カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2025年10月06日 ニュース特集 取締役による同族会社への無利息貸付けで行為計算否認(2025年10月6日号・№1093)

ニュース特集
今後は拡がる可能性も、納税者は慎重な判断が必要
取締役による同族会社への無利息貸付けで行為計算否認


 同族会社の代表取締役等が、会社の運営資金として低利もしくは無利息で同族会社に貸付けることは今でも実際に行われているところだ。ただ、令和6年以降、同族会社に対する無利息等による貸付けに対し、課税当局が同族会社の行為計算否認規定(所法157条1項)を適用して当該取引を否認し、国税不服審判所の裁決事例でもこれを追認する事例が散見されている。審判所が9月30日に公表した裁決事例では、同族会社の取締役が無利息でおよそ23億円を貸し付けたが、経済的合理性を欠くものであったとして課税当局の同族会社の行為計算否認規定の適用を認めている(名裁(所)令6第39号)。いわゆるパチンコ平和事件以降も、同族会社の無利息等による貸付けで裁判や裁決で大きく争われた事案がほとんどなかっただけに今後の動向が注目される。

パチンコ平和事件の判決以降も無利息貸付けへの課税処分は拡がらず

 同族会社の取締役が同社に無利息貸付けを行い、未発生の利息収入に対して課税される事案が発生した。いわゆるパチンコ平和事件と同種の事案である。
 同事件は、同族会社の株主でもある代表取締役が同社に3,455億円を無利息で貸し付けたが、課税当局が同族会社の行為計算否認規定を適用し、利息が生じたものと認定し、雑所得の額を約141億円とする更正処分及び過少申告加算税賦課決定を行ったもの。控訴審では、同族会社の行為計算否認規定を認めた上で、原審の認定した利率を修正して確定した(最高裁では、過少申告加算税の賦課決定処分のみ争われ、適法と判断)(最高裁平成16年7月20日第三小法廷判決(集民214号1071頁))。
 パチンコ平和事件の判決以前は、個人が同族会社の支援のために無利息等による貸付けが行われたとしても、その未収入の利息に対する課税は一般的には皆無であっただけに、同事件の判決は実務において大きなインパクトを与えたものとなった。しかし、その後、同族会社に対する無利息等による貸付けに対する課税強化が行われることになったかといえばそうではなく、同種の事案に対して否認し、裁判や裁決で争われた事案はほぼなかったといえる。
最近になって否認事例が散見
 パチンコ平和事件に関しては、3,455億円にものぼる巨額の貸付けであった点などの特殊性を指摘する声もあるが、ここに来て個人が同族会社の支援のために無利息等で貸付けを行った取引を否認する事案が出てきている。

貸付けの目的、金額、期間等の融資条件、無利息の理由を総合的に判断

 今回、審判所が公表した裁決事例は、同族会社(資産管理会社)の取締役である請求人が、同社に行った無利息貸付けに対し、原処分庁が同族会社の行為計算否認規定により、当該貸付けにより請求人が収受すべき利息相当額が雑所得になるとして更正処分等を行ったため、請求人が原処分の全部の取消しを求めたものである。
 請求人は、同族会社が銀行からの借入金を返済するため、約23億4,000万円を無利息及び無担保で、返済期限なく貸し付けていた。
 請求人は、貸付けを無利息としたのは、①役員の同族会社に対する貸付けは無利息で行われるのが一般的であったこと、②請求人の自己資金を用いて実行したものであること、③同族会社は平成30年2月末日時点で債務超過であったこと、④同族会社の主な収入源はP社(不動産会社)からの配当金であったところ、当時の事業環境は急速に悪化しており、安定して多額の配当金が支払われることを見込める状況になかったことを考慮したものであったと主張した。
債務超過も、翌期以降は資産超過に転じる
 審判所は、所得税法157条1項にいう「所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは、同族会社等の行為又は計算のうち、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものであって、所得税の負担を減少させる結果となるものをいうと解するのが相当であるとし、株主等からの同族会社等に対する金銭の無利息貸付けが経済的合理性を欠くものであるかどうかについては、貸付けの目的、金額、期間等の融資条件、無利息としたことの理由等の諸事情を総合的に考慮して判断すべきであるとの見解を示した。
 その上で審判所は、本件貸付けはおよそ23億4,000万円という多額に及ぶ金銭を、無利息、無期限、無担保で貸し付けるものであって、その融資条件は、独立かつ対等で相互に特殊の関係のない当事者間で通常行われる取引とは大いに異なるとした。また、設立から令和5年2月期までにおける同族会社の収入は、そのほとんどがP社の株式の配当金であるところ、同族会社は、平成30年2月期は融資契約の組成に伴う約6,600万円のアレンジメントフィー等の支払によって経常損失を計上したものの、本件貸付けの日である平成30年6月29日当時においては、同族会社にP社から約1億2,700万円の配当金が支払われることが見込まれており、その後も同族会社の受取配当金は年間約2億5,700万円になっているとした。
 これに伴い同族会社の純資産合計は、平成30年2月末日時点では債務超過であったものの、平成31年2月末日時点には資産超過に転じて、その後は大幅に増加していることからすると、本件貸付けの当時、無利息としなければ同族会社に倒産の危険があったとはいえず、請求人が同族会社に対して無利息で本件貸付けをすることに合理的な理由を見出すことはできないと指摘。審判所は、これらの諸事情を総合すると、本件貸付けを無利息にしたことは、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものであって、請求人の所得税の負担を減少させる結果となるものであるとの判断を示し、請求人の主張を斥けた。

今後もユニバーサルミュージック事件の最高裁判決を踏まえて判断

 取締役等を務める者から同族会社に無利息等で貸し付けた裁決事例は、本誌の調べでは本件以外に「大裁(所)令5第47号」及び「東裁(所)令5第120号」がある。いずれも令和6年以降の裁決だ。前者は本誌1065号で紹介した「税制改正で社債を貸付金に、所得税の負担増加を回避と推認」であるが、いずれも請求人の請求が棄却されたものとなっている。今のところ審査請求で争われた事案は3件にすぎないが、これまで争われた事案がなかったことを考えると、従来とは異なり、同族会社に対する無利息貸付けで争われる事案も今後は多くなる状況が推測される。
 納税者においては、同族会社への無利息貸付け等がすべて同族会社の行為計算否認規定の射程範囲に入るのか気になるところではあるが、審判所は、同族会社に対する無利息等の貸付けがすべて否認されるわけではないと話す。今回公表された裁決事例も、一時は債務超過であったものの、翌期以降は保有する株式からの配当が十分に入る状況であったことが明らかであったため無利息とする理由がなかったと判断されたものとなっている。今回の審判所の判断は、令和4年4月21日の最高裁判決(ユニバーサルミュージック事件)を踏襲したものであり(下記参照)、今後も同種の事案については、この最高裁判決の判断枠組みに沿って判断するとの見解を示しており、納税者においては慎重な判断が求められることになりそうだ。
 なお、ユニバーサルミュージック事件は、法人間における同族会社の行為計算否認の可否が争われたものだが、審判所は、法令解釈において違いはないとしている。

ユニバーサルミュージック事件における最高裁判断の枠組み
 企業の組織再編の一環として行われた資金調達を巡り同族会社の行為計算を否認した課税処分を不服として、大手レコード会社であるユニバーサルミュージックが処分の取り消しを求めた事件であり、同族会社の行為計算否認規定(法人税法132条1項)の適用の是非が争われた(本誌801号、841号、929号、945号等参照)。一審及び二審で敗訴した国が上告していたが、令和4年4月21日、最高裁で上告が棄却され、国の敗訴が確定した(令和2年(行ヒ)第303号)。
 最高裁判所第一小法廷(岡正晶裁判長)は、法人税法132条1項の不当性要件の判断枠組みについて、以下の通り判示している。
 「同項(編注:法人税法132条1項)にいう『これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの』とは、同族会社等の行為又は計算のうち、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものであって、法人税の負担を減少させる結果となるものをいうと解するのが相当である。(中略)そして、当該一連の取引全体が経済的合理性を欠くものか否かの検討に当たっては、①当該一連の取引が、通常は想定されない手順や方法に基づいたり、実態とはかい離した形式を作出したりするなど、不自然なものであるかどうか、②税負担の減少以外にそのような組織再編成を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するかどうか等の事情を考慮するのが相当である。」

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索