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解説記事2025年09月22日 未公開判決事例紹介 包括外部監査契約における会計士への報酬を巡る事件(2025年9月22日号・№1091)

未公開判決事例紹介
包括外部監査契約における会計士への報酬を巡る事件
東京地裁、成果完成型の準委任契約にあらず

 本誌1083号4頁で紹介した報酬請求事件の判決について、一部仮名処理した上で紹介する。

〇地方公共団体における包括外部監査契約の報酬を巡る裁判で、東京地方裁判所(中原隆文裁判官)は令和7年1月29日、包括外部監査契約は業務の遂行の対価として実働時間1時間当たり9,900円の報酬を支払う債務を負うことを内容とする準委任契約であるとし、公認会計士の被告と補助者業務契約を締結した公認会計士である原告らに報酬の未払い分を支払うよう命じた(令和5年(ワ)第18715号)。

主  文

1 被告は、原告Aに対し、268万6510円及びこれに対する令和5年7月30日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
2 被告は、原告Bに対し、72万5985円及びこれに対する令和5年7月30日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 この判決は仮に執行することができる。

事実及び理由

第1 請求
 主文1項及び2項同旨


第2 事案の概要
1 事案の要旨

 公認会計士である原告らは、それぞれ、公認会計士である被告から令和4年度Y区包括外部監査(以下「本件監査」という。)の補助者業務(以下「本件業務」という。)を受託し(以下「本件契約」という。)、業務を履行したと主張して、被告に対し、本件契約に基づき、未払報酬(原告Aにつき268万6510円、原告Bにつき72万5985円)及びこれに対する催告(訴状送達)の翌日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求めている。
2 争点及びこれに関する当事者の主張
(1)本件契約上の原告らの債務の内容・性質、報酬額の算定方法(争点1)
(原告らの主張)

 本件契約上の原告らの債務は、包括外部監査業務の補助という役務を提供し、これに対して実働時間1時間当たり9900円の報酬を支払う準委任契約であり、報告書という成果に対して報酬を支払う契約ではない。
(被告の主張)
 本件契約上の原告らの債務は、成果物たる報告書案の完成であり、これに対して原則として198万円の固定金額による報酬が支払われる。ただし、原告らの執務が200時間未満であるときは、これに応じて減額される。
(2)原告Aの実働時間(争点2)
(原告Aの主張)

 別紙執務時間記録表のとおり、実働時間370.1時間である。
(被告の主張)
 否認する。原告Aの執務時間記録表は実態を反映していない。
(3)原告らの債務不履行の有無(争点3)
(被告の主張)

ア 原告Aは、ヒアリングメモの作成をほとんど行わなかった。
イ 原告Bは、意図的に自身の認識と異なる報告書案を作成し、Y区に提出しようとした。
ウ 原告らは、担当のサブテーマの一部について、報告書案を提出しなかった。
エ 原告らは、報告書案を完成させるため必要な修正等の業務を放棄した。
オ 原告らに対する時間当たり9900円という報酬金額は、その役務提供のコストを大幅に上回る超過利潤込みの金額であり、原告らが提供する補助者業務は、当然、その超過利潤を享受するにふさわしい内容・品質・価値が必要であるが、原告らの主張する実働時間にはその要素が著しく欠けている。
(原告らの主張)
ア 原告Aにつき、ヒアリングメモの作成は不要である。
イ 原告Bにつき、意図的にその認識と異なる報告書案を作成し、提出しようとしたという事実はない。
ウ 担当サブテーマの一部について報告書案を提出しなかったという事実はない。
エ 報告書案を完成させるために必要な修正等の業務を放棄していない。
オ 争う。
(4)報酬の上限の定めの有無(争点4)
(被告の主張)

 被告は、原告らに対し、予定時間数を決めて時間管理をしていく旨述べた上、原告らに200時間という予定時間数を示しているから、200時間に対応する報酬額を報酬の上限とする合意があった。
(原告Aの主張)
 被告が示した200時間は暫定的な予定時間数にすぎず、報酬額の上限の定めはない。

第3 当裁判所の判断
1 認定事実

 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば次の事実等が認められる。
(1)包括外部監査契約
ア 本件監査は、地方自治法252条の27第2項に規定する包括外部監査である(乙2)。包括外部監査は、一定の地方公共団体が同法2条14項、15項の趣旨を達成するため、地方公共団体の外部の公認会計士等の監査を受けるとともに監査の結果に関する報告の提出を受けることを内容とする契約である(同法252条の27第2項、同法252条の28第1項)。包括外部監査契約を締結できる者は弁護士、公認会計士等に限定され(同項)、外部監査人は、善良な管理者の注意をもって誠実に監査を行う義務を負い(同法252条の31第1項)、また、包括外部監査人は、監査の結果に関する報告に添えて意見を述べることができる(同法252条の38第2項)。
イ 原告らは、同法252条の32に基づく外部監査人補助者である。外部監査人は、監査が適正かつ円滑に行われるよう外部監査人補助者を監督しなければならない(同条4項)。
ウ 被告は、令和4年7月1日、Y区との間で本件監査に係る包括外部監査契約(以下「本件包括外部監査契約」という。)を締結した。同契約における監査費用の定めは次のとおりであった(乙2)。

執務費用 次の基本執務費用に外部監査人補助者執務追加費用を加えた金額とし、1210万円(消費税及び地方消費税を含む。)をもって上限とする。
基本執務費用 被告の1時間当たりの執務時間数に1万6500円(消費税及び地方消費税を含む。)を乗じた金額とする。

外部監査人補助者執務追加費用 外部監査人補助者の1時間当たりの執務時間数に9900円(消費税及び地方消費税を含む。)を乗じた金額とする。

 また、同契約において、監査費用の支払時期は、監査報告を提出し、監査費用を請求した後30日以内と定められていた(乙2)。
(2)原告らと被告との関係
 原告らは、公認会計士として20年以上の実務経験を有し、独立して事務所を開業している。原告Aは、本件以前にもY区包括外部監査人補助者の経験があったが、被告とともに監査業務に携わったことはなかった(原告A本人、原告B本人)。
(3)本件契約の締結等
ア 被告は、令和4年7月11日、原告らに対し、本件業務に関する契約条件について次のとおりメールで連絡し、原告らがその頃これらの条件に応じることで本件契約が締結された(甲2、弁論の全趣旨)。原告らと被告との間において、本件契約に係る契約書は作成されていない(原告A本人、原告B本人、被告本人)。

補助者の報酬金額 1時間当たり税込9900円×実働時間。ただし、契約金総額の上限値が1210万円(税込)と定められているため、補助者各人の予定時間数を決めて、時間管理をしていく。
報酬の支払時期 Y区に監査報告書及び完了報告書を提出した後、令和5年4月30日を予定している。
執務時間記録の付け方 Y区と合意した個人別の執務時間記録シートのフォーマットのエクセルファイルに記録をつけて、月単位で発生時間数・累計時間数の報告をメールで求める。

イ 被告は、同日、原告らに対し、割り当てる予定時間数を200時間とする旨メールで連絡した(乙9の1、乙9の2)。
ウ 本件業務の内容は、一定のサブテーマを担当し、担当のサブテーマについてY区へのヒアリングをするなどの調査をし、報告書の第1稿を作成し、被告に提出するなどといったものであった(被告本人、弁論の全趣旨)。
エ 被告は、令和4年8月15日、原告らに対し、サブテーマを割り当てた(乙6の1)。また、被告は、同月16日、原告Aに対し、サブテーマは監査の結論を出すうえで必須という位置づけではない旨連絡した(甲17)。
(4)本件業務の経過
ア 原告らは、令和4年8月頃から監査の準備作業を始め、同年9月頃からそれぞれサブテーマに関して被告とともにY区に対するヒアリングを実施するなどし、その後、同年12月頃から報告書の作成を始め、原告Bは令和5年1月10日、原告Aは同月11日、それぞれ被告に対し、本件監査の報告書の第1稿を提出した。(甲3、4、乙10の1~11の5、原告A本人、原告B本人、被告本人、弁論の全趣旨)。
イ 原告らは、毎月、執務時間記録表に各日の執務の開始時間・終了時間・実働時間数、執務内容等を記録して被告に提出していた。原告Aの執務時間記録表は別紙のとおりである。原告Bの実働時間は、127.75時間であった(甲3、4、原告A本人、原告B本人)。原告Bは、執務時間記録表は控えめに付けようと思い、控えめに記録していた(原告B本人)。
ウ 原告ら及び被告は、ヒアリングの際、原告ら及び被告間の内部的なメモとして、ヒアリングメモを作成していた(甲36、45、47、48の1、原告A本人、被告本人)。被告は、令和4年12月11日、原告Aに対し、そのヒアリングメモが「不完全」であり「肉付け修正を、録音データに基づいて」行った方がよい旨連絡した(乙13)。
(5)本件契約後の経過
ア 被告は、令和5年3月頃、Y区に包括外部監査報告書を提出した(乙23の1)。被告は、同月23日、Y区に対し、監査費用を請求した。その際、原告Aの毎月の執務時間を合計370.1時間と申告した(甲25)。
イ 被告は、同年6月11日、本件契約に基づく報酬として、原告Aに97万7480円、原告Bに53万8740円を支払った(甲12、13)。
2 原告らの本件契約上の債務の内容・性質、報酬額の算定方法(争点1)について
(1)包括外部監査は、地方公共団体の外部の公認会計士等の専門家が監査をし、監査の結果の報告を提出することを内容とするものであり、監査人の善管注意義務等の義務や意見を述べる権限等が与えられていることに照らすと、本件包括外部監査契約は、報告書の提出それ自体が契約の主たる目的ではなく、外部の専門家が監査をし、報告書という形で監査の結果を報告して意見を述べることを主な目的とする契約であると解され、原告ら及び被告も同旨の認識を有していた(原告A本人、原告B本人、被告本人、弁論の全趣旨)。そして、本件業務の内容は、割り当てられたサブテーマについてヒアリング等の調査をし、報告書の原稿を作成するという一連の監査業務が内容に含まれており、また、原告らは20年以上の経験を有し独立して事務を行う公認会計士であるから、公認会計士としての専門性に基づき、本件監査における監査業務の一部を、サブテーマを一つの基準として被告の監督のもとで分担して行うものであるということができる。
(2)また、上記認定によれば、本件包括外部監査契約及び本件契約上の報酬(監査費用)に関する契約条件は、いずれも執務時間に1時間当たりの報酬額を乗じて報酬額を算定する内容となっており、報酬額は執務時間数の増加に応じて増加するから、報酬は報告書提出の対価であるというより業務遂行の対価であるとみるのが自然である。本件監査や本件契約において報告書の提出が報酬支払の条件となっており、本件契約の報酬はその後に支払われることが予定されていたことは、報告書の提出は監査業務の主要部分が終了することを意味することからすると、報酬の後払いの趣旨を定めたにすぎないと解される。
  もっとも、本件包括外部監査契約の報酬には1210万円(消費税込)という上限額が定められているが、上限に達しない場合に減額されることは否定されていないから、一般に上限に達する可能性が高いとしても、上限の定めは直ちに定額報酬であることに結びつくものではない。また、本件包括外部監査契約及び本件契約には、報告書の内容や分量に応じて報酬額が変動するなど報酬が報告書提出の対価であることをうかがわせる定めは見当たらない。
(3)以上の本件業務の内容や本件契約における報酬の定めからすれば、本件契約は、原告らが一連の監査業務である本件業務を遂行するという債務を負い、これに対して被告が当該業務の遂行の対価として実働時間1時間当たり9900円の報酬を支払う債務を負うことを内容とする準委任契約であり、報告書という成果の完成の対価として報酬を支払う請負契約ないし成果完成型の準委任契約ではないと解するのが相当である。
3 原告Aの実働時間(争点2)について
(1)原告Aは被告とは独立した公認会計士として事務所を営んでいること、公認会計士の専門性に基づき、ヒアリングなどをして資料を収集し、検討して報告書を作成するなどといった監査業務については公認会計士ごとに時間の掛け方は様々であり得ること、被告は原告Aとともに監査業務をした経験がないことからすれば、被告が本件業務を原告Aに委託するに当たりその実働時間を把握することが容易とは言い難いところ、被告は、原告Aに対し、その指定した様式に各日の具体的な執務開始時間、終了時間、執務内容等を入力して毎月被告に提出させ、これに基づいて時間管理をする旨連絡していたことに照らすと、本件契約においては、報酬算定の基礎となる実働時間は基本的に執務時間記録表に基づいて定めることが予定されていたといえる。また、本件包括外部監査契約には被告が得られる監査費用に上限の定めがあることや、被告はY区と合意した執務時間記録表を用いて時間管理をすると述べており、本件包括外部監査契約上、被告はY区に正確な執務時間を申告する必要があると考えられることからすると、被告としては、その執務時間記録表の記録の正確性を確認し、もし原告Aの実働時間数が過大である疑いがあれば、遅くともY区への申告以前に、原告Aに対し、執務時間記録表に記載された実働時間数に異議を述べるのが通常と考えられる。しかるに、被告は、Y区に対し、原告Aの提出した内容に沿って執務時間数を申告している。これらの事情からすると、原告Aが被告に提出したその実働時間数は、その正確性に疑いを生じさせるような具体的事情がない限り、一応正確なものであると信用することができる。
(2)ア これに対し、被告は、原告Aの執務時間記録表にはエクセルの計算が合わなくなるなどの不具合があると主張するが、不具合がその執務時間の計算にどのような影響を与えたのかは明らかでなく、被告主張の不具合が執務時間記録表の信用性を疑わせるとはいうことはできない。
 イ 被告は、原告Aの執務時間記録表には移動時間、執務時間記録の内容の訂正など記録すべきでない部分を記録した点、資料の読み込みや資料収集など執務内容が不明な点、資料返却など通常考えられないほど長時間である点や記録が正確であれば業務効率が悪い点などが多数あるなどと主張する。
   しかし、原告Aの執務時間記録表には各日の執務時間や執務内容が記載されているところ、資料読み込み、資料収集や移動時間、執務時間記録の内容の訂正、資料返却などの時間も本件業務との関連性がある時間と考えられるところ、これらの時間のうちどの範囲を執務時間として計上してよいかについては本件契約上明確に定められていないから、これらの時間を執務時間として記録することが直ちに不合理であるとはいえない。また、被告は、原告Aから執務時間記録表の提出を受けた後遅滞なくその問題点の指摘や是正をしたことは証拠上うかがわれない上、本件契約上、執務時間記録表のほかに時間管理のための資料が求められていたとはいえないことからすると、執務時間記録表の裏付けがないことなどから各日の執務内容が具体的に明らかでないことが直ちにその信用性を疑わせるということはできない。
   また、仮に執務時間記録表が正確であるとすれば原告Aの執務効率が悪いとしても、上記のとおり監査業務については公認会計士ごとに時間の掛け方は様々であり得るところ、被告は原告Aとともに監査業務をした経験はないから、被告が原告Aの業務効率を十分に把握していたとは言い難い。被告は、監査費用の上限があり、また原告Aを監督する立場にあることからすれば、原告Aの業務効率の改善を図るのが通常であると考えられるのに、執務時間記録表の提出を受けていながら、業務効率について改善を図ったことは証拠上うかがわれない。これらの事情に照らせば、執務時間記録表の信用性に疑いを生じさせるほどの業務効率の悪さがあるとは認められない。
 ウ もっとも、原告Aの執務時間は、原告Bの執務時間と比較しても長期間に及んでおり、資料の収集や読み込みなど原告Bが記録していないような業務に関する時間も執務時間として記録している(甲3、4)。しかし、原告Aと原告Bはそれぞれ長年の経験を有する独立した公認会計士として業務を遂行しており、どのような時間について報酬を請求するかは考え方が異なり得るところ、上記認定のとおり原告Bは自らの執務時間を短めに記録していたことや、またそれぞれ異なるサブテーマを割り当てられていたことに照らすと、原告Bの執務時間記録表と原告Aの執務時間記録表を比較して原告Aの執務時間記録が不自然であるとは直ちには言い難い。
 エ 被告の主張はいずれも採用することができない。他に原告Aの執務時間記録表に対してその信用性を疑わせるような具体的事情はない。
(3)以上によれば、原告Aの実働時間は、別紙執務時間記録表に記載のとおり、370.1時間と認められる。
4 原告らの債務不履行の有無(争点3)について
(1)上記1の契約内容に照らすと、原告らは本件業務を遂行する債務を負っており、これに対して被告はその実働時間に応じて報酬を支払う債務を負っているから、原告らがその実働時間に遂行した本件業務に本件契約上の委任の本旨に従ったものであることを否定すべき事情のない限り、被告は、その実働時間に応じた報酬支払義務を負うこととなる。
(2)ア 原告Aがヒアリングメモをほとんど作成しなかったという主張について
   被告は、原告Aにあてたメールにおいて、原告Aが作成したヒアリングメモが「不完全」であり「肉付け修正を、録音データに基づいて」行った方がよい旨述べている。しかし、ヒアリングメモは被告と原告らとの間の内部的なメモにとどまることや、監査一般において必要とされているとは言い難いこと(原告A本人、被告本人)に照らせば、ヒアリングメモのない報告書が一般に監査業務として不相当なものであるとはまではいえない。また、原告Aは一定のヒアリングメモを作成しているところ、ヒアリングメモの程度について、上記メールを送信した一方で、文字起こしのようなヒアリングメモは不要とも供述しており(被告本人)、どの程度記載したヒアリングメモを作成すれば被告の求める程度に足りるのかが必ずしも明らかでない。加えて、ヒアリングメモを作成し、あるいは記載を補充するには、おのずと追加的な時間が必要となる。以上の諸点に照らすと、被告が求める程度のヒアリングメモが作成されていないことから、原告Aが実働時間に遂行した本件業務が委任の本旨に従ったものであることを否定することはできない。
 イ 原告Bが意図的に自身の認識と異なる報告書案を作成しようとしたという主張について
   原告Bが、被告に対して事実の有無が判然としない事実について事実が全くないと記載してから資料をもらったほうが得策であるなどと述べたこと(乙15)が、たとえ不適切なものであったとしても、その発言によって監査や報告の内容が歪められたなどの事情は見当たらないから、原告Bが実働時間に遂行した本件業務が委任の本旨に従ったものであることを否定することはできない。
 ウ 原告らが担当するサブテーマの一部について報告書案を提出しなかったという主張について
   上記認定によれば、被告はサブテーマを監査の結論を出すうえで必須という位置づけではないなどとも述べており、一定のサブテーマが本件業務として確定的に必要なものであったか否かが明確とはいえない上、上記サブテーマについて報告書案を作成するにはおのずと追加的な時間が必要となることに照らすと、上記サブテーマの報告書案が作成されていないとしても、原告らが実働時間に遂行した本件業務が委任の本旨に従ったものであることを否定することはできない。
 エ 原告らが報告書案を完成させるのに必要な修正作業をしなかったという主張について
   通常、報告書案を作成するというその業務の性質に照らすと、何らかの修正作業は発生するものと考えられ、その修正作業にはおのずと追加的な時間が必要となるから、これを実施していないということから直ちに原告らが実働時間に遂行した本件業務が委任の本旨に従ったものであることを否定することはできない。
 オ 原告らの業務は超過利潤にふさわしい内容・品質・価値を満たすものではなかったという主張について
   被告が、本件包括外部監査契約に基づきY区に提出する報告書を完成させるために、原告らが提出した報告書案を修正して自らが主体的に作成し、その名義で提出する文書とすることは、本件契約上当然に予定されていると考えられる。したがって、被告が修正した報告書の分量が著しく増えたり、修正作業に多くの時間を費やしたりしたとしても、そのことから直ちに原告らが実働時間に遂行した本件業務が委任の本旨に従ったものであることを否定することはできない。
   他に原告らが実働時間に遂行した本件業務に被告主張の内容、品質、価値を満たさない具体的な点は明らかでなく、被告の主張は採用できない。
(3)以上によれば、原告らの実働時間に遂行した本件業務に委任の本旨に従ったものであることを否定すべき事情はなく、被告は、実働時間に応じた報酬の支払義務を免れない。
5 本件契約上の報酬の上限の定めの有無(争点4)について
(1)本件契約は、本件包括外部監査契約を前提とするところ、同契約には、報酬額の上限が1210万円と定められており、この金額については原告Aも認識している上(原告A本人)、本件契約上の報酬額の定めは、本件包括外部監査契約を踏襲した内容であることが認められ、これらの諸点からすれば、報酬額がおよそ無限定なものであったものとは言い難いところである。また、被告は、本件契約の際、原告らに対し、予定時間数は200時間としてスタートする旨を連絡しており、その後、予定時間数は増加していないことに照らすと、200時間に対応する報酬額が上限であったとも考えられる。
(2)しかし、上記認定のとおり、本件契約については本件包括外部監査契約とは異なり契約書が作成されておらず、明示的な上限の定めがあったとはいえない上、被告は報酬額の上限を明示的に連絡せず、200時間についても「スタート」としか伝えていないこと、担当のサブテーマが定まったのはその1か月以上後であることからすると、200時間という時間数については本件契約の締結時には不確定な要素があったということができる。また、被告は執務時間の半数を報告書の作成に充てる旨原告らに伝えていたところ、その後令和4年11月末時点での原告Aの執務時間は125.4時間に達し、その段階で報告書の作成を始めていたことは執務時間記録表からはうかがわれないのに、被告が原告Aの執務時間について予定時間数内に抑えるよう試みるなどの調整をしておらず、注視していたにすぎない(甲3、被告本人)から、上限の定めに基づく行動をしていたとは言い難い。これらの事情に照らせば、監査費用に包括外部監査人とその補助者の合計で1210万円という上限があり、本件契約にもこれに沿う形で何らかの上限の定めがあった可能性はあるとしても、200時間という時間数については、単なる目安にすぎず、明確な報酬額の上限ではなかった可能性を否定することはできない。
(3)以上によれば、本件契約上、報酬額の基礎となる実働時間数が200時間を上限とする旨合意されたとまでは認められない。
6 以上によれば、原告らの報酬額は実働時間に1時間当たり9900円を乗じた額であるところ、原告Aの実働時間は370.1時間、原告Bの実働時間は、127.75時間であるから、報酬額は、原告A366万3990円、原告B126万4725円である。これから既払額(原告A97万7480円、原告B53万8740円)を控除すれば、未払報酬は、原告A268万6510円、原告B72万5985円となる。
7 よって、原告らの請求にはいずれも理由がある。

東京地方裁判所民事第37部
裁判官 中原隆文

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