税務ニュース2026年03月27日 取引先参加のゴルフ大会費の経費性否定(2026年3月30号・№1116) 審判所、ロータリークラブ費も売上拡大の有無にかかわらず経費算入不可
事業所得の計算上、支出を必要経費に算入するためには、その支出が業務と直接の関連性を有し、かつ業務の遂行上必要であることが求められるが(所法37①)、特に接待交際費や会議費等については家事費(家事関連費)との境界が曖昧になりやすく、実務上、課税当局との間で最も紛争が生じやすい領域となっている。
こうした中、国税不服審判所が令和7年9月18日、税理士・行政書士業における必要経費の範囲が争われた事案について、取引先を招待したゴルフ大会費用の必要経費性を否定する裁決を下していたことが判明した。本件では他の費用の必要経費性も否認され争われたが、その一部については更正処分等が取り消されている。
本件で争点となったのが、①ゴルフプレー代・ゴルフ場の年会費、②請求人が主催したゴルフ大会に係る費用、③ロータリークラブの入会金・年会費、④税理士会等が主催する新年意見交換会の会費、⑤備品購入費、⑥祝い金、餞別、その他贈答品代等のほか、⑦会議費、⑧同居する妹への給与等の必要経費性である。国税不服審判所はこのうち①、②、③、⑦、⑧の必要経費性を否定した。その理由は以下のとおりとなっている。
① ゴルフプレー代等
3年で合計200回を超えるゴルフプレーをしているところ、領収証の多くに利用人数が「1名」である旨の記載がある。また、元帳にも接待の相手方の記載がなく、同伴者の氏名や、事業と直接関連を有し事業遂行上必要であったことについての具体的な説明もなく、資料の提出もない。
② ゴルフ大会に係る費用
ゴルフ大会の参加者のうち、取引先であると認められる者は一部にすぎず、参加者の大半は税理士・行政書士業との関係が不明である。したがって、当該ゴルフ大会に係る費用が事業と直接関連するとは直ちにいえず、当該事業の遂行上、ゴルフ大会を開催しなければならない必要性があるとは認められない。
③ ロータリークラブの入会費・年会費
ロータリークラブの奉仕活動等の活動は営利性・有償性を有さず、これを行うことにより報酬を得ていた事情も見当たらない。仮に売上げの拡大があったとしても「間接的な効果」にすぎないから、事業と直接関連を有し事業遂行上必要なものであるということはできない。
⑦ 会議費
元帳に支払日・支払先・支払金額等は記載されているが、会議の相手方、会議の内容・必要性についての記載が見当たらず、調査においても回答がない。
⑧ 同居する妹への給与等
水道料金の一部以外に、妹との間で家事上の必要経費の精算が行われているとはいえず、妹が海外在住の夫と生計を一にする証拠も見当たらない。したがって、妹は請求人と「生計を一にする」親族に当たるものと推定されるから、所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)の規定により必要経費に算入できない。
一方、国税不服審判所は、以下の費用については必要経費性を全部又は一部肯定した。
④ 税理士会等が主催する新年意見交換会の会費
意見交換会は、確定申告直前期の税務署署員による説明会の直後に行われたもので、税務署幹部も出席し、説明会の内容について意見交換を行うことも想定されたものであって、説明会と一体性を有する。主催団体の領収証により出席の事実も認められ、金額も5,000円と社会通念上相当な範囲である。
⑤ 備品
事務所に設置され、使用されているものは、購入者が親族であることや用途が明らかでないというだけで事業との直接関連性がないとはいえず、必要経費に算入できる。一方、事務所に設置されていると認められないものは必要経費に算入できない。
⑥ 祝い金、餞別、その他贈答品代等
顧客・売上先を相手先とするものである証拠が示されたものは、金額も社会通念上相当であるから必要経費に算入できるが、相手先の氏名が不明であるものや、相手先の事業との関連性が不明であるものは必要経費に算入できない。
いずれも先例や従前の課税実務に沿った判断ではあるものの、接待交際費については、相手方の属性や事業との関連性を具体的に記録・整理しておかなければ、必要経費性の立証は困難であることが改めて示された。特に、請求人が主宰したゴルフ大会に係る費用について、取引先を招待していたにもかかわらず必要経費性が否定された点は、抽象的な業務関連性を主張するだけでは足りず、具体的資料による裏付けが必要との認識を迫るものとなった。また、売上拡大や関係強化への期待といった“間接的効果”のみでは、必要経費性の根拠として不十分であることも示唆された。税理士等の士業にとってゴルフは日常的な交際手段の一つであるだけに、インパクトの大きい裁決といえよう。
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