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解説記事2025年12月15日 未公開裁決事例紹介 最高裁令和4年判決後初の不動産を巡る総則6項裁決(2025年12月15日号・№1103)

未公開裁決事例紹介
最高裁令和4年判決後初の不動産を巡る総則6項裁決
租税負担軽減の意図を認め鑑定評価額を支持


○不動産取得事案としては最高裁令和4年4月19日第三小法廷判決で示された評価通達総則6項の判断枠組みを用いた初の裁決(令和7年1月10日・東裁(諸)令6第103号)。審判所は、不動産取得の急速性や相続人の関与状況などを踏まえたうえで、①本件各不動産の取得・借入れにより相続人らの相続税負担は著しく軽減され、また、②本件各不動産の取得・借入れは相続人らの租税負担の軽減を意図して行われたものであるから、「実質的な租税負担の公平に反するというべき事情」があるとして、評価通達総則6項を適用した不動産鑑定評価額による課税処分を支持した(本誌1100号10頁参照)。

主  文

 審査請求をいずれも棄却する。

基礎事実等

(1)事案の概要
 本件は、審査請求人×××、同×××及び同×××(以下、順に「請求人×××」、「請求人×××」及び「請求人×××」といい、これら3名を併せて「請求人ら」という。)が、相続により取得した不動産の価額を財産評価基本通達の定める方法により評価して相続税の申告をしたところ、原処分庁が、一部の不動産の価額は同通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められるとして、別途実施した鑑定による評価額に基づいて相続税の各更正処分等をしたのに対し、請求人らが原処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2)関係法令等
イ 相続税法(令和5年法律第3号による改正前のもの。以下同じ。)第22条《評価の原則》は、同法第3章《財産の評価》で特別の定めのあるものを除くほか、相続により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による旨規定している。
ロ 財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達。ただし、平成30年12月10日付課評2−49ほかによる改正前のもの。以下「評価通達」という。)1《評価の原則》の(2)は、財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(相続により財産を取得した日)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、評価通達の定めによって評価した価額による旨定めている。
ハ 評価通達6《この通達の定めにより難い場合の評価》は、評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する旨定めている。
(3)基礎事実
 当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
 イ 相続について
(イ)被相続人×××(×××××××××生まれ。以下「本件被相続人」という。)は、平成29年12月4日、×××のため×××××××××に入院し、退院することなく、××××××××(以下「本件相続開始日」という。)、×××で死亡し、その相続(以下「本件相続」という。)が開始した。本件相続に係る法定相続人は、本件被相続人の長女である請求人×××、同二女である請求人×××、同養子であり請求人×××の夫である請求人×××の3名である。
(ロ)請求人らは、平成31年1月22日、本件相続に係る遺産分割協議を成立させ、本件被相続人の遺産である別表1の不動産のうち、請求人×××が順号1及び2の不動産を、請求人×××が順号3の不動産を、請求人×××が順号4及び5の不動産をそれぞれ取得し(以下、同表の順号1の不動産を「本件×××不動産」、順号2の不動産を「本件×××不動産」、順号3の不動産を「本件×××不動産」、順号4の不動産を「本件×××不動産」、順号5の不動産を「本件×××不動産」といい、これらの不動産を併せて「本件各不動産」という。)、本件各不動産の購入資金として本件被相続人が××××××(以下「×××」という。)から借り入れた債務(以下「本件各借入金」という。)のうち、請求人×××が本件×××不動産及び本件×××不動産に係る借入金765,696,000円を、請求人×××が本件×××不動産に係る借入金570,000,000円を、請求人×××が本件×××不動産及び本件×××不動産に係る借入金165,000,000円をそれぞれ承継した。
 ロ 本件各不動産及び本件各借入金が本件被相続人の財産及び債務となった経緯等について
(イ)本件被相続人は、平成30年1月24日、本件×××不動産を965,200,000円で買い受ける旨の不動産売買契約を締結し、同月30日、×××から本件×××不動産の購入資金として685,000,000円を借り入れ、同日、本件×××不動産を取得した。
  なお、上記の借入れに係る約定の最終返済日は平成57年11月30日である。
(ロ)本件被相続人は、平成30年2月27日、本件×××不動産を95,000,000円で買い受ける旨の不動産売買契約を締結し、同年3月16日、×××から本件×××不動産の購入資金として85,000,000円を借り入れ、同日、本件×××不動産を取得した。
  なお、上記の借入れに係る約定の最終返済日は平成65年2月28日である。
(ハ)本件被相続人は、平成30年3月29日、本件×××不動産を597,000,000円で買い受ける旨の不動産売買契約を締結し、同年4月10日、×××から本件×××不動産の購入資金として570,000,000円を借り入れ、同日、本件×××不動産を取得した。
  なお、上記の借入れに係る約定の最終返済日は平成65年3月31日である。
(ニ)本件被相続人は、平成30年3月30日、本件×××不動産を100,000,000円で買い受ける旨の不動産売買契約を締結し、同年4月12日、×××から本件×××不動産の購入資金として85,000,000円を借り入れ、同日、本件×××不動産を取得した。
  なお、上記の借入れに係る約定の最終返済日は平成65年3月31日である。
(ホ)本件被相続人は、平成30年3月30日、本件×××不動産を87,000,000円で買い受ける旨の不動産売買契約を締結し、同年4月10日、×××から本件×××不動産の購入資金として80,000,000円を借り入れ、同日、本件×××不動産を取得した。
  なお、上記の借入れに係る約定の最終返済日は平成65年3月31日である。
(へ)上記(イ)ないし(ホ)の本件各不動産の取得(以下「本件各取得」という。)に係る不動産売買契約は、いずれも、請求人×××が、本件被相続人の代理人として締結したものである。また、請求人×××は、上記(イ)ないし(ホ)の×××からの各借入れ(以下「本件各借入れ」といい、本件各取得と併せて「本件各取得・本件各借入れ」という。)を連帯保証した。
(ト)請求人×××及び請求人×××は、令和4年中に、本件×××不動産、本件×××不動産及び本件×××不動産を売却した。また、請求人×××は、令和4年7月28日、本件×××不動産を、委託者兼受益者を請求人×××、受託者を××××××××(以下「××××××」という。)として、××××××に信託譲渡し、同日、信託受益権を、××××××に売却した。
  なお、請求人らは、上記の各不動産及び信託受益権の売却日に、本件各借入金のうち本件×××不動産、本件×××不動産、本件×××不動産及び本件×××不動産の各借入れに係るものを弁済した。
 ハ 本件各不動産の価額について
(イ)本件各不動産について、評価通達の定めにより評価した本件相続開始日における各価額(以下「本件各通達評価額」という。)は、それぞれ別表2の「本件各通達評価額」欄の額のとおりである。
(ロ)本件各不動産について、××××××××××の令和4年3月25日付不動産鑑定評価書による、本件相続開始日における各鑑定評価額(以下「本件各鑑定評価額」という。)は、それぞれ別表2の「本件各鑑定評価額」欄のとおりである。
(4)審査請求に至る経緯
 イ 請求人らの申告について

(イ)請求人らは、×××××××に対し、本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)について、相続税の申告書に別表3の「申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに共同で申告(以下「本件申告」という。)した。
(ロ)請求人らは、本件申告において、本件各不動産の価額を本件各通達評価額により評価した上、請求人×××が取得した本件×××不動産及び本件×××不動産の各土地が租税特別措置法(平成31年法律第6号による改正前のもの)第69条の4第3項第4号に規定する貸付事業用宅地等に該当するとして、同条第1項に規定する特例を適用した価額を課税価格に算入した。
  また、請求人らは、本件申告において、本件各借入金につきそれぞれ請求人らが上記(3)のイの(ロ)のとおり承継した額を、相続税法第13条《債務控除》第1項に規定する債務控除の対象となる債務に含めて課税価格を計算した。なお、請求人×××について、当該債務控除の対象となる債務の額が相続により取得した財産の価額を超えていたため、純資産価額は××であった。
  本件申告における請求人らの納付すべき税額は、相続税法第17条《各相続人等の相続税額》の規定により算出した金額から、相続税法第19条《相続開始前3年以内に贈与があった場合の相続税額》第1項に規定する課せられた贈与税額を控除した結果、いずれも××であった。
(ハ)本件各取得・本件各借入れが行われなかったとした場合には、本件相続税の課税価格の合計額は×××を超え、請求人らの納付すべき税額の合計額は×××を超えるものであった。
 ×××××××は、原処分庁所属の調査担当職員の調査及び令和5年6月19日付の国税庁長官の指示に基づき、本件各不動産の価額は評価通達6の定めを適用し本件各鑑定評価額となるなどとして、同年10月30日付で、請求人らに対し、別表3の「更正処分等」欄のとおり、本件相続税の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
 請求人らは、令和6年1月26日、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分に不服があるとしてそれぞれ審査請求をするとともに、請求人×××を総代として選任し、同日、その旨を当審判所に届け出た。

争点および主張

 本件各不動産について、評価通達の定める方法によって評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情があるか否か。当事者の主張は、のとおり。

【表】本件各不動産について、評価通達の定める方法によって評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情があるか否かについて

原処分庁 請 求 人 ら
(1)本件相続税の負担の軽減について
 本件各取得・本件各借入れが行われなかった場合の相続税の課税価格の合計額は×××を超え、納付すべき税額の合計額は×××を超えるため、請求人らは、本件各取得・本件各借入れが行われたことにより、×××を超える相続税の負担が軽減されており、その負担の軽減の程度は著しい。
(2)租税負担の軽減の意図について
 イ 本件被相続人は、平成29年1月に満××を迎え、同月に軽度の×××の症状があるとの診断を受け、同年8月以降急に出社が困難となり、同年12月に緊急入院して集中治療室で治療を受け、平成30年1月9日には、医師から請求人×××に対し、容態急変のリスクが高く急変時に延命措置を行うか否かの意向確認がされるなどしている。そのため、平成30年1月9日には、本件被相続人の死が現実的なものとなっていた。
 ロ 上記イの状況の中、請求人×××は、本件被相続人が入院した平成29年末から、不動産仲介業者に対し、本件被相続人が購入する物件の紹介を依頼し、平成30年1月中旬以降、紹介を受けた物件の内覧や買付証明書の発行のほか、×××の担当者に対する融資の相談を行い、本件各借入れについて、×××と極めて長期間となる連帯保証契約を締結するなどして、積極的に本件各取得・本件各借入れに関与し、本件相続開始日前の約3か月間という極めて短期間のうちに、本件各取得・本件各借入れは実行された。
 ハ 請求人らは、本件被相続人の妻の相続において、本件被相続人及び請求人らで総額××××××の相続税を納付した経験があること、請求人×××が×××の要職を歴任していること、及び請求人×××が税理士であることからすれば、本件被相続人の相続により、相当額の相続税が発生し得ることを容易に予見可能であり、また、認識もしていた。
 ニ 相続開始直後に相続した不動産を売却する行為は、租税負担の軽減の意図があったことを推認させる事情の一つにすぎず、本件各不動産がいずれも相続開始直後に売却されていないからといって、そのことが直ちに、租税負担の軽減を意図していなかったことにつながるものではない。
 ホ 以上の事実に照らすと、請求人らは、租税負担の軽減をも意図して、本件各取得・本件各借入れを行ったと認められる。
(3)以上のとおり、本件各取得・本件各借入れが行われたことにより請求人らの本件相続税の負担は著しく軽減され、かつ、請求人らは、租税負担の軽減をも意図してこれを行ったものと認められるから、本件各不動産について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが、本件各取得・本件各借入れのような行為をせず、又はすることのできない他の納税者との間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある。
(1)本件相続税の負担の軽減について
 原処分庁の主張(1)は認める。
(2)租税負担の軽減の意図について
 イ 本件被相続人は、命に関わるような重大疾病ではなく単に×××の治療のために平成29年12月に入院したものにすぎず、入院中に×××を発症して集中治療室で治療を受けたが、症状が改善して一般病床に戻っており、その後に再度断続的に×××を発症するなどしたものの、集中治療室での治療は受けていなかった。平成30年1月9日の医師の説明は、本件被相続人の容態が急変し、心肺停止に至った場合の対応を事前に確認したものにすぎず、余命宣告はなされていない。
  請求人らが初めて本件被相続人の死期が近づいており相続が近い将来発生することを予見するに至ったのは、平成30年3月18日、医師から、本件被相続人が老衰のためいつ急変してもおかしくない旨の説明を受けた日であって、本件各不動産を購入することが決定した後である。
 ロ 本件被相続人は、遅くとも平成29年6月頃には、自身の財産形成の一環として不動産の購入を決断しており、本件各取得・本件各借入れも、親族等に相談することなく本件被相続人が単独で決断したものであり、請求人×××は、本件被相続人からの指示に基づき、その代理人として諸手続を行ったにすぎない。
  本件各取得・本件各借入れが本件相続開始日前の約3か月間で行われているのは、不動産は購入を決断してから実際に購入するまでには相当の時間を要することが一般的であり、本件各不動産を購入することとしてそのための諸手続を行った時期がたまたまこの期間であったからにすぎない。
 ハ 請求人らが、過去に相続税を納付した経験があるとしても、このことから直ちに、本件被相続人の相続により、相当額の相続税が発生し得ることを容易に予見可能であったとはいえない。また、請求人×××に×××の要職の職歴があり、請求人×××が税理士であるとしても、本件各取得・本件各借入れは、本件被相続人が単独で決断したものであり、請求人らは、かかる意思決定に全く関与していないことは上記ロのとおりである。
 ニ 仮に、本件各取得・本件各借入れが租税負担の軽減を意図して行われたものであったとすれば、本件相続の開始後、可及的速やかに本件各不動産を売却して現金化を図るのが自然かつ合理的であるが、請求人らは、本件相続税の調査が開始した令和2年11月27日に至っても本件各不動産をいずれも売却しておらず、また売却する予定もなかった。
 ホ 以上のことからすると、本件各取得・本件各借入れは、請求人らの租税負担の軽減を意図して行われたものではない。
(3)以上のとおり、本件各取得・本件各借入れは、請求人らの租税負担の軽減を意図して行われたものではないから、本件各不動産について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情はない。

審判所の判断

(1)法令解釈等
 相続税法第22条は、同法第3章において特別の定めがあるものを除くほか、相続により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による旨を定めているところ、ここにいう時価とは、当該財産の客観的な交換価値をいうものと解される。
 ところで、相続税法は、地上権及び永小作権の評価(相続税法第23条《地上権及び永小作権の評価》)、定期金に関する権利の評価(相続税法第24条《定期金に関する権利の評価》、第25条)及び立木の評価(相続税法第26条《立木の評価》)を除き、財産の評価方法について定めを置いていないところ、課税実務においては、評価通達において財産の価額の評価に関する一般的な基準を定めて、画一的な評価方法によって相続により取得した財産の価額を評価することとされている。このような方法が採られているのは、相続税の課税対象である財産には多種多様なものがあり、その客観的な交換価値が必ずしも一義的に確定されるものではないため、相続により取得した財産の価額を上記のような画一的な評価方法によることなく個別事案ごとに評価することにすると、その評価方法、基礎資料の選択の仕方等により異なった金額が時価として導かれる結果が生ずることを避け難く、また、課税庁の事務負担が過重なものとなり、課税事務の効率的な処理が困難となるおそれもあることから、相続により取得した財産の価額をあらかじめ定められた評価方法によって画一的に評価することとするのが相当であるとの理由に基づくものと解される。このような課税実務は、評価通達の定める評価方法が相続により取得した財産の取得の時における適正な時価を算定する方法として合理的なものであると認められる限り、納税者間の公平、納税者の便宜、効率的な徴税といった租税法律関係の確定に際して求められる種々の要請を満たし、国民の納税義務の適正な履行の確保(国税通則法第1条《目的》、相続税法第1条《趣旨》)に資するものとして、相続税法第22条の規定の許容するところであると解される。
 そして、評価対象の財産に適用される評価通達の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有する場合においては、評価通達の定める評価方法が形式的に全ての納税者に係る全ての財産の価額の評価において用いられることによって、基本的には、実質的な租税負担の公平を実現することができるものと解されるのであって、相続税法第22条の規定も租税法上の一般原則としての平等原則を当然の前提としていることに照らせば、特定の納税者あるいは特定の財産についてのみ、評価通達の定める評価方法以外の評価方法によってその価額を評価することは、原則として許されないものというべきである。すなわち、課税庁が、特定の者の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、たとえ当該価額が客観的な交換価値としての時価を上回らないとしても、合理的な理由がない限り、上記の平等原則に違反するものとして違法というべきである。もっとも、相続税の課税価格に算入される財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由があると認められるから、当該財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが上記の平等原則に違反するものではないと解するのが相当である。
(2)認定事実
 請求人ら提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
 イ 本件相続の開始前の本件被相続人の病状等について
(イ)本件被相続人は、××××××××××××(以下「××××××」という。)の代表取締役会長を務めていたが、平成29年1月に軽い×××があると診断され、同年8月頃まで出社していたのが急にできなくなって臥床傾向となり、同年9月に運転免許証を返納した後、外出をしなくなった。
  なお、本件被相続人は、××××××に開催された××××××の定時株主総会終結時をもって任期満了により代表取締役会長を退任し、後任には、取締役であった請求人×××が就任した。
(ロ)本件被相続人は、上記基礎事実等の(3)のイの(イ)のとおり、平成29年12月4日に×××のため入院した。入院後、×××があり経鼻経管栄養が開始され、平成29年12月23日に×××××××××を発症したため同月25日から集中治療室で治療を受けた。平成30年1月4日に症状が改善し一般病床に戻ったが、発熱を繰り返し栄養状態は改善しなかった。また、×××の加療により、×××、×××が進行した。
(ハ)請求人×××は、平成30年1月9日、医師から、本件被相続人は×××の増悪やその他様々な疾患により容態が急変するリスクが高いとして、急変時の延命処置について家族の意向を確認され、これに対し、××××××××××を希望するが、××に関しては×××××××××旨を回答した。
(ニ)請求人×××は、平成30年3月18日、医師から、本件被相続人は経鼻経管栄養を行っていても徐々に体力及び筋力が低下しており、いわゆる老衰状態であり、今後これ以上体力が回復する見込みはない旨を説明され、これに対し、××××××旨伝えた。
(ホ)請求人×××は、平成30年4月11日、医師から、本件被相続人の発熱は×××である可能性が高く、症状悪化すると容態が急変する危険性もある旨を説明され、これに対し、請求人×××とも話して、×××××××××である旨を伝えた。
 ロ 請求人×××及び請求人×××の職歴について
(イ)請求人×××は、昭和56年4月に×××××し、平成15年7月には×××××、平成22年10月には××××の職にあった。
(ロ)請求人×××は、税理士であり、平成29年に××××××を設立した。
 ハ 本件各取得・本件各借入れ前の本件被相続人の財産の状況等について
(イ)本件被相続人の妻である×××は、×××××××××に×××で死亡し、同人に係る相続が開始した。平成22年3月30日に、本件被相続人及び請求人らが共同で提出した同相続に係る相続税の申告書には、本件被相続人の課税価格は××××××及び納付すべき税額は×××××、請求人×××の課税価格は××××××及び納付すべき税額は×××××、請求人×××の課税価格は××××××及び納付すべき税額は×××××、請求人×××の課税価格は×××及び納付すべき税額は×××××と記載されている。
(ロ)本件被相続人は、平成29年12月27日、請求人×××が代表社員である×××に対し、××××××に所在する自宅を×××で売却した。
(ハ)本件被相続人は、平成30年1月17日、請求人×××が代表取締役社長を務める××××××(以下「×××」という。)に対し、保有していた××××××の株式86,220株のうち、86,200株を×××××で売却し、同年3月20日には残りの20株を売却した。
 ニ 本件各取得・本件各借入れに関する経緯等
(イ)本件×××不動産の購入経緯等
 ××××××の×××は、平成29年9月6日以降、請求人×××に対し、××××××による購入を想定して複数の不動産を紹介していたところ、平成30年1月10日に請求人×××に本件×××不動産を紹介し、同月12日に請求人×××と内覧に行き、同月15日頃に買付証明書を受領した。
 ×××は、基本的に請求人×××と不動産購入に関する手続を進めており、本件被相続人には会ったことはなく、本件×××不動産を本件被相続人の名義で購入する旨を請求人×××から聞いたのは、上記の買付証明書を受領した日であった。
(ロ)本件×××不動産、本件×××不動産及び本件×××不動産の購入経緯等
 不動産仲介業者である×××××××××の×××は、平成29年12月末頃、請求人×××から、相続用に1億円くらいのマンションを3ないし5件程度探してほしい旨の依頼を受け、平成30年1月7日以降、請求人×××に対し、本件×××不動産、本件×××不動産及び本件×××不動産を含む10ないし15件のマンションを紹介した。
 ×××は、本件×××不動産、本件×××不動産及び本件×××不動産を本件被相続人が購入するに至った平成29年12月末以降の取引について、全て請求人×××とやり取りをし、本件被相続人とは直接会ったことも、電話でやり取りをしたこともなかった。
(ハ)本件×××不動産の購入経緯等
 ×××××××××の×××は、平成28年10月頃から請求人×××と面識があり、請求人×××が代表取締役社長を務める×××に対し、少なくとも10件以上の不動産を紹介した。×××は、請求人×××から都内及び神奈川関内エリアで約10億円の不動産を探してほしいと依頼を受けていたため、×××及び×××から×××の営業担当を引き継いだ×××は、平成30年3月5日、請求人×××と会い、×××による購入を想定して本件×××不動産を含む複数の不動産を紹介した。
 請求人×××は、本件×××不動産を紹介された平成30年3月5日に、×××に対し本件×××不動産を購入したいと伝えたが、×××が、本件×××不動産の購入名義が本件被相続人である旨及び請求人×××が本件被相続人の代理人となり手続を進める旨を請求人×××から説明されたのは、同月12日であった。
(ニ)本件各借入れの経緯等
 ×××において、平成29年4月から本件被相続人、本件被相続人の親族及び××××××××等の本件被相続人に関係する会社の営業担当者であった×××は、同年6月頃、本件被相続人から、本件被相続人の財産形成の一環として不動産を購入しようと思っているが、具体的な細かい話は請求人×××とするようにと言われた。×××は、平成30年1月17日、請求人×××から、本件×××不動産の購入資金の融資を受けたいと言われ、その後、本件×××不動産、本件×××不動産、本件×××不動産及び本件×××不動産についても、購入が決まる都度請求人×××と融資の手続を進めていった。
 ×××が、平成30年1月頃、請求人×××に対し、借入金で不動産を購入することには本件被相続人の相続税の節税メリットがあるという話をしたところ、請求人×××は、本件被相続人の相続税の対策のための不動産購入であると明言はせず、「相続税を払うことを逃れられたとしても税金を払うことからは逃れられない、遅かれ早かれ税金は必ず納めなくてはいけないものだ」旨述べた。×××は、請求人×××が××××××××を経験していたことを知っていたので、上記の話があってからは、税金についての話には触れないようにすることとした。
(ホ)本件各取得の手続等について
 本件各取得に当たっては、司法書士が、本件各不動産を購入する都度、購入の意思確認のため入院中の本件被相続人の病室を訪れ、その際には、請求人×××のほか、請求人×××や請求人×××が同席した。
 上記基礎事実等の(3)のロの(へ)のとおり、請求人×××は、本件各取得に当たり、本件被相続人の代理人として売買契約を締結し、また、本件各借入れを連帯保証した。
(3)当てはめ
 イ 請求人らの租税負担の軽減の程度について

 上記基礎事実等の(4)のイの(ハ)のとおり、本件各取得・本件各借入れが行われなかったとした場合には、本件相続税の課税価格の合計額は×××を超え、請求人らの納付すべき税額の合計額は×××を超えるものであったところ、同(イ)及び(ロ)のとおり、本件各取得・本件各借入れが行われて本件各不動産の価額を本件各通達評価額により評価するなどした結果、本件相続税の課税価格の合計額は×××強、請求人らの納付すべき税額はいずれも××になったというのであるから、本件各取得・本件各借入れが行われたことにより、請求人らの本件相続税の負担は著しく軽減されることになったというべきである(なお、この点について、請求人ら及び原処分庁の間に争いはない。)。
 ロ 請求人らの租税負担の軽減の意図について
(イ)本件被相続人は、上記基礎事実等の(3)のイの(イ)並びに上記(2)のイの(イ)及び(ロ)のとおり、平成29年1月に軽い×××があると診断され、同年9月に運転免許証を返納した後外出をしなくなり、同年12月4日に×××のため入院した後、×××があり経鼻経管栄養が開始され、同月23日には×××を発症して集中治療室で治療を受け、平成30年1月4日に一般病床に戻ったものの発熱を繰り返し、加療により×××、×××が進行して、その後退院することなく本件相続開始日(××××××××)に×××で死亡したところ、上記(2)のイの(ハ)ないし(ホ)のとおり、入院中に医師から請求人×××又は請求人×××に対し、容態が急変するリスクが高いことや老衰状態であるなどの説明がされたとともに、本件被相続人に係る延命処置についての家族の意向が確認されたことが認められる。
  また、このような状況の中で、本件被相続人は、上記(2)のハの(ロ)及び(ハ)のとおり、平成29年12月27日に自宅を請求人×××が代表社員である××××××に売却し、平成30年1月17日に当時代表取締役会長を務めていた××××××の持ち株のほぼ全てを請求人×××が代表取締役社長を務める×××に売却するなど、入院後の僅かな期間に重要な財産を相次いで処分していることが認められる。
  以上のことからすると、請求人らは、遅くとも本件被相続人が入院し、満××を超える年齢で×××により集中治療室で治療を受けていた平成29年12月末頃においては、本件被相続人の相続が近い将来発生することを予想していたものと推認される。
(ロ)そして、本件各取得・本件各借入れは、上記基礎事実等の(3)のロの(イ)ないし(ホ)のとおり、平成30年1月30日から同年4月12日までの約3か月間という極めて短期間のうちに立て続けに行われているところ、本件各取得に至る経緯をみても、上記(2)のニの(イ)ないし(ハ)のとおり、請求人×××が不動産仲介業者等から本件各不動産の紹介を受けたのは本件被相続人が入院し集中治療室で治療を受けた平成29年12月末以降であって、いずれも紹介を受けてから3か月以内に売買契約に至っている。特に、本件×××不動産及び本件×××不動産はいずれも紹介を受けてから1か月以内に売買契約に至っているところ、本件×××不動産は紹介を受けた5日後、本件×××不動産は紹介を受けたその日に請求人×××が購入の意思表示をするなど、いずれも数億円の物件であるにもかかわらず購入までの検討時間もごく短いものである。これらのことからすると、本件各取得・本件各借入れは、上記(イ)のとおり本件被相続人の相続が近い将来発生することが予想された平成29年12月末以降に、急いで進められたと認められる。
  このように急いで進められた本件各取得・本件各借入れにおいて、請求人×××は、上記(2)のニのとおり、平成29年12月末以降、不動産仲介業者に物件の紹介を依頼し、紹介を受けた物件の内覧に行き、買付証明書を渡すなどして購入の意思を告げ、購入が決まる都度×××と融資の手続を進めるなど、本件各取得・本件各借入れに積極的に関与してこれを進めたことが認められる。これに加え、上記(2)のハのとおり、本件被相続人の妻の相続において請求人らの納付すべき税額は合計×××を超え、同相続において本件被相続人の取得した遺産の課税価格は×××を超えていたこと、請求人×××や請求人×××が代表を務める会社が、平成29年12月末から平成30年1月半ばにかけて、本件被相続人から自宅や株式を各×××以上の額で購入していること、請求人×××が、同ニのとおり、××××××××××の×××に対して相続用にマンションを探してほしい旨述べていて、平成30年1月頃に×××の×××と相続税の節税に関する会話をしていること、また、同ロのとおり、請求人×××が×××の要職を歴任し、請求人×××が税理士であることも踏まえれば、少なくとも請求人×××は、本件被相続人の相続が開始すれば相当な額の相続税が発生すること、及び本件各取得・本件各借入れを行うことにより相続税の課税価格が圧縮され、請求人らの相続税の負担が軽減されることを認識していたことは明らかである。
(ハ)以上のことからすると、本件各取得・本件各借入れは、近い将来発生することが予想される本件被相続人の相続において請求人らの相続税の負担を減免させるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて企画して急ぎ実行されたと認められるから、本件各取得・本件各借入れは、請求人らの租税負担の軽減をも意図して行われたものといえる。
 ハ 小括
 上記イのとおり、本件各取得・本件各借入れが行われたことにより、請求人らの本件相続税の負担は著しく軽減されているところ、上記ロのとおり、本件各取得・本件各借入れは、請求人らの租税負担の軽減をも意図して行われたものといえることからすると、本件各不動産について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことは、本件各取得・本件各借入れのような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と請求人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせており、実質的な租税負担の公平に反するというべき事情があると認められる。
(4)請求人らの主張について
イ 請求人らは、上記表の「請求人ら」欄の(2)のイのとおり、本件被相続人は医師から余命宣告がなされておらず、請求人らが初めて本件被相続人の死期が近づいており相続が近い将来発生することを予見するに至ったのは平成30年3月18日であって、本件各不動産の購入が決定した後であることから、本件各取得・本件各借入れは、請求人らの租税負担の軽減を意図して行われたものではない旨主張する。
  しかしながら、医師から余命宣告がなされていないからといって、本件被相続人が入院し、満××を超える年齢で×××により集中治療室で治療を受けていた平成29年12月末に至っても、本件被相続人の相続が近い将来発生することを予想すらしていなかったというのは極めて不自然であり、本件各取得・本件各借入れが、本件被相続人の相続が近い将来発生することを予想した上で、請求人らの租税負担の軽減をも意図して行われたと認められることは、上記(3)のロで述べたとおりである。
  したがって、請求人らの主張には理由がない。
ロ 請求人らは、また、上記表の「請求人ら」欄の(2)のロのとおり、本件被相続人は、遅くとも平成29年6月頃には自身の財産形成の一環として不動産の購入を決断していたが、本件各不動産を購入するための諸手続を行った時期がたまたま本件相続開始日前の約3か月間であったにすぎないこと、本件各取得・本件各借入れは本件被相続人が単独で決断したものであり、請求人×××は本件被相続人からの指示に基づきその代理人として諸手続を行ったにすぎないことから、本件各取得・本件各借入れは、請求人らの租税負担の軽減を意図して行われたものではない旨主張する。
  しかしながら、租税負担の軽減の意図は、他の意図・目的とも併存し得るのであるから、仮に本件被相続人が自身の財産形成の意図を有していたとしても、本件各取得・本件各借入れが、請求人らの租税負担の軽減をも意図して行われたものであって、本件各不動産について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情があるという上記(3)の判断を左右するものではない。また、請求人×××が、本件被相続人が集中治療室で治療を受けた平成29年12月末以降、本件各取得・本件各借入れに積極的に関与してこれを進めていることは上記(3)のロの(ロ)で述べたとおりであり、上記(2)のニの(イ)、(ロ)及び(ニ)のとおり、××××××の×××及び××××××××××の×××は本件被相続人に会ったことがないことや、本件被相続人が×××の×××に対し不動産購入に係る具体的な細かい話は請求人×××とするように告げていたこと、及び上記(2)のイのとおりの本件被相続人の入院から死亡までの経過を踏まえると、本件各取得・本件各借入れは本件被相続人が単独で決断したものであるとは到底認められず、請求人×××は本件被相続人からの指示に基づきその代理人として諸手続を行ったにすぎないという請求人らの主張は合理性に欠けるものである。
  したがって、請求人らの主張には理由がない。
ハ 請求人らは、上記表の「請求人ら」欄の(2)のハ及びニのとおり、請求人らが過去に相続税を納付した経験があることから直ちに、本件被相続人の相続により相当額の相続税が発生し得ることを容易に予見可能であったとはいえない旨、また請求人らは本件相続税の調査が開始した令和2年11月27日に至っても本件各不動産を売却していないことから、本件各取得・本件各借入れは、請求人らの租税負担の軽減を意図して行われたものではない旨主張する。
  しかしながら、本件被相続人の妻の相続において本件被相続人の取得した遺産の課税価格や、本件被相続人の自宅等の売却の状況に照らすと、少なくとも請求人×××は、本件被相続人の相続が開始すれば相当な額の相続税が発生することを認識していたことが明らかであることは、上記(3)のロの(ロ)で述べたとおりである。
  また、請求人らが本件相続の開始後速やかに本件各不動産を売却していないとしても、そのことは直ちに、本件各取得・本件各借入れが請求人らの租税負担の軽減を意図して行われたものではないことを推認させる事情とはいえない。
  したがって、請求人らの主張にはいずれも理由がない。
(5)本件各更正処分及び本件各賦課決定処分の適法性について
イ 本件各更正処分の適法性について
 本件各鑑定評価額は、いずれも国家資格を有する不動産鑑定士により不動産鑑定評価基準に準拠した方法に基づいて算出されており、本件各不動産の本件相続開始日における客観的な交換価値としての時価を合理的に算定しているものと認められるから、本件各不動産の価額を本件各鑑定評価額により評価することは相続税法第22条に違反するものではない。そして、上記(3)のハのとおり、本件各不動産について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情があるから、本件各不動産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることには合理的な理由があると認められ、本件各不動産の価額を本件各鑑定評価額により評価することが租税法上の一般原則としての平等原則に違反するということはできない。
 これに基づき、当審判所において、請求人らの本件相続税の課税価格及び納付すべき税額を計算すると、本件各更正処分の各金額といずれも同額であると認められる。
 また、本件各更正処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、本件各更正処分はいずれも適法である。
 ロ 本件各賦課決定処分の適法性について
 上記イのとおり、本件各更正処分はいずれも適法であり、本件各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法(令和4年法律第4号による改正前のもの)第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
 そして、当審判所においても、請求人らの本件相続税の各過少申告加算税の額は、本件各賦課決定処分における各金額といずれも同額であると認められる。
 したがって、本件各賦課決定処分はいずれも適法である。
(6)結論
 よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり裁決する。

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