税務ニュース2025年08月22日 学校法人から理事長への10億円は賞与(2025年8月25日号・№1087) 理事長は貸付金、学校法人は横領と主張するも認められず
本件は、学校法人から理事長に支払われた金員が賞与に当たるかどうかが争われた事案である。学校法人には源泉所得税等の納税告知処分等、理事長には給与所得課税が行われたため、それぞれが処分の取消しを求めて訴訟を提起した。
理事長は、学校法人の職員に指示して、R大学から合計8億円、E学園から合計2億5千万円の各金員を、R医療法人名義口座を経由して受領した。東京地裁は、本件各金員は、理事長という地位に基づいて支給されたものであり、理事長が自己の計算又は危険において独立して行った業務等により生じたものではないと判断。その上で、理事長が本件大学及び本件学園に対し雇用契約に類する原因に基づき提供した役務の対価として、功労への報償等の観点をも考慮し臨時的に付与された給付とみるのが相当であるとの考えを示し、所得税法28条1項にいう給与等と認定した。
学校法人側は、理事長は本件各金員を自らの趣味の競走馬購入費用に充てており、学校法人の価値上昇に貢献していないことを指摘して、本件各金員が職務上の対価として支払われた事実はないと主張したが、東京地裁は、本件各金員の使途や原告への利益の有無といった原告の指摘するような事情は、本件各金員の性質についての判断を左右するものとはいえないとして、この主張を排斥した。
また、学校法人は、本件各金員の支払について理事会及び評議員会の決議が実施されておらず、私法上無法な行為に課税対象となる所得は発生しないことや、理事長の行為は権限を濫用又は逸脱した違法な横領行為であるなどとも主張した。これに対し東京地裁は、理事長が学校法人における唯一の代表者としての地位及び権限に基づき本件各送金を行わせ、これにより学校法人から理事長に経済的利益が現実に移転したことに着目。本件各送金は学校法人の意思に基づく行為とみることができ、学校法人が指摘する事情をもって、学校法人が「支払をする者」に該当しないということはできないとした。
一方、理事長は、本件大学各金員は本件大学から本件医療法人に対する事業譲渡代金の前払金であり、本件学園各金員は本件学園の本件医療法人に対する貸付金で、その後理事長に貸し付けられ、すでに返済されたと主張。これに対し東京地裁は、当該主張は、学校法人の経理処理や税務調査における理事長の供述と齟齬があるとして、この主張も斥けている。
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