税務ニュース2025年08月29日 少額免税基準、0.6掛け特例を見直しへ(2025年9月1日号・№1088) 越境ECサイトのみならず商社、運輸業者、通関業者等にも影響
財務省は令和8年度税制改正で越境ECサイトに関する消費税を見直すべく議論を進めている(本誌1047号参照)。論点の一つとなっているのが、国外事業者が自社サイトやプラットフォーマーなどを通じ、海外から製品を直送するケースだ。この場合、消費者が輸入者ということになり、通関業者が関税及び輸入消費税を税関に申告する必要がある。しかし、多くの製品は、少額貨物の免税制度を利用することで、関税・輸入消費税の課税を受けることなく輸入されている。このような取扱いは、消費税を負担している国内事業者にとって競争上不利益となっているのではないかとの指摘がある。近年、国内で利用者・取引高が急増しているSHEIN(シーイン)やTemu(テム)など中国系の越境ECがこの少額貨物の免税制度を利用しているとみられる。
少額貨物(課税価格1万円以下)については、関税定率法14条18号及び同施行令16条の3、同基本通達14−21で「関税を免除する」と規定され、14条18号を援用した輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律13条1項1号で「消費税を免税する」と規定されている。一方、同じ課税価格1万円以下の商品であっても、国内事業者が発送する商品は消費税の免税対象とされないため、不均衡が生じている。
また、国内において行われる資産の譲渡等(国内取引)の課税標準は「商品価格(税抜価格)」とされているが、個人的な使用に供される輸入取引については、当該貨物の輸入が通常の卸取引の段階で行われたとした場合の価格が課税価格となる(関税定率法4条①、4条の6②)。この「当該貨物の輸入が通常の卸取引の段階でされたとした場合の価格」は、同基本通達4の6−2(3)において『「海外小売価格×0.6」により算出するもの』と規定されている。これに対し、海外との小売価格の乖離が小さくなってきた昨今の事業環境を踏まえると、この規定が国外のEC事業者を過度に優遇することにつながっているとの指摘がある。
こうした中、財務省は、国内事業者との競争上の公平を確保する観点から、少額貨物の免税基準とともに、個人使用目的の輸入貨物に係る0.6掛け特例についても見直す方向で検討を進めていることが本誌取材により判明した。越境EC取引に係る規定の見直しは、関税に係る規定の見直しも視野に入れているため、海外のEC事業者のみならず、本邦の商社や運輸業者、通関業者等にも影響が及ぶ可能性があろう。
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