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解説記事2026年02月02日 特別解説 我が国の上場企業による不正~第三者委員会報告書を提出した企業の調査分析~(2026年2月2日号・№1109)

特別解説
我が国の上場企業による不正
~第三者委員会報告書を提出した企業の調査分析~

はじめに

 我が国の上場企業で大規模な粉飾決算や横領等の不正が発覚すると、弁護士や公認会計士等の外部の専門家を交えた第三者委員会が組成され、フォレンジック調査等が行われた後に、調査結果が報告書として外部に公表される場合が多い。本稿では、2014年4月1日から2025年12月31日までの期間で、親会社(上場企業)や連結子会社等による不適切な会計処理(粉飾決算)、及びその元役員や元従業員らによる不適切な行為(横領、着服等)等について、第三者委員会報告書(第三者を含んだ社内調査報告書等を含む)を外部に公表した企業を題材として、本稿の前半では不正の発生原因や類型、特徴点等を全体的に分析するとともに、後半では、2025年1月1日から2025年12月31日までに第三者委員会報告書が公表された個別の不正事例を、1件ずつ内容をまとめて紹介することとしたい。

調査の対象とした企業

 今回調査の対象としたのは、2014年4月1日から2025年12月31日までの期間に、不適切な会計処理(粉飾決算)や元役員、元従業員らによる不適切な行為等について第三者委員会報告書(第三者を含んだ社内調査委員会報告書を含む)を公表した企業(以下、「報告書公表企業」という。)である。これまでは、年によって多少の増減はあるものの、年間にほぼ30件程度のペースで不適切な会計処理等に関する調査報告書が公表されてきている(表1を参照。)。なお、調査報告書が公表された事例のうち、得意先が要求する性能やスペックを満たしていない製品を偽って納入していた等の、会計処理とは直接関係しないような不適切な事例は、今回の調査の対象からは除いている。

全体的な分析

 まず、2014年4月から2025年12月末日までの期間に報告書を公表したのべ327社(調査報告書を複数回公表している会社もある。)を、上場している市場等の区分ごとに分類すると、表2のとおりであった。なお、2022年4月4日より、東京証券取引所における市場区分の見直しが行われ、従来の(東証1部、東証2部、ジャスダック及びマザーズ)区分から、プライム市場、スタンダード市場及びグロース市場の3つの区分に再編成が行われたが、本稿では、2014年4月1日から2022年4月1日までの期間については、東証1部、2部などの旧区分、2022年4月4日以後2025年12月31日までは、プライムやスタンダード等の再編成後の新しい市場区分に基づいて分類している。現在の市場区分でいうと、プライム上場の企業よりも、スタンダード上場の企業やグロース市場上場の企業の比率の方が相対的に若干高くなっている。

不適切な会計処理の分類と発覚の原因等

 不適切な会計処理を生じさせた当事者を分類すると、表3のとおりであった。

 なお、表3の「元役員・従業員」の区分には、組織的ではない、個人的な不正行為を分類している。新聞報道等でもよく取り上げられているが、親会社に比べてガバナンスが効きにくく、監視の目が届きにくいとされる連結子会社(特に中国をはじめとする海外の子会社)で不適切な会計処理が発生した事例が多くなっている。
 次に、不適切な会計処理を形態別に分類すると、表4のとおりとなった。

 粉飾決算が全体の半分程度、残りの半分が主に個人の行為に起因する資金の横領・着服等や実体のない取引への関与等であったが、最近は後者の割合が増える傾向にある。コロナウイルス感染症の蔓延を契機とした在宅勤務の普及や対面での打合せの機会の減少などによってチーム内のコミュニケーションが疎遠となり、相互牽制の機会が失われて、個人が主導する不正が起こりやすい環境ができやすくなっている可能性がある。会社の業績、特に売上高や利益を実態以上によく見せることを狙ったいわゆる粉飾決算がほぼ半分を占めてはいたが、その一方で、個人的な動機(ギャンブル等にのめりこんだ末の借金返済や、個人的な遊興費への充当等)による会社の資金の横領や着服等も少なからず存在していた。また、国内外の連結子会社において、本社が十分に管理監督をしないままに現地の担当者に業務を任せきりにしていたり、未知の土地で取引の拡大を拙速に進めようとしたりした結果、不透明な取引や循環取引等に巻き込まれて多額の不良債権や損失が発生したような事例もあった。さらに、「会社の私物化」には、オーナー経営者や創業者が、取締役会の決議等を経ぬままに私情が絡んだ投資を行ったり、公私混同を行ったりしていたような事例が含まれていた。
 さらに、不正の具体的な内容を分類すると、表5のとおりであった。

 一つの不適切な会計処理の事例の中に、表5の項目が複数含まれることはよくあり、むしろそのような事例のほうが多いが、ここでは便宜的に、それぞれの事例をどれか一つの項目に分類している。最後に、不適切な会計処理が発覚した契機を分類すると、表6のようになった。
 調査報告書上は必ずしも明記されていないが、表6の「社内調査」には、企業が自ら異変に気付いて行った自発的な社内調査のほかに、内部・外部から内密の情報提供を受けたうえでの社内調査も相当数含まれているものと思われる。一般的には、不適切な会計処理を外部者が発見することは難しく、したがって不適切な会計処理を発見するためには内部通報のほうが有効であると言われることもあるが、今回の調査結果を見る限り、会計監査人(監査法人)や外部からの指摘、あるいは税務調査における指摘など、外部の第三者が介在したことをきっかけとして不適切な会計処理が発覚したケースがかなりの部分を占めていた。また、会計監査人が不適切な会計処理の兆候等を発見して会社側に未然に是正を求めたようなケースや、不適切な会計処理が行われはしたものの、第三者委員会を設置しての調査が必要となるほどの規模になるまでの拡大は防いだようなケース(いずれも今回の調査分析の対象外)も少なからず存在すると思われる。社内の内部統制による相互牽制や内部的な自浄作用に加え、会計監査人や税務当局等による外部からのけん制やモニタリングも、不適切な会計処理の抑止に一定の効果があるものと思われる。

2025年に調査報告書が公表された不適切な会計処理の事例

 本稿の後段では、2025年1月1日から2025年12月31日までに第三者委員会による調査報告書が公表された事例のべ24件(22社)の内容を要約して紹介することとしたい。
 各事例の不適切な会計処理の概要を要約すると、表7のとおりである。

終わりに

 2025年度に調査報告書が公表された不正事例の中で、圧倒的に衝撃度や注目度が高かったのは、オルツ(株)の事例ではないだろうか。オルツ社は、最先端のAI技術を生かした事業で注目を集めたスタートアップ企業であり、2024年10月に東証グロース市場に株式を上場したが、それから1年も経たない2025年7月25日に第三者委員会による調査報告書が公表され、2021年12月期以後の各年度の売上高のおよそ8割から9割が過大計上(広告宣伝費や研究開発費を相手勘定とした水増し計上)であると認定された。そして2025年7月に東京地裁に民事再生法の適用を申請し、8月に適用開始が決定。株式は8月31日付で上場廃止となった。さらに10月9日に、元社長、元CFO、及び元執行役員2名の合計4名の元経営者が東京地検特捜部に逮捕されている。この「オルツ・ショック」ともいえる出来事を契機に、東証はこれまで「上場10年後に時価総額40億円以上」だった上場維持基準を、2030年以降から「上場5年後に時価総額100億円以上」に引き上げる方向で検討を進めている。「オルツ・ショック」の各方面への余波はまだ収まりそうにない。

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