会計ニュース2025年08月22日 ASBJがのれんに関する公聴会を開催(2025年8月25日号・№1087) 野間一橋大学大学院教授、資本コストの面からのれんの非償却を支持
企業会計基準委員会(ASBJ)は8月12日、企業会計基準諮問会議からの依頼を受け、のれんに関する公聴会を開催した。同諮問会議は、スタートアップ企業等からの提案を踏まえ、のれんの非償却の導入及びのれん償却費計上区分の変更について、会計基準として改善が見込まれるかどうかの意見聴取を行うよう同委員会に依頼を行ったものである(本誌1085号9頁参照)。
第1回目となる公聴会では、野間幹晴氏(一橋大学大学院経営管理研究科教授)及び芦澤美智子氏(慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授)から意見を聴取。野間教授は、かつて米国では40年以内の規則的償却が要求されていたが、英国ではのれんを償却せず、資本から一括控除する持分控除法が要求されていたため、クロスボーダーM&Aで、米国企業が英国企業に競り負けることもあったとし、米国の会計基準が米国企業の国際競争力を阻害していると議論された経緯があると説明。会計基準設定において、経済的影響を考慮すべきか、あるいは中立性を重視すべきかという論点につながったとしている。会計基準設定では、中立性を重視する必要があるが、国際的調和化の観点から日本基準は少数派であり、日本基準はスタートアップに負の経済的影響を与えていると指摘した。また、芦澤准教授は、IFRSや米国会計基準がのれんを非償却とした2000年初め頃は欧米でM&Aが増加している状況にあったが、現在は日本も、米国と同様の規模になってきており、改めて議論を行うべき時期になっているのではといった旨を話した。
質疑応答では、野間教授はのれんの非償却を支持するとし、理由としてIFRSと比べて日本基準により財務諸表を作成する資本コストが高い点と、スタートアップ育成の観点から経済的影響が大きい点を挙げた。ただし、日本基準の中で、のれんの償却と非償却の選択を認めることについては、日本基準でありながら償却なのか非償却なのかを確認しなければならないことから、消極的な賛成としており、芦澤准教授も同意見だった。また、野間教授は、のれんの償却費の計上区分を営業外費用又は特別損失に変更することについても賛成意見を述べたが、論拠として学術的な証拠があるかと問われれば難しいと回答した。
なお、公聴会の模様は、同委員会のホームページから閲覧することができる。
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