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解説記事2025年09月29日 未公開裁決事例紹介 暗号資産の円換算額の益金算入を巡る裁決(2025年9月29日号・№1092)

未公開裁決事例紹介
暗号資産の円換算額の益金算入を巡る裁決
審判所、資金決済法上不適法でも交換業務は有効


〇仮想通貨(令和元年の資金決済法の改正で「暗号資産」に変更)の交換業者の登録申請をしていない請求人が、自身が仮想通貨を発行し、その対価として顧客から別の仮想通貨を受領した際の円換算額が益金に算入されるかどうかが争われた裁決(東裁(法)令6第61号)。国税不服審判所は、仮に資金決済法に照らして不適法であったとしても、取引は請求人と顧客との間で有効なものとして取り扱われ、請求人が現実にその利得を支配管理しており、また、請求人は当該受領した仮想通貨を返還等する義務などを負っていないことから、当該円換算額は、取引をした日にその収入すべき権利が確定したと認められ、法人税の所得の金額の計算上、益金の額に算入されるとの判断を示した。

主  文

 審査請求をいずれも棄却する。

基礎事実等

(1)事案の概要
 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が発行した、請求人独自の新規仮想通貨に係る譲渡対価として顧客から受領した別の仮想通貨について、当該別の仮想通貨の円換算額を益金の額に算入せずに法人税等の期限後申告をしたところ、原処分庁が、当該顧客から受領した別の仮想通貨は、当該新規仮想通貨を当該顧客に引き渡した時に収益とすべき権利が確定しているから、当該円換算額は、益金の額に算入されるなどとして法人税等の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、当該顧客と行った取引は不適法な取引であり、収益は実現していないから、当該円換算額は益金の額に算入されないなどとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。
(2)関係法令(略)
(3)基礎事実

 当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
 イ 請求人について
(イ)請求人は、仮想通貨の企画、開発、発行、売買、仲介、斡旋及び管理等を目的とする法人である。
(ロ)請求人は、資金決済法第63条の3に規定する仮想通貨交換業者の登録申請書を提出しておらず、資金決済法第63条の2に規定する仮想通貨交換業者の登録を受けていないことから、資金決済法第2条第8項に規定する仮想通貨交換業者ではない。
 ロ 請求人独自の新規仮想通貨の発行について
(イ)請求人は、平成29年7月1日から平成30年6月30日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)において、新規の仮想通貨の発行による資金調達の方法である、いわゆるICO(Initial Coin Offeringの略)により、資金決済法第2条第5項第2号に掲げる仮想通貨に該当するものとして「×××」と称する請求人独自の新規仮想通貨(以下「×××」という。)を発行し、複数の投資家である顧客らから、×××の対価として仮想通貨であるイーサリアム(以下「ETH」という。)を受領した(以下、請求人と顧客らとの間の×××に係る各取引を「本件各取引」といい、本件各取引を行った当該顧客を「本件各顧客」という。)。
(ロ)請求人は、×××の発行に際し、請求人が開設するウェブサイトに公開した「××××××」、「××××××」及び「××××××」(以下、これらを併せて「本件各ホワイトペーパー」という。)に基づいて本件各取引を行っていたところ、本件各ホワイトペーパーには、請求人が開発するアプリケーションの概要等が記載されており、また、×××の発行によるICOに関しては、要旨別紙のとおり記載されている。
  なお、別紙で定義した略語については、以下、本文においても使用する。
(ハ)××××××は、平成30年7月18日付で、請求人に対し、本件各取引は、資金決済法上の仮想通貨交換業に該当するものと考えられることから、×××の販売を直ちに中止する措置及び無登録販売という違法な取引を是正するための措置(例えば、既に行われた販売行為により本件各顧客から集めた対価を返還するなどの措置が考えられるが、これに限らない。)を直ちに講じる必要があるなどと記載した書面を送付した。
(4)審査請求に至る経緯
イ 請求人は、本件事業年度の法人税について、別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、また、平成29年7月1日から平成30年6月30日までの課税事業年度(以下「本件課税事業年度」という。)の地方法人税について、別表2の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも令和3年8月10日に申告した。
ロ 原処分庁は、請求人に対し、請求人が本件各顧客から本件各取引の対価として受領した合計1,667.140093ETHについては、請求人が本件各顧客に×××を引き渡した時に売買の合意が成立し、収益とすべき権利が確定していることから、当該ETHの合計を本件各取引の取引日(以下「本件各取引日」という。)における交換レートにより円換算した金額126,232,399円(以下「本件円換算額」という。)は益金の額に算入されることなどを理由として、令和5年8月29日付で、別表1及び別表2の各「更正処分等」欄のとおり、本件事業年度の法人税及び本件課税事業年度の地方法人税の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び無申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、令和5年11月17日、原処分の一部について不服があるとして審査請求をした。

争点および主張

 本件円換算額は、本件事業年度の法人税の所得の金額の計算上、益金の額に算入されるか否か。(編注:争点についての主張はのとおり)

【表】争点についての主張

原処分庁 請求人
 本件各取引は、本件各顧客が×××を購入するために請求人にETHを送付し、これに基づき請求人が本件各顧客に×××を引き渡した時に、請求人と本件各顧客との間で売買の合意が成立し、収益とすべき権利が確定したものと認められる。
 仮に、本件各取引が資金決済法に照らして不適法であったとしても、本件各取引は、本件各ホワイトペーパーに基づいて×××の売買が行われ、請求人と本件各顧客との間において売買取引が有効なものとして取り扱われており、これにより、代金の授受がされた結果、現実に所得が生じていると認められる。
 したがって、本件円換算額は、請求人が×××を本件各顧客に引き渡した日である本件各取引日の属する本件事業年度の法人税の所得の金額の計算上、益金の額に算入される。
 仮想通貨交換業者ではない請求人が行った本件各取引は、資金決済法に照らして不適法であり、請求人と本件各顧客との間の売買契約は無効であるから、売買取引は成立していない。
 そして、請求人が本件各顧客から受領したETHの合計は、××××からの、仮想通貨交換業者の登録を受けずに行った仮想通貨の売買は資金決済法に違反するから、返還する等の措置を講ずるようにとの指導に基づき、本件各顧客に返還すべき性質のものである。
 したがって、本件円換算額は、「預り金」として処理するものであり、本件事業年度において、収入すべき権利は確定していないことから、収益が実現しておらず、本件事業年度の法人税の所得の金額の計算上、益金の額には算入されない。

審判所の判断

(1)法令解釈
イ 課税所得は専ら経済的に、又は実質的に把握すべきものであり、その原因となる行為が有効なものか無効なものか等には関係なく、現実にその利得を支配管理し、自己のためにそれを享受して、その担税力を増加させている以上は、担税力に即した公平な税負担の配分という見地から、課税の対象とすべきであると解される。
  すなわち、税法の見地においては、課税の原因となった行為が、厳密な法令の解釈適用の見地から客観的評価において不適法又は無効とされるかどうかは問題ではなく、当該行為が関係当事者間において有効なものとして取り扱われ、これにより、現実に課税の要件事実が満たされていると認められる場合である限り、当該行為が有効であることを前提として租税を賦課徴収することは何ら妨げられないものであると解される。
ロ 法人税法第22条第2項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする旨規定し、同条第4項は、当該事業年度の収益の額は、公正処理基準に従って計算されるものとする旨規定しているところ、ある収益をどの事業年度に計上すべきかは、公正処理基準に従うべきであり、これによれば、収益は、その実現があった時、すなわち、その収入すべき権利が確定したときの属する事業年度の益金に計上すべきものであると解される。
(2)認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ 本件各顧客は、×××を取得するために、本件各ホワイトペーパーを見るなどして、請求人が開設するウェブサイトにアカウントを登録し、本人確認書類のアップロードを行った。そして、請求人による本人確認を終えた後、本件各顧客は、本件各取引日に、請求人の指定するコントラクトアドレスに本件各取引の対価としてETHを送付した。
  それにより、請求人は、本件事業年度に、本件各顧客から合計1,667.140093193ETH(以下「本件ETH合計」という。)を受領した。
  なお、本件ETH合計を本件各取引日の交換レートにより円換算した金額は、本件円換算額と同額である。
ロ 本件各顧客が、請求人の指定するコントラクトアドレスにETHを送付すると、自動的に本件各顧客が登録したウォレットに×××が送付された。
ハ 請求人は、本件各顧客に対し、本件ETH合計の返還又は本件円換算額の返金の義務を負っていない。また、請求人が、本件各顧客に対し、本件ETH合計の返還等をするなどと周知した事実や返還等をした事実も認められない。
ニ 本件各取引において、請求人は、本件各顧客に対し、請求人が開発するアプリケーションのサービス稼働や×××の国内取引所等への上場などの具体的な履行義務を負っていない。
(3)検討
 イ はじめに

 争点の判断に当たり、本件各取引によって、請求人が受領した本件ETH合計は課税の対象になるか否かを検討した上で、本件円換算額が本件事業年度の益金の額に算入されるか否かを検討する。
 ロ 本件各取引によって、請求人が受領した本件ETH合計は課税の対象になるか否かについて
 請求人は、上記のとおり、本件各取引に係る取引条件等が記載された本件各ホワイトペーパーを請求人が開設するウェブサイトに公開し、本件各ホワイトペーパーに基づいて本件各取引を行っていた。
 一方、本件各顧客は、上記(2)のイのとおり、本件各ホワイトペーパーを見るなどした上で、請求人が開設するウェブサイトに本人確認書類のアップロード等を行い、請求人による本人確認を終えた後、請求人の指定するコントラクトアドレスに本件各取引の対価としてETHを送付した。そして、上記(2)のロのとおり、本件各顧客が、ETHを送付すると、本件各顧客のウォレットに×××が自動的に送付されていた。
 以上の事実関係に照らせば、本件各取引は、本件各ホワイトペーパーに基づいて請求人が×××を本件各顧客に引き渡すことを約し、本件各顧客がこれに対してその対価として請求人にETHを送付したものといえ、そうすると、請求人と本件各顧客との間では、売買取引が有効なものとして取り扱われていたものと認められる。
 そして、請求人は、本件ETH合計を本件各取引の対価として、請求人の指定するコントラクトアドレスにおいて受領しており、また、上記(2)のハのとおり、請求人は、本件各顧客に対し、本件ETH合計などの返還等の義務を負っていないことから、その利得を支配管理し、自己のためにそれを享受して、その担税力を増加させていた。
 したがって、本件各取引によって、請求人が受領した本件ETH合計は課税の対象になる。
 ハ 本件円換算額が本件事業年度の益金の額に算入されるか否かについて
 上記(2)のイ及びロのとおり、本件各顧客から請求人への本件ETH合計の送付及び請求人から本件各顧客への×××の引渡しは、本件各取引日に本件各取引日の交換レートで行われているところ、同ハ及びニのとおり、本件各取引において、請求人が本件各顧客に対し、本件ETH合計などを本件各顧客に返還等をする義務を負っておらず、また、その他未履行となっている具体的な義務もない。そうすると、本件ETH合計については、本件各取引日において、収益の実現があったとして、その収入すべき権利が確定したものと認められる。
 したがって、本件ETH合計を本件各取引日における交換レートにより円換算した本件円換算額は、本件各取引日の属する本件事業年度の法人税の所得の金額の計算上、益金の額に算入される。
(4)請求人の主張について
 請求人は、上記のとおり、本件各取引は、資金決済法に照らして不適法であり、請求人と本件各顧客との間の売買契約は無効であるから、売買取引は成立しておらず、また、本件ETH合計は××××からの指導に基づき本件各顧客に返還すべきものであるから、本件円換算額は預り金であり、本件事業年度の法人税の所得の金額の計算上、益金の額に算入されない旨主張する。
 しかしながら、仮に、本件各取引が資金決済法に照らして不適法であり、請求人と本件各顧客との間の売買契約が無効であったとしても、上記(3)のロ及びハのとおり、請求人と本件各顧客との間では、本件各取引が有効なものとして取り扱われ、請求人が現実にその利得を支配管理するなど、本件ETH合計は課税の対象となるといえるから、本件円換算額は、課税の対象として、本件事業年度の法人税の所得の金額の計算上、益金の額に算入される。
 したがって、請求人の主張には理由がない。
(5)原処分の適法性について
 イ 本件各更正処分の適法性について

 上記(3)のとおり、本件円換算額は、本件事業年度の法人税の所得の金額の計算上、益金の額に算入されるから、これに基づき、本件事業年度の所得金額及び納付すべき法人税額並びに本件課税事業年度の課税標準法人税額及び納付すべき地方法人税額を計算すると、いずれも本件各更正処分の金額と同額と認められる。
 また、本件各更正処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件各更正処分はいずれも適法である。
 ロ 本件各賦課決定処分の適法性について
 上記イのとおり、本件各更正処分はいずれも適法であるところ、本件事業年度の法人税及び本件課税事業年度の地方法人税に係る各期限内申告書の提出がなかったことについて、国税通則法(令和4年法律第4号による改正前のもの。以下同じ。)第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められず、また、本件各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに、その本件各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、同条第5項において準用する同法第65条《過少申告加算税》第4項第1号に規定する正当な理由があると認められるものがある場合に該当しない。
 そして、当審判所においても、本件各賦課決定処分の額は、別表1及び別表2の各「更正処分等」欄の「無申告加算税の額」欄といずれも同額であると認められる。
 したがって、本件各賦課決定処分はいずれも適法である。
(6)結論
 よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり裁決する。

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