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解説記事2020年06月22日 SCOPE 最終的に臨時株主総会は開催、招集請求権の侵害はなされず(2020年6月22日号・№839)

東京地裁、中止決議のIRで名誉棄損認める
最終的に臨時株主総会は開催、招集請求権の侵害はなされず


 JASDAQ上場の五洋インテックスの臨時株主総会の開催を巡り、原告の株主らが同社の役員などに対して損害賠償請求を求めていた事件で東京地方裁判所(西山渉裁判官)は令和元年12月16日、臨時株主総会が開催されていることにより、原告らの株主総会招集請求権が侵害されたということはできないと判断したが、名誉棄損での損害賠償を一部認めた。同社の臨時株主総会開催を巡っては、一旦開催が決まった後に中止決議がなされたが(さらにその後開催)、その理由として原告株主らの株価操縦の疑いが同社のIRによって開示されていた。

IRで原告らの株価操縦の疑いを臨時株主総会の中止理由に

 本件は、五洋インテックスの株主である原告らが、同社の取締役であった被告らに対し、①原告らによる株主総会招集請求を受けて同社がした臨時株主総会を開催する旨の確約及び取締役会決議に従って、同総会を開催する任務又は義務を負ったにもかかわらず、その後の取締役会で同総会の開催を中止する旨の決議に賛成したことによって原告らの株主総会招集請求権を違法に侵害し、また、②原告らが株主総会招集請求に関連して同社の株価操縦を行ったとの印象を与えるIR等の公表に関与したことによって原告らの名誉や信用を違法に侵害したなどとして、会社法429条1項又は共同不法行為に基づき、損害賠償請求を行ったものである。
 原告らは、平成30年11月19日、五洋インテックスに対し、会社法297条1項に基づき、臨時株主総会の招集請求を行い、名古屋地裁に五洋インテックスの株主総会の招集を許可する決定を求める申立てを行った。この申立てを受け同社は平成31年3月19日までに臨時株主総会を開催する旨を公表したが、平成31年3月4日開催の取締役会において臨時株主総会の開催を中止する旨の決議をした上で、中止決議の理由を説明する内容のIRにおいて、臨時株主総会の招集請求をした原告らに株価操縦の疑いが存在することを理由の1つとして挙げていた(その後、名古屋地裁は平成31年3月6日に臨時株主総会の招集を許可する決定をし、同年4月28日に臨時総会が開催された)。
 原告らは、五洋インテックスが臨時株主総会を遅くとも平成31年3月19日までに開催することを確約した上で中止の決議を行った行為は取締役としての任務懈怠又は共同不法行為を構成するなどと主張した(参照)。

【表】争点及び当事者の主張

原告(株主ら) 被告(役員ら)
(争点1)中止決議による原告らの株主総会招集請求権の違法な侵害の有無
 株主である原告らが総会招集請求によって株主総会招集請求権を行使したのであるから、五洋インテックスには遅滞なく株主総会を招集して開催する義務があった。そして、同社が、遅くとも平成31年3月19日までに総会決議を目的事項とする臨時株主総会を開催することを確約した上で、開催決議をしたことにより、その取締役であった被告らは、中止決議に賛成して開催任務又は義務を怠り、原告らの株主総会招集請求権を違法に侵害した。したがって、被告らの行為は、取締役としての任務懈怠又は共同不法行為を構成する。  株式会社は、少数株主から株主総会招集請求を受けたとしても、これに応ずる絶対的な義務はなく、経営判断に基づいて招集の要否を選択することが許されているから、五洋インテックスとして開催決議に基づく招集を不要と判断した以上、被告らが中止決議に賛成したことが取締役としての任務懈怠又は共同不法行為を構成するものではない。
(争点2)中止決議IR等による原告らの名誉及び信用の毀損の有無
 五洋インテックスは、原告らが総会招集請求に関連して同社の株価操縦を行ったとの印象を与える記載部分を含む中止決議IR等を公表したものであり、その取締役であった被告らは、その公表に関与し、原告らの名誉及び信用を違法に侵害した。したがって、被告らの行為は、取締役としての任務懈怠又は共同不法行為を構成する。  五洋インテックスは、株価操縦が疑われるなどの状況の下、中止決議をした事実を中止決議IRで公表しただけであり、これが原告らの名誉や信用の毀損に当たるというのは言い掛かりであり邪推にすぎない。また、中止決議IRを公表したことは経営判断であり、違法と評価されるものではない。

取締役としての任務懈怠又は共同不法行為の可能性の余地もあるが……

 裁判所は、原告らが侵害の対象として主張する「株主総会招集請求権」が会社法上の株主総会招集請求権であるとすれば、原告らによって行使された当該請求権に基づき総会が開催されているから、原告らの株主総会招集請求権が侵害されたということはできないとした。
 他方で、裁判所は、被告らが合意に基づき臨時株主総会の開催を覆す内容の中止決議に賛成したことは臨時株主総会を開催する債務の不履行を招いたという意味において、取締役としての任務懈怠又は共同不法行為を構成する可能性があるとみる余地もあるとしたが、原告らは株主総会招集請求権の侵害によって発生したとする「財産的損害」の具体的内容に関する主張立証をしないから原告らに財産的侵害が発生したと認めることは困難であると指摘。原告らの被告らに対する株主総会招集請求権の違法な侵害を理由とする会社法429条1項(役員等の第三者に対する損害賠償責任)又は共同不法行為に基づく損害賠償請求はいずれも理由がないとした。
名誉棄損で慰謝料は各30万円
 ただし、裁判所は、本件中止決議IRは、原告らが株主総会招集請求に関連して五洋インテックスの株式に関する株価操縦に関与している疑いが存在する旨の事実を摘示するものと理解されるのが通常であり、原告らの社会的評価を低下させるものというべきであると指摘。中止決議IRをインターネット上の五洋インテックスのウェブサイトに掲載したことは、原告らの名誉を棄損するものとして共同不法行為を構成するというべきであるとし、慰謝料額は各30万円とするのが相当であるとの判断を示した。

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