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解説記事2025年07月21日 ニュース特集 訴訟にまで発展した税理士等の報酬トラブル(2025年7月21日号・№1083)

ニュース特集
包括外部監査契約は成果完成型の準委任契約にあらず
訴訟にまで発展した税理士等の報酬トラブル


 税理士や公認会計士が業務を行っていく上では様々なトラブルに巻き込まれることがあるが、その最たるものが報酬といえるだろう。本特集では、税理士や公認会計士の業務に関する報酬をめぐって訴訟にまで発展した最近の事件を2件紹介する。1件目は地方公共団体における包括外部監査契約が、実働時間1時間当たりの報酬を支払う準委任契約か、報告書という成果物に対して報酬が支払われる準委任契約かが争われたもの。また、2件目は会社が26年間顧問税理士であった税理士に対し、前払いした報酬の一部返還を求めたもの(税理士は反訴)。いずれの事件も報酬の支払いが認められているが、契約書等を作成することなどにより訴訟を避けることも可能であったように思える。他山の石としたい判決といえよう。

包括外部監査契約、実働時間で報酬を支払う準委任契約か否か

 1件目に紹介するのは、地方公共団体における包括外部監査における報酬をめぐるトラブルだ(令和7年1月29日、令和5年(ワ)第18715号)。包括外部監査とは、地方公共団体が、毎会計年度、弁護士や税理士、公認会計士など特定の個人と包括外部監査契約を締結し、特定のテーマについて、その包括外部監査人が地方公共団体や関連団体に対して行う監査制度のこと。地方自治法の一部改正により創設された外部監査の1つである。
 公認会計士である原告A及びBは、公認会計士である被告Xから令和4年度東京都特別区の包括外部監査の補助者業務を受託し、業務を履行したとして被告Xに対し、未払報酬(原告Aにつき268万6,510円、原告Bにつき72万5,985円)の支払いを求めた。被告Xは、Y区との間で包括外部監査契約を締結。監査費用に関する定めは表1のとおりであり、監査費用の支払時期は、監査報告を提出し、監査費用を請求した後30日以内とされていた。その後、被告Xは、令和4年7月、原告らに対し、補助者業務に関する契約条件(表2参照)をメールで連絡し、原告らはこの条件に応じることで契約が締結された。また、原告らに割り当てる予定時間数を200時間とする旨をメールで連絡。ただし、契約に係る契約書は作成されなかった。

【表1】監査費用の定め(被告XとY区との契約)

執務費用 次の基本執務費用に外部監査人補助者執務追加費用を加えた金額とし、1,210万円(消費税及び地方消費税を含む)をもって上限とする。
基本執務費用 1時間当たりの執務時間数に1万6,500円(消費税及び地方消費税を含む)を乗じた金額とする。
外部監査人補助者執務追加費用 外部監査人補助者の1時間当たりの執務時間数に9,900円(消費税及び地方消費税を含む)を乗じた金額とする。

【表2】補助者業務契約(被告Xと原告A・Bとの契約)

補助者の報酬金額 1時間当たり税込9,900円×実働時間。ただし、契約金総額の上限値が1,210万円(税込)と定められているため、補助者各人の予定時間数を決めて、時間管理をしていく。
報酬の支払時期 Y区に監査報告書及び完了報告書を提出した後、令和5年4月30日を予定している。
勤務時間記録の
付け方
Y区と合意した個人別の執務時間記録シートのフォーマットのエクセルファイルに記録をつけて、月単位で発生時間数・累計時間数の報告をメールで求める。

 原告らは、補助者業務契約は実働時間1時間当たり9,900円の報酬を支払う準委任契約であり、報告書という成果に対して報酬を支払う契約ではないなどと主張した。
報酬額は勤務時間数に応じて増加
 裁判所は、包括外部監査は地方公共団体の外部の公認会計士等の専門家が監査をし、監査の結果の報告を提出することを内容とするものであり、監査人の善管注意義務等の義務や意見を述べる権限等を与えられていることに照らすと、包括外部監査契約は、報告書の提出それ自体が契約の主たる目的ではなく、外部の専門家が監査をし、報告書という形で監査の結果を報告して意見を述べることを主な目的とする契約であると指摘。また、包括外部監査契約及び契約上の報酬に関する契約条件は、いずれも執務時間に1時間当たりの報酬額を乗じて報酬額を算定する内容となっており、報酬額は執務時間数の増加に応じて増加するから、補助者業務契約は、原告らが一連の監査業務である本件業務を遂行するという債務を負い、これに対して被告Xが業務の遂行の対価として実働時間1時間当たり9,900円の報酬を支払う債務を負うことを内容とする準委任契約であり、報告書という成果の完成の対価として報酬を支払う請負契約ないし成果完成型の準委任契約ではないと解するのが相当であるとの見解を示した。
 その上で、裁判所は、原告らがその実働時間に遂行した業務に契約上の委任の本旨に従ったものであることを否定すべき事情のない限り、被告Xは、その実働時間に応じた報酬支払義務を負うことになるとした。原告らの報酬額は実働時間に1時間当たり9,900円を乗じた額であるところ、原告Aの実働時間は370.1時間、原告Bの実働時間は127.75時間であるから、報酬額は、原告A:366万3,990円、原告B:126万4,725円であり、これから既払額を控除すれば、未払報酬は、原告A:268万6,510円、原告B:72万5,985円になると判断した。
報酬額の基礎となる時間数は単なる目安
 なお、包括外部監査契約約には、報酬額の上限が1,210万円と定められており、補助者業務契約上の報酬額の定めは、包括外部監査契約を踏襲した内容であることが認められ、報酬額が無限定なものであったものとは言い難いとしたが、裁判所は、補助者業務契約については包括外部監査契約とは異なり契約書が作成されておらず、明示的な上限の定めがあったとはいえない上、被告Xが示した200時間という報酬額の基礎となる時間数については単なる目安にすぎず、明確な報酬額の上限ではなかった可能性を否定することはできないとしている。

顧問料、前払いか後払いか

 2件目に紹介する事件は、会社(原告)が顧問税理士であった被告に対し、顧問契約の年度途中の解約により前払いした報酬の一部(174万円余り)につき過払いが生じているとして、その支払いを求めたものである(令和7年2月12日、令和5年(ワ)第32907号(本訴)、令和6年(ワ)第7269号(反訴))。一方、被告の税理士は、反訴として顧問契約に伴う報酬支払合意に基づき、既履行の事務の対価となる報酬166万円余りを求めている。被告は、原告の顧問税理士を約26年間務めていた者だが、大きなトラブルに巻き込まれてしまった。
 原告は令和5年3月31日、被告である顧問税理士に対し249万円余りの報酬を支払った。被告は、同年4月から同年9月12日までの間、顧問契約に基づき、原告等の決算申告などを行ったが、原告と被告は、同年9月12日に顧問契約を合意解除。その後、原告は、被告に支払ったおよそ249万円は令和5年度分(令和5年4月~令和6年3月)の報酬の前払いであるとし、既履行分を控除した残額である174万円を支払うよう被告に求めた。一方、被告の税理士は、249万円は令和4年度分(令和4年4月~令和5年3月)の報酬の後払いとしたものであると主張した。
月次決算でも報酬の後払いで決算に支障なし
 裁判所は、原告は毎月月次決算を実施していることからすれば、顧問契約に基づく報酬は前年度末に前払いしない限り、決算手続に支障が生じると主張しているが、仮に毎月月次決算を採用していたとしても、年度の報酬を同年度末に一括で後払いすることによってその決算手続に支障が生じることを裏付ける証拠はないとした。また、原告は、平成25年3月頃(平成24年度末)に報酬支払方法につき、それまでの月次払いを前年度末に翌年度分の報酬を一括前払いに改めたとしているが、この点について裁判所は、たしかに同年度末にそれまでの月次の報酬支払に加えて大幅に増額された報酬が支払われているが、当時、原告の売上は毎年1億円ずつ増加を続けていたことからすれば、平成24年3月時点で報酬の増額に関する合意がされた上で追加の報酬が支払われた可能性も否定できないと指摘。平成24年度中に月次により報酬が支払われていたこと、同年度末に大幅に増額された報酬が支払われたことのみをもって直ちに同年度末に報酬支払方法を前年度末に翌年度分の報酬を一括前払に改めたことを推認するには足りないとした。
 加えて原告は、被告が令和5年3月に交付した令和4年度分の顧問報酬の明細を含む請求書(請求額249万4,750万円)に応じて給付をしたこと、原告が被告に対し請求書の明細について異議を述べたことをうかがわせる証拠は見当たらないことからすれば、被告は、原告に対し、令和4年度分の報酬の支払を請求し、原告から同年度分の報酬の支払として請求書記載の金額の支払を受けたことが認められるとし、本件給付が令和5年度分の報酬として支払われたものであると認めることはできないとした。したがって、原告が被告に対し顧問契約に基づく報酬を前払いしたとはいえないから、原告は被告の税理士に対し、顧問契約に基づき166万1,000円を支払うよう命じている。

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