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解説記事2025年08月11日 SCOPE 一般的なサブリースにあらず、同族会社の行為計算否認は適法(2025年8月11日号・№1086)

大阪高裁、国の敗訴部分を取り消し
一般的なサブリースにあらず、同族会社の行為計算否認は適法


 納税者(被控訴人)が代表取締役を務める不動産会社(同族会社)であるX社との賃貸借契約に対し、国(控訴人)が適用した同族会社の行為計算否認規定が適法であるかが争われた事件で、大阪高等裁判所(嶋末和秀裁判長)は令和7年4月25日、被控訴人及びX社が一括サブリースを内容とする賃貸借契約を締結したことは、実態とはかい離した形式を作出したものであり、同族会社の行為計算否認規定を適用して行った所得税等の更正処分等は適法であるとの判断を示し、原判決の国の敗訴部分を取り消した(令和6年(行コ)第57号)。

原審、賃貸借契約の特殊性から国の管理委託方式による賃貸料算定を否定

 本件は、司法書士業及び不動産賃貸業を営む被控訴人である納税者が、自身が代表取締役を務める不動産会社(同族会社)であるX社と締結した賃貸借契約(マスターリース契約)について、税務署が同族会社の行為計算否認規定(所法157条1項)を適用したことから、その可否が争われたものである。納税者は、平成23年頃までは自己の所有する不動産を個別に第三者に賃貸して賃料収入を得るなどしていたが、平成24年7月以降、自己が所有していた不動産をX社に一括して賃貸し、賃貸料収入を得るようになった。この賃貸借契約は、X社が不動産を第三者に個別に賃貸する(転貸する)ことを前提とするものであった。
 原審の大阪地裁は、本件賃貸借契約は、一般的には同一のサブリース業者に一括して転貸方式で賃貸することが困難な種別の異なる多数の不動産を一括して転貸方式で賃貸するものであり、また、対象不動産が売却により減少しても契約期間中の賃料の額が減額されないことによる負担を賃借人(X社)に負わせるものであると指摘。このような賃貸借契約の内容や特殊性に照らせば、管理委託方式を基に賃貸料を算定すべきとの国の主張はその前提で誤っているとした。その上で大阪地裁は、賃貸借契約の目的、賃貸料の金額や契約の諸条件を含む賃貸借契約の内容等の諸事情を総合的に考慮すれば、本件賃貸借契約は「所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」には当たらないとし、同族会社の行為計算否認規定を適用した所得税の更正処分等の一部を取り消した(本誌1039号40頁参照)。
マスターリース契約の形式を整えたにすぎず
 この判決を不服とした国側は控訴。国(控訴人)は、控訴審において、本件賃貸借契約はマスターリース契約の形式を整えたものにすぎず、少なくとも約定賃貸料に見合ったマスターリース契約の実態を備えるものではなく、経済的かつ実質的な見地において、不自然、不合理なものであるなどと主張した。

第三者とも重複して賃貸借契約、実態とはかい離した不自然な契約

 大阪高裁は、事実認定により、納税者(被控訴人)はX社との本件賃貸借契約とは別に、第三者との間で①マスターリース契約を締結し、②駐車場用地の賃貸借契約を締結し、管理委託契約を締結していたことが認められ(重複契約)、しかも、これらの重複契約物件は本件不動産のかなりの部分を占めるものといえるとした。また、X社には数名の従業員しかおらず、数百のエンド・ユーザーに対応することは、実際上、極めて困難であることなどを踏まえると、実質的に被控訴人は、本件不動産をX社ではなく、第三者(X社以外の不動産管理会社)に賃貸し又は管理委託した上、不動産管理会社又はエンド・ユーザーの賃貸料の支払先口座として、被控訴人名義の口座ではなく、X社名義の口座を指定したものであり、X社は、エンド・ユーザーとサブリース契約を締結するのではなく、第三者から送金される賃貸料を被控訴人に代わって受領するなどの窓口業務をしていたにすぎないと評価するのが相当であると指摘。このような実態は、一般的なサブリースの実態とは大きく異なるものであり、被控訴人及びX社が一括サブリースを内容とする賃貸借契約を締結したことは、まさに、実態とはかい離した形式を作出したものというほかはなく、本件賃貸借契約は不自然なものというべきであるとした。
納税者からX社への所得の移転が目的
 また、一般的な借上料(不動産オーナーに支払う賃貸料)率は、転貸料の80ないし90%であり、60%未満とすることはオーナーにメリットがないため想定し難いとされているところ、被控訴人は、賃貸借契約の賃貸料の金額として、①被控訴人個人が負担する必要資金を下回らない金額とすること、②X社の事業運営と経費が賄えること、③売却予定物件の賃貸料収入を除外しても、X社の事業運営に支障が生じないようにすることという条件を満たしたものとしたのであり、その理由は、被控訴人が、X社の信用を高めるため、X社の資産を増やす必要があると考えていたことによることが認められるとした。
 したがって、大阪高裁は、本件賃貸借契約に基づく行為又は計算は、「X社の信用を高めるため、X社の資産を増やす」目的、すなわち「被控訴人からX社に所得を移転する」目的でされたものであって、被控訴人がX社の発行済株式のすべてを有する株主であり、代表取締役兼取締役という地位にあるがゆえに行うことができる行為又は計算にほかならず、経済的合理性を欠き、不自然であるとの判断を示した。
管理委託方式による算定が合理的
 その上で、大阪高裁は、管理委託方式を基にした算定方法によって適正な賃貸料を算定することが合理的であるとし、国側が算定した適正な賃貸料は、平成27年分が約2億5,349万円、平成28年分が約1億8,814万円、平成29年分が約1億2,720万円である一方、被控訴人の賃貸料は、平成27年分が1億8,000万円、平成28年分が1億4,400万円、平成29年分が9,600万円と著しく低額であり、これを容認すると、被控訴人の所得税等の負担を不当に減少させる結果となると認められることから、同族会社の行為計算否認規定を適用して行った所得税等の更正処分等は適法であるとの判断を示した。

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