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税務ニュース2025年09月05日 経産省、大胆な投資促進税制の創設要望(2025年9月8日号・№1089) 財政的制約と租税特別措置透明化法の改正が波乱要因に

  • 経済産業省が、研究開発税制の「上乗せ部分」をはじめとする令和8年度末に期限切れとなる措置の期限延長及び見直しと、「大胆な投資促進税制」の新設を要望。
  • 財政的制約の中での新規大型減税には慎重論も根強く、適用要件や控除水準決定は難航も。立憲・維新が主導する租税特別措置透明化法の改正も波乱要因に。

 研究開発税制は令和5年度の適用額が約9,500億円と、租税特別措置の中でも最大規模を占めている。令和8年度税制改正では「上乗せ措置」が期限切れを迎えることもあり、年末の税制改正大綱とりまとめに向け議論の対象となることは既定路線となっていたが、経済産業省は令和8年度税制改正要望で、同年度末に上乗せ部分の期限切れを迎える研究開発税制について、①戦略技術領域に対する研究開発投資の拡大、②大学等における戦略研究拠点との産学連携の促進、③中長期的な研究開発投資を促し、国際的にイコールフッティングな投資環境の整備等に必要な措置、を要望している。これらの要望は、経済産業省に設置されている「研究開発税制等の在り方に関する研究会」による中間とりまとめを踏まえた内容となる。
 中間とりまとめには、制度の簡素化・安定化と成長分野への資源集中を二本柱として複数の論点が示されている。その中で特に注目されるのが、国家戦略として重要な技術を対象に高い控除率と控除上限を設定する「戦略技術領域型」の創設だ。戦略技術領域の特定に当たっては「CSTI(内閣府科学技術・イノベーション推進事務局)」とも連携すべきとされているが、経済産業省の「イノベーション小委員会」が今年4月17日に示した中間とりまとめでは、「量子、AI、バイオ等の戦略的に重要な技術について、企業の研究開発投資を拡大するためのインセンティブ施策の強化」が強調されている。このため、令和8年度税制改正議論では、これらの分野を中心に検討が進められることになるだろう。
 また、オープンイノベーション型の強化も求める。具体的には、オープンイノベーション型に、「特定大学等の戦略研究拠点との共同・委託研究」を新たな対象として加え、高い控除率を適用することを要望。加えて、オープンイノベーション型に係る実務を簡素化・軽減する観点から、契約書総額ベースの控除対象化や第三者確認の省略なども併せて求める。
 さらに、長期的な研究開発計画を後押しする観点から、かつて存在した繰越控除制度の復活のほか、高度研究人材の活用に関する試験研究費の拡充や中堅企業に対するインセンティブの強化も要望している。
 一方、令和6年度税制改正で措置されたイノベーション拠点税制については、研究開発税制等の在り方に関する研究会で、対象に製品・サービス売却益を加えることや、組織再編による知財承継の柔軟化、実用新案等の追加などが検討されたものの、令和8年度税制改正の要望項目とはならなかった。令和9年度改正を視野に議論を進める方向だ。
 令和8年度税制改正要望には、研究開発税制以外で期限切れとなる投資減税の延長・見直しも盛り込まれた。具体的には、①産業競争力強化法の計画認定制度に基づく生産工程等の脱炭素化と付加価値向上を両立する設備の導入に対して最大10%の税額控除(中小企業者等の場合は最大14%)又は50%の特別償却を措置するカーボンニュートラルに向けた投資促進税制、②中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満・合計300万円まで)の全額損金算入(即時償却)の特例について、適用期限を2年間延長(令和9年度末まで)するとともに、要件の見直しを要望している。
 経済産業省の税制改正要望の中で研究開発税制の拡充と並ぶ目玉と言えるのが、「大胆な投資促進税制」の新設だ。経済産業省は、2030年度に135兆円、2040年度に200兆円という国内投資目標を掲げ、これを確実に達成するため、2026年度からの5年間を「集中投資期間」と位置付け、製造業のファクトリーオートメーションや物流倉庫の自動化、バイオ製薬などの事業への転換といった高付加価値投資を対象に、強力な税額控除や特別償却などの措置を新設することを構想している。「大胆な投資促進税制」の新設により企業の税負担を軽減することで、企業に蓄積した現預金を成長投資に振り向けさせ、国内雇用の促進や賃上げにつなげる狙いがある。米国では、償却期間が20年以下の機械装置、車両、ソフトウェア等の幅広い資産を対象に、時限措置であった100%即時償却を恒久化するとともに、4年間の時限措置として、工場等も含めた建屋も即時償却の対象に加えられ、ドイツでは2025年から3年間に限り設備投資の減価償却率が最大30%に引き上げられるなど国際的な投資競争が激化しているが、財政的制約が厳しい中での新規大型減税には慎重論も根強く、適用要件や控除水準を巡って激しい議論が予想される。
 また、立憲民主党と日本維新の会が主導する「租税特別措置透明化法」の改正も波乱要因となりそうだ。2025年の通常国会に両党の連名で提出された同法改正案には、租税特別措置の適用額が一定規模(現行案では上位企業)を超える企業の名称、適用した租税特別措置の種類及び適用額の公表を義務付けることが盛り込まれている。特に研究開発税制は租税特別措置の中でも規模が大きく、適用額が多額に上る企業は公表対象となる可能性が高い。公表情報は「企業名、制度名、適用額」が並列される形となるだけに、企業による制度の利用に萎縮的な効果を及ぼす恐れもあろう。

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