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解説記事2020年06月08日 SCOPE 取締役報酬の株式無償発行、ストックオプション会計を準用(2020年6月8日号・№837)

SCOPE
8月頃までには公開草案を公表へ
取締役報酬の株式無償発行、ストックオプション会計を準用


 企業会計基準委員会(ASBJ)は現在、改正会社法で導入されることになった「取締役の報酬等としての株式の無償発行」の会計処理について検討を行っているが、ストック・オプション会計基準を準用する方向で検討を行っていることが分かった。インセンティブ効果を期待して付与される点など、ストック・オプションと同様であるとされているからだ。同委員会では7月又は8月に公開草案の公表を目指すとしており、会計基準等の確定後はこれをもとに法務省が会社計算規則を取りまとめる予定となっている。

法務省からの要請で会計基準を開発へ

 企業会計基準委員会では、財務会計基準機構の基準諮問会議(会計基準の検討テーマなどを審議する機関)からの提言を踏まえ、昨年12月11日に公布された改正会社法(施行は、原則として公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内)で導入されることになった取締役等の報酬等として株式を無償発行する場合の会計処理について検討を開始している。
 現行、株式会社が株式報酬を取締役に付与しようとする場合には、会社法上、募集株式を無償で発行することができないと解されているが、今回の改正会社法では、上場会社は定款又は株主総会の決議により無償で株式又は新株予約権を取締役等の報酬等として交付することが可能になっている。パフォーマンス・シェア(業績連動株式報酬)やリストリクテッド・ストック(譲渡制限付株式)などが想定されている(表1参照)。

【表1】想定される典型的な株式報酬の形態

(事前交付型)
・事前に譲渡制限を付した株式を交付
・一定期間の勤務や一定の業績目標等の達成等によって譲渡制限を解除
・譲渡制限が解除されなかった株式は会社が無償取得
(事後交付型)
・一定の業績目標等を達成した場合など、事後に株式を交付

 しかし、取締役等の報酬等として金銭の払込等を要しないで株式を発行等する場合における会計処理は存在しないことから、法務省が基準諮問会議に会計処理検討の依頼を行っていたものである。
新株予約権は検討せず
 なお、改正会社法では、取締役等の報酬等として新株予約権を発行する場合にも新株予約権の行使に際して金銭の払込み等を要しないこととされるが、いわゆる1円ストック・オプションについて払込みを要しないとしたものであり、ストック・オプション会計基準の範囲に含まれるため、特段の基準開発は行わないとしている。

取締役報酬の株式無償発行はストック・オプションと同様の効果

 具体的な会計処理は、ストック・オプション会計基準を準用する方向で検討が進んでいる。「取締役の報酬等としての株式の無償発行」の事後交付型については、インセンティブ効果を期待して付与される点、権利確定までは株主としての権利を有さない点でストック・オプションと同様の経済効果があるとし、事前交付型については、割当日に株主となり権利確定までの間に配当請求権や議決権等の権利を有する点でストック・オプションと異なるものの、インセンティブ効果を期待して付与される点や権利確定するまでは譲渡により経済的利益を享受することができない点はストック・オプションと同様であると分析しているからだ。
払込資本を計上
 例えば、事前交付型(表2参照)では、取締役の勤務が開始される前に自社の株式が交付される。ただし、譲渡制限が付されており、譲渡制限は一定期間の勤務や一定の業績目標等の達成等によって解除されるため、解除されるまでの期間は株式の売却により便益を得ることができない。したがって、インセンティブ効果を期待して自社の株式が付与される取引と考えられ、ストック・オプションと同様であるとしている。

【表2】「取締役の報酬等としての株式の無償発行」の事前交付型の取引

・株主総会において、取締役の報酬等について会社法361条1項3号に掲げる募集株式の数の上限等を決議する。
・取締役会において株主総会で決定した募集株式の交付を決議する。
・取締役との間で募集株式の引受に関する契約を締結する。
・割当日において契約に基づく譲渡制限を付した株式を交付する。
・一定期間の勤務や一定の業績目標等の達成等によって譲渡制限を解除する。
・譲渡制限が解除されなかった株式は、会社が無償取得する。

 この場合、企業が取締役から取得するサービスは、その取得に応じて費用として計上し、対応する金額を勤務期間の各期に払込資本として計上する方向となっている。ストック・オプションは新株予約権者との間の取引であり、費用に対応する金額を新株予約権として計上することになるが、「取締役の報酬等としての株式の無償発行」の取引は株主との間の資本取引であるため、払込資本を計上することになる。
 また、一定期間の勤務や一定の業績目標等の不達成により、譲渡制限が解除されなかった場合には、会社が自社株式を無償で取得することになるが、この場合は企業会計基準適用指針第2号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」第14項にしたがい、会計処理は行わず自己株式の数のみの増加として処理することになるとしている。
 報酬費用の測定についてはストック・オプション会計基準第5項から第7項をベースに検討されている。
 なお、事後交付型についても、基本的には事前交付型と同様の取扱いとなるよう検討されている。

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