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コラム2011年02月14日 【編集部レポート】 議事録から読み解く会社法制部会第一読会の審議(8・了)(2011年2月14日号・№390)

編集部レポート
議事録から読み解く会社法制部会第一読会の審議(8・了)
会社分割の規律、組織再編における従業員意見など

 会社法制部会(部会長:岩原紳作東京大学教授)の第8回会議(12月22日開催)では、“親子会社に関する規律”の審議のうち「企業結合の形成過程等に関する規律」の検討を継続し、「第7 組織再編の手続に関する検討事項」を審議。その後“会社法制に関するその他の検討事項”の審議を行い、第一読会を終了した。

詐害的な会社分割、法的にどう手当てするか  会社法制部会の審議は、当日の会合をもって第一読会を終え、今年に入ってからはすでに第二読会の初回の会合を開催している(本誌389号12頁参照)。議論は第一読会の審議を踏まえて行われており、これまでにどのような検討がどのような位置付けでなされてきたのかを参考としてまとめた。本誌参照頁には、部会資料の記載をなるべく忠実に反映する形で掲げた論点と論点に係る問題意識等を一覧にしてある。

 上記「第7」は、主に濫用的・詐害的な会社分割への対処法、組織再編手続における従業員の意見表明等について検討を求めるもので、具体的な論点は表1に掲げたとおりとなる。

 会社分割における債権者の取扱いは現行、表中「背景にある問題意識等」欄の上から2番目の のように規律されており、詐害的な会社分割が行われているとされる(会社法制部会第4回会議参考資料15・本渡委員=三原幹事作成「会社法制の見直し(現行会社法に関する要改正事項)」参照)。すなわち、「債権者の関与が全くない状態で、債務者である会社が承継会社等に対して優良事業や資産を承継させることを内容とする会社分割をし、承継会社等に債務の履行を請求することができる債権者と残存債権者とを恣意的に選別した上で、債務者である分割会社自身は倒産する」(事務局説明より抜粋)といった類型の会社分割がみられ、このような事例に対しては何らかの法的対応が必要ではないかという問題意識が論点1(1)の根幹にある。
 残存債権者の保護を図る方策とし、事務局からは、(a)事後的に詐害行為取消権(民法424条)の行使によるべきとする解釈論、これを肯定する裁判例(東京高判平成22年10月27日金法1910号77頁。本誌379号4頁参照)があること、詐害行為取消権の行使によることについて、その効果、会社分割の無効の訴えとの関係をどのように考えるべきかといった説明・指摘があるほか、(b)会社分割がされ、承継会社等が商号の続用をしているときは、会社法22条の類推適用により分割会社の債権者が承継会社等に対して債務の履行を請求することを認める旨の判例(最判平成20年6月10日裁判集民事228号195頁)があること、22条について、現実に機能するのは債務者である譲渡人の経営の状態が悪化している場面であるため、その要件を詐害的な再建の抑止という観点から、商号の続用から詐害性を基礎としたものへと改正すべきであるとの指摘があることの説明がある。
 当日の審議では、この論点につき意見を述べた委員・幹事のうち6名が対応の必要性を明確に指摘。加えて5名の委員等がいわば対応の必要性は前提とし、その方策を述べている。
 方策としては、議論の終盤で部会長が総括するように、①民法424条のような一般的な規定に委ねるのではなく、会社法のなかの制度として対処すべきことにほぼ異論がなく、②「債務の履行の見込み」の要件によるような形での対処には反対が多かった。また、詐害的な会社分割の問題提起を行った法曹関係Aは会社分割制度の効用を、そして会社関係(経営)Aは過剰な手続への懸念を示しながら、両者とも問題事例に対する限定的な対応を強く求めている。
 審議で述べられた方策の仔細をみると、法曹関係Aは債務超過会社または会社分割により債務超過となる会社の場合に限り、分割後に債務の履行を請求できる知れたる債権者に対して格別の通知を行うことなどを提案。大学関係Lは債権者異議手続と分割当事会社の連帯責任の適切な組合せによる対応と、連帯責任を拡大する場合の要件の検討につき、それぞれ必要性を指摘。大学関係Aは合併の場合を説明しつつ、残存債権者を一律に債権者異議手続の対象とすることも考慮すべきではないかなどと述べる。
 一方で大学関係Gは、会社法制定前後の状況、上記・東京高裁判決の事案を振り返り、新たな「事業の移転があった場合の会社法22条型の救済」を提案。債務超過という要件を「詐害性の要件」にした方がうまくカバーできるとした。大学関係Bも22条の適用対象を拡充するアプローチを支持し、大学関係Dも「当面の法改正として」賛同する。関係官庁Aも債権者異議手続を拡充する方向性には疑問を表明している。
 かかる「22条アプローチ」に対しては、大学関係Lにおいて、事業ではない単なる資産の譲渡がなされた場合の債権者保護に懸念を表明。大学関係Fは、詐害的な会社分割そのものに対する無効・取消しの訴えの手当てを提案した。
 大学関係I大学関係Lの懸念に賛同しつつ、個別の資産であれ、譲渡であれ会社分割であれ、カバーする方向での検討を提案。差止め・無効の実質的な要件が検討課題となることも指摘した。大学関係Jは事業や個別資産の譲渡にまで新規制を課すことは考えていないとする。
 なお、表1論点1(2)では大学関係者3名が明確化を支持。論点2では、会社法での制度創設には発言者9名中6名が反対意見を述べた。

名簿閲覧請求の拒絶事由、3号削除が大勢  “その他の検討事項”の論点は表2・表3のとおり。第1の論点は、公開買付規制・大量保有報告規制・委任状勧誘規制等の規制違反をもって議決権行使の停止や制約を図るべきかである。問題提起を行った官庁関係者以外の発言者は部会長を含めて7名。経営関係者から多くの実務上の課題が指摘され、慎重な審議が要請されたほか、大学関係者3名が金融庁等の権限による解決の方向性を指摘する。また、大学関係者2名がそれぞれ①何らかの規制の必要性、②立法論としての可能性を指摘。部会長は、具体的場合を詰め、今後検討を継続するとした。


 第2の検討では、制度趣旨等に疑念が示されるなか、現行の規律の大規模公開会社・中小会社における機能・効果の差異が指摘された。発言者8名中、2委員から見直しの必要はないとの明言がある。なお、法曹関係Cの説明により、裁判実務においてこの規律の利用が、中小規模の会社による「相続争いが実態の事件がほとんど」であることが明らかになっている。
 第3では発言者9名中6名が端的に削除に賛同。その他の各号等に係る改正提案も複数ある。明確な見直し反対が経営関係者からある。
 第4では、につき裁判実務への配慮が特に要請された。②(b)に係る改正要望、また委員会設置会社の利便性改善の提案もされている。

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