税務ニュース2025年08月22日 契約締結過程で作成する文書への印紙税(2025年8月25日号・№1087) 本契約の成立について拘束力が生じていることが課税文書の前提に
請書、覚書、念書等のように「契約当事者の一方」が署名して相手に交付する文書でも、契約の成立等が証明されるものは印紙税の課税文書である「契約書」に該当し得ると解されている。また、課税事項のうちの一つの重要な事項(目的物の内容、契約金額、取扱数量、単価等)を証明する目的で作成される文書も契約書に該当すると解されている(印紙税法基本通達12条、別表第2)。このため税務調査で、契約成立後に上記重要な事項について「原契約にない又は原契約と異なる取引条件」を記載した文書を作成・署名して相手に交付する念書等が、契約の内容の変更又は補充を証する目的で作成された文書として契約書に該当するとの指摘を受ける場合がある。
さらに最近は、契約締結の過程で取り交わされる文書であっても、上記のような取引条件が記載され、当事者の一方の署名があれば契約書に該当するとの指摘を受ける事例が発生している。契約には本契約を将来成立させることを約する契約としての「予約」が含まれるから、本契約の成立に向け交渉した取引条件等を記載すれば、予約の成立を証する目的で作成した文書に当たるというわけだ。確かに、正式な契約書の作成を予定せず、これに代えて仮契約書や打ち合わせ議事録等に当事者が合意した取引条件を記載するようなケースでは、それらの文書は、契約の成立を証する目的で作成された契約書と判断されやすい。また、最終的には正式な契約書の作成を予定していても、その前に本契約又は予約が成立していることを前提に取引条件について段階的に合意する都度作成した文書も、契約の成立又は内容の変更・補充を証する目的で作成される文書と判断されることもある。
もっとも、最終的に正式な契約書の作成を予定している場合には、それまでは契約の成立について何ら拘束力が生じていないことを前提に取引条件を交渉するのが通常。予約とは、相手方が承諾の義務を負い、又は、承諾なしに直ちに本契約が成立するという法律効果を生じさせる合意であり、単に契約の成立に向けて交渉した取引条件を記載しただけで「予約」として課税文書になることはないはずだ。調査では、本契約の成立について拘束力が生じていることを前提に取引条件が記載された文書と言えるのかを問うようにしたい。
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