない(第69項)。
 利用可能なデータのうち、スコープ3温室効果ガス排出の測定にあたって用いる要素及び仮定に組み込むものは、次の(1)から(4)に従い決定しなければならない(スコープ3測定フレームワーク)。ただし、(1)から(4)については順不同である(第70項)。
(1)直接測定によるデータがある場合には、見積りによるデータよりも優先しなければならない。
(2)1次データがある場合には、2次データよりも優先しなければならない。2次データを用いる場合、データが企業の活動をどの程度忠実に表現するかについて考慮しなければならない。
(3)バリュー・チェーンにおける活動及び温室効果ガス排出が行われた法域、並びに当該活動を遂行する方法を忠実に表現する適時のデータがある場合には、そうではないデータよりも優先しなければならない。
(4)検証されたデータがある場合には、検証されていないデータよりも優先しなければならない。
 ⑨ 気候関連の移行リスク、物理的リスク及び機会に関する開示
 気候関連の移行リスクに対して脆弱な資産又は事業活動に関し、少なくとも次のいずれかの事項を開示しなければならない(第79項)。
(1)気候関連の移行リスクに対して脆弱な資産又は事業活動の数値及びパーセンテージ
(2)気候関連の移行リスクに対して脆弱な資産又は事業活動の規模に関する情報
 気候関連の物理的リスクについても、同様の開示を行わなければならない(第80項)。また気候関連の機会についても、気候関連の機会と整合した資産又は事業活動に関して同様の開示を行わなければならない(第81項)。
 いずれも、(1)についてはISSB基準の要求事項と同じである。(2)については、ISSB基準とまったく同じではないものの、その開示目的を満たす情報の開示をSSBJ基準において要求している。「規模に関する情報」としているのは、定性的情報を含め、定量的情報による開示を行うことが望ましいと考えられるものの、企業が表現しようとするものをより忠実に表現できる方法を認めることが適切と考えられたためである(BC186項)。
 また、「リスクに対して脆弱な資産又は事業活動」や「機会と整合した資産又は事業活動」については、企業が表現しようとするものを忠実に表現するため、企業の置かれた状況に即して、その範囲を画定するための考え方を企業が整理したうえで、当該考え方に従って開示の対象とする資産又は事業活動を決定することが考えられる。そのうえで、気候関連の移行リスク、物理的リスク及び機会に関する産業横断的指標等の開示を行うにあたり、「リスクに対して脆弱な資産又は事業活動」や「機会と整合した資産又は事業活動」にどのような資産又は事業活動が含まれるのかに関しても、あわせて開示することが考えられる(BC188項及びBC189項)。
 ⑩ 資本投下に関する開示
 気候関連のリスク及び機会に投下された資本的支出、ファイナンス又は投資の数値を開示しなければならない(第82項)。
 「気候関連のリスク及び機会に投下された資本的支出、ファイナンス又は投資」についても、企業が表現しようとするものを忠実に表現するため、企業の置かれた状況に即して、その範囲を画定するための考え方を企業が整理したうえで、当該考え方に従って開示の対象とする資本的支出、ファイナンス又は投資を決定することが考えられる。そのうえで、資本投下に関する産業横断的指標等の開示を行うにあたり、「気候関連のリスク及び機会に投下された資本的支出、ファイナンス又は投資」にどのような資本的支出、ファイナンス又は投資が含まれるのかに関しても、あわせて開示することが考えられる(BC193項及びBC194項)。
 ⑪ 内部炭素価格に関する開示
 内部炭素価格を意思決定に用いている場合、次の事項に関する情報を開示しなければならない(第83項)。
(1)内部炭素価格の適用方法
(2)温室効果ガス排出に係るコストの評価に用いている内部炭素価格
 なお、2024年3月に公表した公開草案では、SSBJ基準独自の定めとして、次の定めを追加することを提案していたが、SSBJ基準の内容を可能な限りISSB基準にあわせるため、これらの定めは削除している。
(1)内部炭素価格を意思決定に用いており、同じ目的において複数の内部炭素価格を意思決定に用いている場合、温室効果ガス排出に係るコストの評価に用いている内部炭素価格に関する情報を開示するにあたり、それぞれの内部炭素価格を開示しなければならない。ただし、この同じ目的に用いている内部炭素価格を範囲(最小値と最大値)で示すことができる。
(2)内部炭素価格を意思決定に用いており、複数の目的(例えば、投資判断、移転価格及びシナリオ分析)で内部炭素価格を意思決定に用いている場合、それぞれの目的について内部炭素価格の適用方法及び温室効果ガス排出に係るコストの評価に用いている内部炭素価格に関する情報を開示しなければならない。
 ⑫ 報酬に関する開示
 気候関連の評価項目が役員報酬に組み込まれている場合、次の事項に関する情報を開示しなければならない(第84項)。
(1)気候関連の評価項目を役員報酬に組み込む方法
(2)当報告期間に認識された役員報酬のうち、気候関連の評価項目と結び付いている部分の割合
 この定めはISSB基準の要求事項と同じである。
 一方、気候関連の評価項目が役員報酬に組み込まれているものの、他の評価項目とあわせて役員報酬に組み込まれており、気候関連の評価項目に係る部分を区分して識別できない場合は、その旨を開示したうえで、気候関連の評価項目を含む評価項目全体についてこの開示を行うことができる(第85項)(図表5参照)。

 役員報酬の評価項目は必ずしも気候関連の評価項目とそれ以外の評価項目に区分して識別できるとは限らないと考えられるため、SSBJ基準においてこの定めを追加している(BC199項)。
(3)産業別の指標
 企業に関連する産業別の指標のうち、主なものを開示しなければならない。開示する産業別の指標を決定するにあたり、ISSBが公表する「産業別ガイダンス」に記述されている、開示トピックに関連する産業別の指標を参照し、その適用可能性を考慮しなければならない。考慮した結果、適用する場合と適用しない場合とがある(第86項)。
(4)気候関連の目標の特定
 戦略的目標の達成に向けた進捗をモニタリングするために設定した定量的及び定性的な気候関連の目標並びに企業が活動する法域の法令により満たすことが要求されている目標がある場合、これらの目標について定められた開示を行われなければならない。これらの目標には、温室効果ガス排出目標を含む(第92項)。
 目標を設定し、当該目標の達成に向けた進捗をモニタリングするために用いる指標を識別し、開示するにあたり、産業横断的指標等及び産業別の指標を参照し、その適用可能性を考慮しなければならない。目標の達成に向けた進捗を測定するための指標を企業が作成した場合、その指標について定められた開示を行わなければならない(第96項)。
(5)温室効果ガス排出目標
 温室効果ガス排出目標を開示する場合、一般的な目標について要求される開示に加え、温室効果ガス排出目標に関する追加の開示を行わなければならない(第97項)。
 また、温室効果ガス排出の純量(ネット)目標を開示する場合、関連する総量(グロス)目標も別個に開示しなければならない(第98項)。

Ⅲ 適用時期及び経過措置

1 適用時期
 SSBJ基準は、強制適用時期を定めていない。SSBJ基準に従った開示を行うことを要求する法令においてSSBJ基準の適用時期が定められた場合には、これに従うことになる。また、任意でSSBJ基準に従った開示を行う場合、SSBJ基準の公表日以後終了する年次報告期間に係るサステナビリティ関連財務開示から適用することができる(適用基準第92項、一般基準第41項及び気候基準第101項)。
 なお、適用基準、一般基準及び気候基準は、同時に適用しなければならない(適用基準第91項、一般基準第40項及び気候基準第100項)。

2 経過措置
 SSBJ基準では、法令の定めに基づきSSBJ基準に従った開示を行う場合と任意でSSBJ基準に従った開示を行う場合のそれぞれについて経過措置を定めており、一部の経過措置についてはSSBJ基準を適用する最初の年次報告期間に適用される経過措置としている(図表6参照)。

 法令の定めに基づきSSBJ基準に従った開示を行う場合、それ以前に任意でSSBJ基準に従った開示を行っていたかどうかにかかわらず、当該法令に基づきSSBJ基準を適用する最初の年次報告期間を「法令の定めに基づきSSBJ基準を適用する最初の年次報告期間」とする。
 法令の定めにおいて、SSBJ基準の適用時期を早めることが容認される場合があるが、当該法令の定めが容認する内容に基づき企業が適用時期を早めることを選択した場合、SSBJ基準を早めて適用する最初の年次報告期間を「法令の定めに基づきSSBJ基準を適用する最初の年次報告期間」とする。
 一方、任意でSSBJ基準に従った開示を行う場合とは、法令の定めに基づきSSBJ基準を適用するのではなく、企業が自発的にSSBJ基準のすべての定めに準拠した開示を行う場合をいい、法令の定めに基づき本基準の適用時期を早める場合は該当しない。
 SSBJ基準では、任意でSSBJ基準に従った開示を行う場合の別段の定めとして、前報告期間に係る比較情報を開示しないことができる旨を定めている(適用基準第73項(2))。このため、SSBJ基準は、任意でSSBJ基準に従った開示を行う場合の経過措置として、法令の定めに基づきSSBJ基準に従った開示を行うときに適用可能な経過措置のうち、比較情報に関する定めを除いたものを定めている。

Ⅳ むすびに代えて

 SSBJ事務局では、現在、SSBJのウェブサイト(https://www.ssb-j.jp/jp/)において、SSBJ基準を適用するにあたり参考となるコンテンツの充実化を図っている。
 本稿とともに、ウェブサイトに掲載しているこれらのコンテンツが、サステナビリティ関連財務開示に携わる方々の一助となれば幸いである。


脚注
1 https://www.ssb-j.jp/jp/ssbj_standards/2025-0305.html
2 (日本語)https://www.ssb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/6/ssbj_20250331_01.pdf
 (英語)https://www.ssb-j.jp/en/wp-content/uploads/sites/7/ssbj_20250331_01_e.pdf
3 (日本語)https://www.ssb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/6/ssbj_20250331_02.pdf
 (英語)https://www.ssb-j.jp/en/wp-content/uploads/sites/7/ssbj_20250331_02_e.pdf
4 2025年4月28日、ISSBは、公開草案「温室効果ガス排出の開示に対する修正」を公表し、GICSの使用に関する容認規定を追加することを提案している。

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