カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2025年11月03日 SCOPE 合理的な注文方法等だけでは、誘引目的は直ちに否定されず(2025年11月3日号・№1097)

東京地裁、相場操縦に係る課徴金を適法と判断
合理的な注文方法等だけでは、誘引目的は直ちに否定されず


 相場操縦に係る課徴金6億8,424万円の納付命令決定を受けた原告(香港ファンド)がその取り消しを求めていた裁判で東京地裁は令和7年6月27日、課徴金納付命令決定は適法であるとして原告の訴えを棄却した。本件では、原告が大引け前の30秒間に919万8,100株の買い注文を成行又は直前約定値より相当な高指値により連続的に行った取引について、金商法所定の誘引目的の有無が争点となっていた。この点に関し原告は、本件取引は自然の需給関係に基づく合理的なものであることなどから誘引目的は認められないと主張していた。これに対し東京地裁は、合理的な注文方法等であるということだけでは誘引目的が直ちに否定されるものではないと指摘。本件取引は人為的な操作を加えて相場を変動させる意図があり、誘引目的をもって行われたと判断している。

人為的操作で相場を変動させる意図があったとして誘引目的と認める

 本件の発端は次のような取引である。香港ファンドである原告は、平成25年9月25日午後2時59分30秒から午後3時までの30秒間(以下「本件期間」)に本件株式合計919万8,100株の買い注文を成行又は直前約定値より相当な高指値により連続的に行った(以下「本件取引」)。これにより本件株式の価格は約30秒間で6,690円から7,540円へと高騰してストップ高となった。本件期間の原告の買付関与率は約70%であった。この本件取引に対し金融庁は、金商法159条2項1号(現実取引による相場操縦の禁止)に違反したとして、原告に対して課徴金6億8,424万円の納付を命じる決定をしていた。
誘引目的の有無が争点に
 本件訴訟の争点は、本件取引に誘引目的(金商法159②柱書き)があったか否かという点であった。この点に関し原告は、日経平均新規採用銘柄である本件株式の銘柄入替前日における本件取引は自然の需給関係に基づくものであること、大引けにかけての時間帯に発注するなどした本件取引は合理的であったことなどを指摘。原告の買い注文により市場参加者が誤認したことはなく取引を誘引された者もいなかったから、原告に誘引目的は認められないと主張して課徴金納付命令決定の取り消しを求めた。
取引の動機や認識等を総合勘案して判断
 東京地裁はまず、誘引目的が認められるか否かは人為的な操作を加えて相場を変動させる意図があるか否かを中心に検討すべきであり、その意図があるか否かは取引の内容や態様、取引の前後の事情等のほか、取引の動機その他行為者の認識等を総合的に勘案して判断すべきとした。また、有価証券の売買取引を行うこと自体に現実の需要があることや、「ある投資者にとって」リスクを最小化し、あるいは利益を最大化させるという観点から最適な又は合理的な注文方法等であるということだけでは、誘引目的が直ちに否定されるものではないという判断を示している。
 そして本件取引について東京地裁は、客観的にみて相場を支配し、売り注文を買いさらって株価を上昇させて終値を高値に形成したものであることなどを認定した(参照)。

【表】本件取引の内容や態様・動機その他原告の認識等(裁判所による認定事実)

・原告は、本件期間の直前までにかけて各証券会社との間で積極的に引値保証取引を締結し、銘柄入替えに伴う買い需要の大半を原告一社に集中させ大口トレーダーとなり、本件株式の買い注文の時期、数量、価格や方法をコントロールすることにより相場を支配することのできる地位を得たうえで、原告が相場を支配して終値の価格上昇を引き起こすことが可能となり得る状況を人為的に作り出した。

・原告は、大引けまでの30秒間という短い時間である本件期間中、合計919万8,100株もの大量の買い注文を成行又は直前約定値より相当な高指値により連続的に行ったものであり、本件取引は、相場を支配して売り注文を買いさらって株価を上昇させて終値をストップ高の高値に形成したものであった。

・原告は、本件取引が株価を高値に形成するなど、終値に多大な影響を与える蓋然性の高いものであることはもとより、相場操縦に当たる行為として規制の対象となり得るものであることを十分認識していた。

・原告は、マーケット・インパクトを抑えることができる引け条件付き買い注文を一切行わず、本件株式の株価を上昇させ、終値を高値に形成する蓋然性が極めて高い本件取引をあえて行ったものであり、利益の最大化を優先して、株価を変動(上昇)させる意図ないし動機の下、本件取引を行ったことがうかがわれる。

 また、原告がマーケット・インパクトを相対的に抑えることができる引け条件付きの買い注文を一切出さずに、終値を高値に形成する蓋然性が極めて高い本件取引をあえて行ったのであるから、利益の最大化を優先して株価を上昇させる意図ないし動機の下、本件取引を行ったことがうかがわれるとした。
 これらの事情を踏まえ東京地裁は、本件取引に当たり、原告には人為的な操作を加えて相場を変動させる意図があったものと認められ、本件取引は誘引目的をもって行われたものと認めることができると判断したうえで、原告は誘引目的をもって変動取引を行ったものと認められることから課徴金納付命令決定は適法であると結論付けた。

日経平均構成銘柄の入替えで機関投資家の需要が発生
 本件株式(日東電工の株式)については、平成25年9月26日に日経平均構成銘柄に採用される旨が日本経済新聞社から同月6日の大引け後に公表されていた。日経平均を指数とするインデックス・ファンドでは、日経平均構成銘柄が変更されるとそのファンドにおける構成銘柄も入れ替える必要が生じる。このときファンドは、新規採用銘柄について代金額を「採用日前日の終値」、引渡時期を「採用日前日の取引所の立会時間終了後」とする「引値保証取引」を証券会社やファンドなどと締結することが多い。本件で香港ファンドである原告は、証券会社5社との間で本件株式1,517万3,000株を引き渡す旨の引値保証取引に合意していた。これは、本件銘柄入替えに伴い予想される本件株式の想定買入株数の約8割にものぼる規模であった。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索