カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2025年06月16日 ニュース特集 2027年4月1日適用予定の後発事象会計基準案が明らかに(2025年6月16日号・№1078)

ニュース特集
現行実務は大きく変更せず
2027年4月1日適用予定の後発事象会計基準案が明らかに



 企業会計基準委員会(ASBJ)は7月上旬にも後発事象に関する会計基準(案)及び同適用指針(案)を決定する予定だ。後発事象会計基準案等は、日本公認会計士協会の監査基準報告書560実務指針第1号「後発事象に関する監査上の取扱い」で示されている会計に関する内容について実務を変更せずに移管することを基本的な方針としているが、後発事象の基準日について、現行の「監査報告書日」から「財務諸表の公表の承認日」に変更し、「財務諸表の公表の承認日及び財務諸表の公表を承認した機関又は個人の名称」を注記することとしている。適用時期は、順調に開発が進み、2026年3月末までに正式決定することになれば、2027年4月1日以後開始する連結会計年度等の期首から適用されることになる。また、適用に当たっては、遡及適用を行わないとする経過措置を設ける予定としている。
 なお、修正後発事象に関する後発事象の特例的な取扱いの見直しは行われてはいない。賛否が分かれている点であり、短期的に関係者のコンセンサスが得られないと判断したもの。後発事象会計基準等の確定後に、再び見直しを行うかどうか検討を行うとしている。

修正後発事象に関する後発事象の特例の見直し、今回は実施せず

 後発事象会計基準案の開発は、企業会計基準諮問会議からの提言を踏まえたもの。企業会計基準委員会では、移管プロジェクトの一環として「継続企業及び後発事象に関する調査研究」を公表。調査研究によれば、「継続企業」及び「後発事象」について移管することが可能と結論づけており、同委員会では、まずは会計に関する指針に相当すると考えられる記載を移管することとし、後発事象であれば、「財務諸表の公表の承認日」の概念の取り入れとともに、修正後発事象が会社法監査における監査報告書日後に発生した場合、金融商品取引法に基づいて作成される財務諸表において修正後発事象は開示後発事象に準じて取り扱うものとしている特例的な取扱いも検討するとしていたものである。
 今回明らかとなった後発事象会計基準案は、日本公認会計士協会の監査基準報告書560実務指針第1号「後発事象に関する監査上の取扱い」の会計に関する部分を移管するとともに、新たに「財務諸表の公表の承認日」の概念が取り入れられることとなっているが、現行の実務が大きく変わるものとはなっていない。修正後発事象に関する後発事象の特例的な取扱いの見直しは行われてはいないからだ。
 この特例的な取扱いについては、国際的な会計基準とは異なっているが、これまでの検討では特例的な取扱いを廃止して国際的な会計基準との整合性を図るべきとの意見と、会社法と金融商品取引法の開示制度が併存する日本固有の状況を踏まえ、特例的な取扱いを存続させるべきとの意見の両論が聞かれており、短期的に関係者のコンセンサスを得ることは難しいと判断。このため、今回の改正での見直しは行わず、公開草案の公表の際に、特例的な取扱いを見直すか否かに関する意見を関係者から募集することとしている。

財務諸表の公表の承認日及び承認した機関又は個人の名称を注記

 では、後発事象会計基準案の具体的な内容についてみてみることにしよう。
 後発事象会計基準案では、「後発事象」について、「決算日後に発生した企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす会計事象のうち、財務諸表の公表の承認日までに生じた会計事象等」と定義している(なお、修正後発事象及び開示後発事象の定義の変更はない)。後発事象の基準日は、現行の実務指針では、「監査報告書日」とされているが、IAS第10号「後発事象」と同様、「財務諸表の公表の承認日」に変更している。この「財務諸表の公表の承認日」については、財務諸表を公表することを承認する適切な権限を有する社内の機関又は個人が公表を承認した日付であると考えられ、承認を行う権限を有する者は、企業ごとに異なり得るとしている。
 このため、財務諸表には、財務諸表の公表の承認日後の会計事象等は反映されないほか、財務諸表の公表を承認した機関又は個人の名称に関する情報は、財務諸表利用者が財務諸表の公表の承認日を理解する上で重要な補足情報になるため、「財務諸表の公表の承認日及び財務諸表の公表を承認した機関又は個人の名称」を注記するとしている。
 なお、期中財務諸表においては、適時性の観点から、基準日に関する注記は要しないこととされている。
重要な開示後発事象の内容や影響額も注記
 また、重要な開示後発事象に関しては、①重要な開示後発事象の内容及び影響額等、②①の影響額の見積りができない場合にはその旨及び理由を注記することとされている。実務指針では、「開示後発事象の開示の対象となるものは重要な後発事象である」とされていることを踏まえ、後発事象会計基準案でも、実務指針に示されていた開示後発事象に関する開示に関する判断を踏襲。開示すべき重要な後発事象を判断するにあたっては、「決算日後において発生し、当期の財務諸表には影響を及ぼさないが、翌期以降の財務諸表に影響を及ぼす会計事象等」との開示後発事象の定義から、①翌期の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす会計事象等であること、②財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす会計事象等であること、③決算日後に発生した会計事象等であることの3つの要素に留意する必要があるとしている。
 なお、連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記が同一の内容である場合には、個別財務諸表においては、その旨の記載をもって代えることができるとされている。

計算書類等は経営者確認書の日付と同一

 一方、会社法の計算書類等及び連結計算書類における後発事象の基準日については、「財務諸表の公表の承認日」とした場合には、会社法上の「取締役会による計算書類の承認日」が当該承認日に該当すると誤認される可能性があるため、「企業が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準及び会社計算規則に準拠して計算書類等を作成する監査契約上の責任を果たしたことを確認した日」(以下、確認日)としている。「確認日」は、通常、経営者確認書の日付と同一になるため、現行の実務とほぼ変更はないとしている。
 また、後発事象の特例的な取扱いも、前述通り、現行実務を踏襲するとしている。具体的には、(1)計算書類等に関する確認日後、個別財務諸表の公表の承認日までに発生した修正後発事象、(2)連結計算書類に関する確認日後、連結財務諸表の公表の承認日までに発生した修正後発事象は、開示後発事象に準じて取り扱い、①重要な開示後発事象の内容及び影響額等、②①の影響額の見積りができない場合、その旨及び理由を注記する(連結と個別財務諸表の注記が同一の場合は、個別財務諸表はその旨の記載をもって省略可)。

2027年4月1日以後開始する連結会計年度等の期首からの適用が有力

 適用時期については、企業の準備期間を踏まえ、20XX年4月1日(公表から概ね1年程度経過後最初に到来する4月1日を想定)以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からとされ、具体的な時期は未定となっている。ただ、順調に公開草案に対するコメントについて検討がなされ、2026年3月末までに後発事象会計基準等が決定された場合には、2027年4月1日以後開始する連結会計年度等の期首から適用されることになる。
 また、後発事象会計基準等の適用に当たっては、遡及適用を行わないとする経過措置を設け、後発事象会計基準等の適用年度から将来にわたって適用することとしている。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索