税務ニュース2025年07月11日 継続的取引停止に係る貸倒れの判断基準(2025年7月14日号・№1082) 審判所、複数回取引があっても継続的取引に該当しないと判断
法人税基本通達9−6−3<一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ>の(1)は、債務者との取引を停止した時以後1年以上経過した場合等には、その債務者に対して有する売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理することを認めているが、実務上問題となってきたのが「取引の停止」の意義だ。同通達の(注)は、取引の停止とは「継続的な取引を行っていた債務者につきその資産状況、支払能力等が悪化したためその後の取引を停止するに至った場合をいう」とし、これに該当しない例として「不動産取引のようにたまたま取引を行った債務者に対して有する当該取引に係る売掛債権」を挙げているものの、それ以外に同通達(1)への該当性を具体的に判断した裁決や判決は見当たらなかった。この点について国税不服審判所が令和6年8月26日、初めて判断を示していたことが判明した(関裁(法・諸)令6第1号)。
請求人は、債務者である取引先に対し、親戚関係や地域性を考慮しつつ、継続的な受注を期待しながら5年以上にわたり複数回の工事を行っていたこと等から、本件各工事に係る取引は通達にいう「継続的な取引」に該当し、本件取引先に対する売掛金債権につき貸倒損失の損金算入が認められるべきと主張した。これに対し審判所は、①請求人と本件取引先との間で工事の必要性が継続的にあることを前提とした基本契約書等のやり取りはない、②本件取引先が営む事業の内容に照らせば、本件取引先が建物等に関して工事を要する状況になることや特定の時期にそのような状況が発生することが確実であったとは認められない、③取引に係る各工事の内容等は様々であり、その工事別に引渡しがされていること等からすると、請求人が本件取引先から継続的に工事を請け負う関係にあったとは言えず、むしろ、請求人と本件取引先は、各工事の必要性が生じた都度、工事の受発注と代金の請求を行っていたとみるのが自然とし、「継続的な取引」には該当しないと判断、貸倒損失の損金算入を認めなかった。
複数回取引が行われていても「継続的な取引」に該当しないとした点や、その判断に当たって①基本契約書の有無、②債務者の事業内容、③個々の取引の内容等が考慮された点、注目される。
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