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解説記事2020年05月04日 新会計基準解説 実務対応報告第39号「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い」の概要(2020年5月4日号・№833)

新会計基準解説
実務対応報告第39号「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い」の概要
 企業会計基準委員会 アシスタント・ディレクター 片山智二

Ⅰ はじめに

 企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)は、2020年3月31日に、実務対応報告第39号「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い」(以下「本実務対応報告」という。)を公表(脚注1)した。本稿では、本実務対応報告の概要を紹介する。なお、文中の意見に関する部分は筆者の私見であり、ASBJの見解を示すものではないことをあらかじめ申し添える。

Ⅱ 本実務対応報告公表の経緯

 令和2年度税制改正において、従来の連結納税制度が見直され、グループ通算制度に移行する税制改正法(「所得税法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第8号))(以下「改正法人税法」という。)が2020年3月27日に成立している。グループ通算制度の適用は2022年4月1日以後開始する事業年度からであるが、グループ通算制度の適用対象となる企業は、改正法人税法の成立日以後に終了する事業年度の決算(四半期決算を含む。)において、グループ通算制度の適用を前提として繰延税金資産の回収可能性の判断を行う必要がある。しかしながら、当該判断を行うことについて、実務上対応が困難であるとの意見が聞かれたことから、ASBJにおいて、必要と考えられる取扱いについて検討を行い、公表に至ったものである。

Ⅲ 本実務対応報告の概要

1 本実務対応報告の範囲
 本実務対応報告は、2020年3月27日に成立した改正法人税法の成立日の属する事業年度において連結納税制度を適用している企業及び改正法人税法の成立日より後に開始する事業年度から連結納税制度を適用する企業を対象として、以下の特例的な取扱いを定めている。

2 会計処理
(1)我が国の会計基準における定め

 企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下「税効果適用指針」という。)第44項では、「繰延税金資産及び繰延税金負債の額は、決算日において国会で成立している税法(以下、法人税等の納付税額の計算方法が規定されている我が国の法律を総称して『税法』という。)に規定されている方法に基づき第8項に定める将来の会計期間における減額税金又は増額税金の見積額を計算する。なお、決算日において国会で成立している税法とは、決算日以前に成立した税法を改正するための法律を反映した後の税法をいう。」とされている。このため、2022年4月1日以後、グループ通算制度の適用を行う企業については、改正法人税法の成立日以後に終了する事業年度の決算(四半期決算を含む。)において、グループ通算制度の適用を前提とした税効果会計の適用を行う必要がある。
(2)問題の所在
 連結納税制度を適用する場合の税効果会計の適用に関する取扱いは、実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」(以下「実務対応報告第5号」という。)及び実務対応報告第7号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)」(以下、実務対応報告第5号と合わせて「実務対応報告第5号等」という。)に定められている。実務対応報告第5号等は連結納税の範囲に含まれる連結会社群が法人税法上同一の納税主体となることを前提としているのに対し、グループ通算制度は、企業グループ内の各法人を納税主体として、各法人が個別に法人税額の計算及び申告を行い、損益通算等の調整を行う制度とされている。連結納税制度とグループ通算制度では納税主体等が異なることを踏まえると、グループ通算制度の下での連結財務諸表及び個別財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の判断にあたっては、グループ通算制度に基づいた繰延税金資産の回収可能性の判断についての考え方の整理が必要であり、当該整理に合わせて実務対応報告第5号等を改廃する必要がある。
(3)特例的な取扱いの内容
 本実務対応報告では、改正法人税法の成立日以後に終了する事業年度の決算(四半期決算を含む。)については、グループ通算制度の適用を前提とした税効果会計の適用に関し、実務対応報告第5号等に関する必要な改廃をASBJが行うまでの間は、グループ通算制度への移行に関する項目について、税効果適用指針第44項の定めを適用せず、改正前の税法の規定に基づくことができるものとする特例的な取扱いを定めている。
 また、改正法人税法ではグループ通算制度への移行にあわせた単体納税制度の見直しが行われており、当該特例的な取扱いの範囲にその見直しを含めている。当該見直しは、グループ通算制度を適用しない企業も対象となるが、グループ通算制度への移行にあわせて設けられたものであるため、「1.本実務対応報告の範囲」に記載した企業を対象とした特例的な取扱いを定めるにあたって、その対象に含めることとした。なお、グループ通算制度への移行にあわせた単体納税制度の見直しが行われた項目は以下のとおりである。
① 受取配当等の益金不算入制度
② 寄附金の損金不算入制度
③ 貸倒引当金
④ 資産の譲渡に係る特別控除額の特例
 本実務対応報告では、特例的な取扱いは選択適用としている。これは、例えば、繰越欠損金に重要性のない企業では、特例的な取扱いを適用する必要のない場合が生じることも考えられるためである。

3 開 示
 本実務対応報告では、特例的な取扱いを適用した場合、原則的な方法による場合と見積りの基礎が異なることから、繰延税金資産及び繰延税金負債の額について、本実務対応報告で定めている取扱いにより改正前の税法の規定に基づいている旨の注記を求めることとしている。

Ⅳ 適用時期

 本実務対応報告は、公表日以後適用する。

Ⅴ おわりに

 今後、ASBJでは、グループ通算制度の導入に対応した会計基準の開発として、2021年3月までの公表を目標とし、実務対応報告第5号等の改廃を行うことを予定している。引き続き、関係者のご理解とご協力をお願いしたい。

脚注
1 本実務対応報告の全文については、ASBJのウエブサイト(https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/practical_solution/y2020/2020-0331-04.html)を参照のこと。

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