税務ニュース2025年09月05日 振込金の益金算入の要否めぐり国側敗訴(2025年9月8日号・№1089) 福岡地裁、法律上の原因を欠くものであり所得の実現があったといえず
本件の争点は、原告法人がA社から平成29年12月下旬に受領した本件振込金を原告法人の平成29年12月期に益金算入すべきか否かという点である。
事実関係をみると、原告法人は当初、税務調査の指摘を受けて、事業の進め方をめぐり紛争が生じていたA社との間で和解契約が成立してその和解契約に基づき本件振込金が送金されたとして、本件振込金を平成29年12月期に益金算入する旨の修正申告書を提出した。ところが、原告法人は、A社との和解契約の成立に争いがあり、これが成立しないことを理由に本件振込金は平成29年12月期の益金に算入されないとして更正の請求を行った。これに対し博多税務署長は更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったことから、その通知処分の取り消しを求めて原告法人が税務訴訟を提起するに至った。
福岡地裁は、本件における認定事実を踏まえ、原告法人とA社との間で和解契約が和解契約書により又はこれによらずに成立したとは認められず、本件振込金は和解契約に基づいて振込送金されたものとはいえないと判断した。
そして本件振込金について福岡地裁は、A社において和解交渉の過程で明確な根拠なく今後の交渉を円滑に進める目的で将来の何らかの合意成立を期待して振込送金されたものにすぎないと指摘し、法律上の原因を欠くものであったといわざるを得ないから、原告法人が本件振込金を取得する権限(収入すべき権利)が平成29年12月期において確定的に発生していたとは認められないと判断した。
そのうえで福岡地裁は、原告法人はA社から本件振込金の返還を求められればこれに応じざるを得ない状態であり、原告法人において本件振込金を収受し、所得の実現があったとみることができる状態が生じたとはいえないから本件振込金について管理支配基準(今号42頁参照)を適用することはできないと判断したうえで、本件振込金は平成29年12月期の益金に算入されないとして博多税務署長による更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消した。
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