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解説記事2020年07月06日 SCOPE 評価通達6項を巡る税務訴訟、東京高裁も納税者敗訴(2020年7月6日号・№841)

SCOPE
評価通達の形式的適用で租税負担の公平を害す
評価通達6項を巡る税務訴訟、東京高裁も納税者敗訴


 相続財産の一部の土地及び建物の価額の評価について、課税当局が財産評価基本通達6項を適用し、鑑定評価額により評価し更正処分等が行われたことに対する取消請求事件で、東京高等裁判所(深見敏正裁判長)は6月24日、評価通達の定めによらず、鑑定評価額に基づく評価額としたことは適法であると判断。原審の東京地裁の判断を支持し、高裁でも納税者側が敗訴するという結果となった。

評価通達が不当な結果を招来すると認められるような“特別の事情”あり

 本件は、納税者(控訴人)が相続により取得した一部の土地及び建物の価額の評価について、評価通達に定める方法(路線価評価等)により相続税の申告を行ったが、課税当局が本件不動産の価額は評価通達の定めによって評価することが著しく不適当であるとして、評価通達6項を適用し、鑑定評価額により評価し更正処分等を行ったものである。納税者と国の主張する評価額ではおよそ4倍のかい離が生じていた。
 原審の東京地裁は、本件不動産の相続税法22条に規定する時価は鑑定評価額であるとし、納税者の主張を斥けていた(本誌802号、804号、813号参照)。これを不服とした納税者が控訴していたものである。
東京高裁も鑑定評価額を時価
 東京高裁は、本件各不動産に係る相続税法22条に規定する時価は評価通達の定めによって評価した通達評価額とせず、鑑定評価に基づく鑑定評価額としたことは適法であるとの判断を示した。東京高裁は、原審の東京地裁の判決を引用し、評価通達の定める評価方法によっては適正な時価を適切に算定できないなど、評価通達の定める評価方法を形式的に全ての納税者に係る全ての財産の価額の評価において用いるという形式的な平等を貫くことによって、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害し、法の趣旨及び評価通達に定められた方法によることが不当な結果を招来すると認められるような特別の事情がある場合には、他の合理的な方法によって評価することが許されると解されるとした。
納税者は“特別の事情”の判断基準を示すべき
 また、控訴審では、納税者が、評価通達の定めによらずに評価する要件である「特別の事情」の一般化した判断基準が示されていなければ、時価評価の予測可能性と法的安定性を害し、租税法律主義に違反すると主張していた(参照)。

【表】争点及び当事者の主張

納税者(控訴人)の主張 東京高裁の判断
 財産を評価通達の定めによらずに評価する要件である「特別の事情」については、処分行政庁のみならず、納税者にとっても、その要件に該当する評価根拠事実を特定することができる程度の一般化した判断基準が示されていなければ、時価評価の予測可能性と法的安定性を害し、租税法律主義に違反する。  時価とは課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は評価通達の定めによって評価した価額による。その上で、評価通達6において、評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産については、評価通達の定めによって評価されない場合があることを定めていることからすると、評価通達の定める評価方法以外の方法によって評価した価額を当該財産の時価とすることがどのような場合であるかについて通達等によってあらかじめ示されていなかったからといって、租税法律主義に違反するものとは解されない。
 時価評価に全く影響しない相続開始後の事情や租税回避又は租税負担の減少の意図などは、財産を評価通達の定めによらずに評価する要件である「特別の事情」に当たらず、租税回避の否認のための特段の規定もない以上、評価通達6を租税回避措置の否認のために用いることは租税法律主義に反する。  処分行政庁は、通達評価額と鑑定評価額との間の著しいかい離から、本件各不動産を評価通達の定めによって評価することが著しく不適当であるなどとして、本件各不動産を評価通達の定めによって評価しないものとしたのであり、単に税負担の軽減を結果としてもたらす行為を阻止するために評価通達6を適用したものとは認められない。
 各不動産に係る各鑑定評価額と各通達評価額との3ないし4倍の開差について、特に異常なものではなく、本件各不動産の周辺の同種又は類似する物件についても同じく普遍的に存在することからすると、本件各不動産を評価通達の定めによって評価しない「特別の事情」に当たらない。  評価額の開差は、それ自体が大きなものと認められる。また、それによって生ずる税額の差や、被相続人及び控訴人らが、あえて各不動産の購入及び被相続人の相続開始時の残債務に係る各借入れが近い将来発生することが予想される本件被相続人の相続において控訴人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、それを期待して、各不動産の購入及び各借入れを企画して実行し、その結果、各借入れ及び不動産の購入がなければ、本件相続に係る課税価格は6億円を超えるものであったにもかかわらず、各通達評価額を前提とする各申告による課税価格は2,826万1,000円にとどまり、基礎控除により本件相続に係る相続税は課税されないことになることなどからすると、本件各不動産については、評価通達を適切に算定することができないものと認められる。
 処分行政庁は、国税庁長官の指示を待たず、約1年前に不動産鑑定会社2社に鑑定評価を依頼し、鑑定評価書を入手していることが、「国税庁長官の指示を受けて評価する」とした評価通達6に違反するものであって、手続上の重大な法的瑕疵に当たる。  評価通達6に定める国税庁長官の指示の有無が本件各更正処分の効力に影響を与えるものではない。評価通達6は、評価通達6に基づいて評価を行って課税処分をすることを国税庁長官の指示に係らしめたものであって、課税庁が国税庁長官の指示に先立って鑑定等を実施することを禁止したものとは解されない。

 この点について東京高裁は、評価通達6項において、評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産については評価通達の定めによって評価されない場合があることを定めていることからすると、評価通達の定める評価方法以外の方法によって評価した価額を当該財産の時価とすることがどのような場合であるか通達等によってあらかじめ示されていなかったとしても、租税法律主義に違反するものとは解されないとした。

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