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解説記事2025年06月23日 SCOPE 賃貸料の帰属巡り国逆転敗訴、賃貸料を目的の入会権が存在(2025年6月23日号・№1079)

帰属先は一般社団法人でなく地権者
賃貸料の帰属巡り国逆転敗訴、賃貸料を目的の入会権が存在


 陸上自衛隊に貸し付けている土地の賃貸料収入の帰属が争われた事案で、一審の静岡地裁は、所有名義人である一般社団法人に帰属するとの判決を下していたが、東京高裁第21民事部(永谷典雄裁判長)は令和7年5月29日、本件各土地には、本件各賃貸料を目的とする入会権が存在しており、本件各賃貸料は入会権者である地権者に帰属するとして、地裁判決を取り消した。

一審は地権者が賃貸料を収受するための使用収益権の存在を認めず

 一般社団法人N(原告・控訴人)は、前身である社団法人の時代から、自らが所有名義人である土地を陸上自衛隊(国)に貸し付け、国から受領した賃貸料を、本件各土地の地権者である会員に分配(本件金員)するとともに、そのうちの3%を事務取扱費などの名目で控除して取得していた。
 一審の静岡地裁は、①本件各賃貸借契約の賃貸人は原告であり、本件各賃貸料はその全額が原告の収益の額に当たり、法人税法22条所定の「益金の額」に算入される、②本件各地権者に対する本件金員の支払は法人税法37条の寄附金に当たり、本件各処分は適法であるとして、原告の請求を棄却した。原告は、本件各賃貸料を収受するための使用収益権は本件各地権者にあるなどと主張するも認められず、これを不服として控訴していた。
入会権が利用形態を変容させつつ存在
 東京高裁はまず、本件各土地の賃貸料の収受を目的とする入会権が存在するか否かについて検討した。
 入会権とは、一般に、一定の地域の住民が一定の山林原野等において共同して雑草・薪炭用雑木等の伐採等の収益をする慣習上の権利であり、権利者である入会部落の構成員全員の総有に属するとされる(最高裁昭和41年11月25日判決)。部落が入会集団として入会権を取得するには、部落が「実在的総合人」として成立し存在することを前提とし、部落による内部的統制が行われていることが必要(最高裁昭和57年1月22日判決)とされている。
 東京高裁は、江戸時代からの本件各土地の使用収益の状況についてのとおり認定した。

 そして、本件土地の賃貸借契約の締結当初は、控訴人が地権者の代理人として締結しており、その後、契約書面上は控訴人が賃貸人として締結されるようになったが、国から受領した賃貸料は、総会の承認を得ることもなく地権者に分配されるなどの実態には何ら変更もなく、控訴人が賃貸人とされたのは手続上の便宜にすぎないとした。
 以上のことから東京高裁は、本件各土地の地権者の集まりというべき地権者集団が、法人である控訴人とは独立してその支配を受けることなく存在し、かつての部落に代わる入会集団としてその内部的統制も維持されていると判断。本件各土地に係る入会権の利用形態は時代の流れとともに変容しているものの、本件各土地には、今日においても地権者を入会権者とする入会権が存在しており、本件各賃貸料は当該入会権の目的とされているとした。
名義人が収益を法的に支配しておらず
 そして、本件各賃貸料収入が控訴人に帰属するかについては、当該名義人が当該収益を法的に支配しているか否かが判断の要素になるとの考えを示した。
 その上で、本件各賃貸料収入に係る収益は、法形式上は控訴人が享受するものであるが、前記のとおり、本件各土地には本件各賃貸料を目的とする入会権が存在しており、控訴人は、本件各土地の所有者であるものの、本件各賃貸料は、入会権者である地権者に帰属するものとして、控訴人の他の財産が混入しない専用の本件口座に分別管理され、収入支出予算書に計上せず総会の承認を得ることもなく地権者に分配されており、控訴人は、事務手数料としてそのうちの3%を取得したにすぎないと指摘。また、本件各土地の賃貸借契約についても、控訴人が賃貸人とされたのは、本件各土地の所有者が控訴人であることを踏まえた手続上の理由によるものにすぎないとした。これらの点を踏まえて東京高裁は、控訴人は、本件各賃貸料収入に係る収益を法的に支配しているとはいい難く、本件各賃貸借契約も実質的には国と地権者との間において締結されたものであって、控訴人は本件各賃貸借契約における単なる名義人にすぎないというべきであり、本件各賃貸料収入のうち地権者に支払われた本件金員に対応する部分の収益を享受していないと結論づけた。

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