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解説記事2025年12月15日 SCOPE 上場申請期末直前の契約解除で監査法人に損害賠償を請求(2025年12月15日号・№1103)

クライアントが上場準備費用の賠償を求める
上場申請期末直前の契約解除で監査法人に損害賠償を請求


 上場申請を目標としていた非公開会社(原告)が同社の上場申請に係る監査を受任した監査法人(被告)に対して、上場申請期の終了間際に監査契約を解除して上場に必要な監査意見を表明しなかったことにより上場準備が全て無駄になったと主張して上場準備費用約3,891万円の損害賠償を求めていた民事訴訟で東京地裁は令和7年6月13日、会社側の訴えを棄却する判決を下していたことが明らかとなった。東京地裁は、監査法人が違法の懸念を示した事項に対して会社側が協議に応じなかったことなどを指摘したうえで、監査契約と一体となる監査約款所定の解除事由があることなどから被告監査法人は損害賠償義務を負うものとは認められないと結論付けている。

監査約款では、業務遂行に誠実に対応しない場合は監査契約を解除可能

 新築建売住宅を中心とした不動産販売を行う非公開会社である原告会社は、令和3年11月期までに札幌証券取引所のアンビシャス市場へ上場申請をすることを目標として、平成30年5月に株式上場のための予備調査手続の契約を締結し、被告監査法人が予備調査を実施した。そして原告会社と被告監査法人は、上場申請期直前2期及び上場申請期についての監査証明を取得するため、令和元年11月期から令和3年11月期までの監査について監査契約を締結するに至った。
 その後、原告会社の取締役会は令和3年7月、財務諸表の表記の誤指示及び金融機関への残高確認漏れという監査品質管理上の問題点があるとして、令和4年11月期の監査につき被告監査法人を不再任とすること及び令和3年11月期にアンビシャス市場へ上場申請することを断念することを決定した。
 被告監査法人は令和3年10月、以前原告会社が実施していた住宅購入者等に対しリフォーム準備金として現金を交付する本件サービスが違法である疑いがあるため協議を要請する旨の文書を原告会社に送付したが、原告会社が再調査や面談に応じなかったことから、被告監査法人は同年11月4日頃に監査約款の規定に基づき監査契約を解除した。なお、監査契約と一体のものとされている監査約款の14条では、「委嘱者の役職員が受嘱者の業務遂行に誠実に対応しない場合等、受嘱者の委嘱者に対する信頼関係が著しく損なわれた場合」(1項4号)には、監査契約を催告なしに解除できる旨が規定されていた。
 被告監査法人による監査契約の解除を不服とした原告会社は、被告監査法人は上場申請期の終了間際という原告会社に不利な時期に契約を解除したから、民法651条(委任の解除)の第2項一号(相手方に不利な時期に委任を解除したとき)に基づき損害賠償を請求できると指摘したうえで、上場準備費用の合計約3,891万円の損害賠償を求めた。
 東京地裁は、被告監査法人が本件サービスの適法性に疑念を抱いて改めて調査し、弁護士から本件サービスが違法となる可能性がある旨が指摘されたことなどを踏まえれば、日本公認会計士協会監査基準委員会が作成した監査基準委員会報告書250「財務諸表監査における法令の検討」(令和元年6月12日最終改正版)第19項に基づき、被告監査法人がリフォーム準備金の違法性について原告会社に協議を要請したことが不合理であるとは認められないとした。そして東京地裁は、原告会社は監査契約と一体となる監査約款に基づき被告監査法人の業務遂行に誠実に対応して被告監査法人からの協議の要請に応じる必要があったと認められるところ、原告会社がそれに応じなかったことから監査約款の規定により監査契約が解除されたものと認められると判断したうえで、監査契約の解除は監査約款に基づくもので民法651条1項に基づく解除であるとは認められないから被告監査法人が同条2項に基づく損害賠償義務を負うものとは認められないと結論付けた。

【表】監査基準委員会報告書250「財務諸表監査における法令の検討」

19項 監査人は、違法行為が疑われる場合、……当該事項について適切な階層の経営者、及び必要に 応じて監査役等と協議しなければならない。
20項 監査人は、違法行為の疑いに関して十分な情報を入手できない場合、十分かつ適切な監査証拠 が入手できないことによる監査意見への影響を評価しなければならない。
22項 監査人は、監査の実施過程で気付いた違法行為又はその疑いに関連する事項を、……監査役等 とコミュニケーションを行わなければならない。
A24項 監査人は特定の状況において、違法行為が財務諸表にとって重要でない場合でも、……監査契 約の解除を検討することがある。例えば、その状況において監査人が必要と考える適切な是正 措置を経営者又は監査役等が講じない場合や、違法行為又はその疑いにより経営者や監査役等 の誠実性に疑義が生じる場合などが含まれる。

原告会社に不利な時期に監査契約を解除しない付随義務違反は認められず
 原告法人は、監査契約上、被告監査法人には原告会社に損害を与えないよう誠実に行動する付随義務があるため、原告会社にとって不利な時期に監査意見を表明することなく契約を解除したことは同義務違反である旨を主張していた。これに対し東京地裁は、監査契約と一体となる監査約款が契約の解除事由及び終了事由を定める一方で、解除の時期や条件等について特段の定めを設けていないことからすれば、本件における監査契約は解除事由が生じた場合にはその時期に拘らず被告監査法人又は原告会社により解除することができるものであって、解除事由が生じている場合であっても当事者の一方を害する可能性や一方にとって不利な時期であれば解除を許容しないという趣旨のものであるとは解されないと指摘。被告監査法人は本件サービスの違法性について原告会社と協議をしなければ監査意見への影響を判断できなかった可能性があり、監査約款で定める解除事由が存在していることから、被告監査法人には原告会社にとって不利な時期に監査契約を解除しないという付随義務違反があったとは認められないと判断している。

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