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解説記事2020年04月27日 税務マエストロ 区分記載請求書等保存方式(その1)(2020年4月27日号・№832)

税務マエストロ
区分記載請求書等保存方式(その1)
#245
 税理士 熊王征秀


略歴学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。現在東京税理士会会員相談室委員東京税理士会調査研究部委員東京地方税理士会税法研究所研究員日本税務会計学会委員大原大学院大学教授

※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。
 ta@lotus21.co.jp

マエストロの解説

 改正前の消費税法では、法定事項が記載された帳簿と請求書等を保存すること(請求書等保存方式)が仕入税額控除の要件とされていた。しかし、軽減税率制度が導入された場合には、旧法による記載要件では適正な仕入控除税額の計算が困難となることから、新たにインボイス制度を導入することとなった。
 ただし、軽減税率制度がスタートする令和元年10月1日から令和5年9月30日までの4年間は、適格請求書等(日本型インボイス)に移行するための準備期間として、従来の請求書等に若干の記載事項を追加した「区分記載請求書等」の保存により、仕入税額控除を認めることとしている。また、令和5年10月1日以降の取引については適格請求書発行事業者登録制度を創設し、原則として「適格請求書発行事業者」から交付を受けた「適格請求書」又は「適格簡易請求書」の保存を仕入税額控除の要件とすることとしている。

 今月は、新たに導入された「区分記載請求書等保存方式」について、「帳簿」と「請求書等」の記載要件と追記の方法を確認する。

1 帳簿の記載要件と追記事項

 令和元年10月1日以後においても、法定事項が記載された帳簿の保存が仕入税額控除の要件とされており、帳簿には、旧法における記載事項に加え、軽減対象資産である旨を追記することが義務付けられている(消法30⑦⑧、平成28年改正法附則34②)。
(1)帳簿の記載事項

(2)帳簿の追記方法
 国税庁公表の経理・申告ガイド(消費税の軽減税率制度に対応した経理・申告ガイド~区分経理(記帳)から消費税申告書作成まで~令和元年6月国税庁発行)の2ページでは、帳簿への追記の方法として次のような記載例を載せている。

・軽減税率対象品目に「※」や「☆」などの記号を記載する。ただし、帳簿の欄外などに記号が軽減税率対象品目であることを明らかにしておく必要がある。
・税率区分欄を設け、「8%」と記載する方法や税率コードを記載する。

(3)少額取引の特例
 区分記載請求書等保存方式の下でも、3万円未満の少額な取引や自動販売機からの購入など、請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由があるときは、必要事項を記載した帳簿を保存することにより、仕入税額控除の要件を満たすこととなる(消法30⑦、消令49①)。

2 区分記載請求書等の記載要件と追記事項

 令和元年10月1日以後においても、請求書、納品書、領収書、仕入明細書、仕入計算書などの書類について、旧法における記載事項に加え、「軽減税率対象品目である旨」と「税率ごとの税込取引金額」を追記し、保存することが義務付けられている(消法30⑦⑨、平成28年改正法附則34②)。
(1)区分記載請求書等の記載事項

(2)記載事項に不備があった場合
 区分記載請求書等には、「軽減税率対象品目である旨」及び「税率区分ごとの税込取引金額」の記載が義務付けられている。ただし、軽減税率制度の導入は事業者にとっても初めての経験であり、中小零細企業ではうっかりミスによる記載漏れが発生することも十二分に考えられるところである。そこで、改正により新たに記載が義務付けられた項目について記載漏れがあった場合には、請求書等の交付を受けた事業者が、事実に基づき追記することが認められている(平成28年改正法附則34③)。
 したがって、記載事項に瑕疵がある請求書等を受け取ったとしても、仕入先に再発行を依頼する必要はなく、購入者サイドでは、記載漏れとなっている事項を追記した請求書等を保存することにより、仕入税額控除の適用を受けることができる。
(3)追記が認められない場合
 追記が認められるのは、「軽減税率対象品目である旨」及び「税率区分ごとの税込取引金額」だけである。よって、仕入先の名称や取引年月日、取引金額についてまでも追記を容認するものではない。
 令和元年11月22日に公表され、令和2年1月に再更新された国税庁の資料「事業者の皆様へ(~区分経理から消費税申告書の作成まで~)」(以下「国税庁資料」という)の2 ページには、区分記載請求書等の記載事項③の「取引内容」についての追記は認めない旨が注意書きで記載されている。よって、領収証の但書きが空欄の場合や「品代」と記載されている場合には、そもそもが改正前の記載要件を満たしていないため、この時点で仕入税額控除は認められないことになるようだ。
 ところで、「取引内容」に関する記載事項であるが、帳簿については「課税仕入れに係る資産又は役務の内容」、請求書等については「課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容」と規定されており、その内容は同一となっている(消法30⑧Ⅰハ、消法⑨Ⅰハ)。
 一方、平成8年9月6日付で国税庁から公表されている「仕入税額控除の要件における「帳簿」の記載方法等について」では、一取引で複数の種類の商品を購入した場合の記帳方法について、下記のように例示している。

 要するに、ある程度までの記載の省略は認めるものの、まったく内容が判別できないような書き方は認めないということである。そうすると、文房具と飲料を購入した際に受領した領収書の摘要欄に「品代」と記載されている場合には、たとえ内訳を確認して追記をしても仕入税額控除は認められないことになるのに対し、「文房具等」と記載されている場合には、内訳を確認し、「文房具(10%)××円・飲料(8%)××円」と追記することで、仕入税額控除ができそうである。一方で、上記の(問3)はあくまでも「帳簿」の記載方法であるから、請求書等の記載方法についてまで準用することはできないという解釈もあるものと思われる。
 そもそもが不完全な請求書等を追記(補正)するときに、日付や金額の記載要件ならまだしも、取引内容についてまで厳格に取り扱う必要があるのだろうか? 売り手に再発行を依頼するのはあまりにも負担が大きいので、取引内容の記載要件についてだけは、ある程度の柔軟な対応を期待したいところである。
(4)区分記載請求書等の記載方法
 区分記載請求書等には、軽減税率対象品目である旨が客観的にわかる程度の記載がされていればよいこととされているので、個々の取引ごとに適用税率を記載する場合のほか、次のような記載方法によることも認められる(軽減税率Q&A(制度概要編)問13)。

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TEL:03-5281-0020 FAX:03-5281-0030 e-mail:ta@lotus21.co.jp
※なお、内容によっては回答いたしかねる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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