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解説記事2020年07月13日 ニュース特集 投資簿価修正&支払利子控除計算(2020年7月13日号・№842)

ニュース特集
グループ通算制度・改正政令解説 第一弾
投資簿価修正&支払利子控除計算


 令和2年6月26日、グループ通算制度に係る政令が公布された(省令は6月30日公布)。令和2年度税制改正で導入されたグループ通算制度だが、制度の詳細の相当部分が政令に委任されていたことから、その内容に注目が集まっていた。
 政令による改正項目は多岐にわたるが、その中でも企業や実務家の関心が高かったのが、投資簿価修正と受取配当益金不算入制度における支払利子控除額の計算方法だ。
 このうち投資簿価修正については、税制改正大綱の記述を踏まえると、グループ通算制度の下では「買収プレミアム」に相当する金額が株式の譲渡原価に算入できず、その結果、当該株式の売却時に譲渡益の過大計上及び譲渡損の過少計上が生じるのではないかとの懸念の声が上がる一方、政令段階で何らかの“配慮”がなされるのではないかとの期待もあったが、結論としては政令では何ら手当てはされず、懸念は現実のものとなった。
 受取配当益金不算入制度については税制改正大綱に「関連法人株式等に係る負債利子控除額を、関連法人株式等に係る配当等の額の100分の4相当額(その事業年度において支払う負債利子の額の10分の1相当額を上限とする。)とする。」とのみ記載され、法律段階を含め、支払利子控除額の具体的な計算方法は示されていなかったが、今般公布された改正政令により、「負債利子の額の10分の1(10%)」はグループ全体で計算することや、グループ内利子は除外すること、また、負債利子配賦額の按分計算は「選択適用」となることが明確になっている。
 本特集では、「グループ通算制度・政令改正 第一弾」として、企業や実務家の関心が高かった両制度について詳細に解説する。

投資簿価修正

「買収プレミアム」の株式譲渡原価算入不可が“確定”

 グループ通算制度では、利益・損失の二重計上の防止の観点から投資簿価修正の仕組みが変更されている。この点について令和2年度税制改正大綱には右記の記述があったが、その具体的な内容については法律にも記載がなく、政令待ちとなっていた。

 通算グループからの離脱法人の株式の離脱直前の帳簿価額を離脱法人の簿価純資産価額に相当する金額とする。

 企業買収や事業買収は簿価純資産価額以上の金額、すなわちプレミアム付で行われるのが一般的だが、大綱通りに法制化がなされた場合には、通算子法人に係る買収プレミアムが通算子法人の通算グループ離脱時に考慮されないことになる。すなわち、買収プレミアム相当額が通算子法人株式の譲渡原価に算入できず、当該通算子法人の株主たる通算法人において、連結納税制度に比べ譲渡益の過大計上又は譲渡損の過少計上につながることになる。
 グループ通算制度が導入された令和2年度税制改正議論においては、グループ調整計算や欠損金の通算の維持、「開始・加入時の」時価評価/欠損金切り捨ての緩和が最大の関心事となっており、この問題はほとんど意識されていなかったが、年明けになってから、企業や実務家の間で懸念の声が上がり始めた(本誌833号4頁〜参照)。
 こうした中、政令段階で何らかの“配慮”がなされるのではないかとの期待も高まっていたが、結局、政令では何ら手当てはされず、大綱通りの決着となった。すなわち、通算グループから離脱する法人の株式の離脱直前の帳簿価額は、離脱法人の「簿価純資産価額」となる。
 通算グループからの離脱法人の株式の離脱直前の帳簿価額は、具体的には上記の通り計算することになる(法令119条の3⑤)。

 なお、離脱する通算法人の株主である通算法人においては、簿価純資産不足額が生じた場合には不足額に対応する分だけ利益積立金額が増加し、簿価純資産超過額が生じた場合には超過額に対応する分だけ利益積立金額が減少する(法令9条①六)。すなわち、離脱法人株式の簿価変動額の反対勘定が利益積立金額であるという点は、連結納税制度から変更されていない。

令和3年度税制改正での見直しは望み薄

 上記の通り、改正政令により、通算グループから離脱する法人の株式の離脱直前の帳簿価額は離脱法人の「簿価純資産価額」となることが確定したが、この結果、グループ通算制度の下ではこの買収プレミアム分が将来的な株式売却の際に売却原価に算入できず、現行の連結納税制度よりも不利となり、かつ、場合によっては単体納税よりも不利となることもあるとなれば、グループ通算制度を採用している企業グループの機動的な事業再編の足かせになる恐れもある。
 こうした中、この問題が令和3年度税制改正で議論されることを望む声も聞かれるが、本誌取材によると、今のところ政府内にそのような動きは見受けられない。現時点では、この問題が令和3年度税制改正議論の俎上に載る可能性は低いと言えよう。
 なお、離脱時の課税関係は投資簿価修正の改正のみならず離脱時の時価評価等、他の複数の規定も関係する。この改正を単独で評価すればデメリットが目につくが、まずは立法担当者の解説を確認し、総合的に評価する必要がある。

支払利子控除計算

負債利子はグループ全体で計算、グループ内利子は除外

 令和2年度税制改正大綱には、受取配当益金不算入制度について以下の記述があったところだ。

 関連法人株式等に係る負債利子控除額を、関連法人株式等に係る配当等の額の100分の4相当額(その事業年度において支払う負債利子の額の10分の1相当額を上限とする。)とする。

 ただ、法律段階では支払利子控除の具体的な計算法には一切言及がなかったことから、やはり政令の内容に注目が集まっていた。
 特に「負債利子の額の10分の1(10%)」という部分については、個別の通算法人の数値をそのまま用いるのか、あるいはグループ全体で計算するのか(その場合、グループ内利子は除外するのか)などの疑問が生じていたが、結論としては、「グループ全体」で計算を行うこととなった。また、グループ内利子は除外する。
 関連法人株式等に係る支払利子控除の計算手順は図表1の通りとなる。

【図表1】関連法人株式等に係る支払利子控除の計算手順

(1)関連法人株式等に係る配当等の額から控除する利子の額に相当する金額は、その配当等の額×4%とする(法令19条①)。
(2)支払利子の10%相当額が関連法人株式等に係る配当等の額の4%相当額以下である場合には、関連法人株式等に係る配当等の額から控除する利子の額に相当する金額は、上記(1)にかかわらず、支払利子の10%相当額とする(法令19条②)。

(注1)支払利子の範囲は現行と同じ。通算親法人と同時に終了する事業年度末において同一グループ内にある他の通算法人に対する支払利子は除外する(法令19条④)。
(注2)確定申告書、修正申告書又は更正請求書に所定の事項の記載をすることを(2)の適用要件とする(すなわち、選択制)(法令19条⑨)。
(3)通算法人の上記(2)の支払利子の額は、グループ全体の支払利子の合計額を各法人の関連法人株式等に係る配当等の額の合計額の比で按分した金額(支払利子配賦額)とする(法令19条④)。
(注1)支払利子の額には、関連法人株式等に係る配当等の額はあるが受取配当等の益金不算入制度の適用を受けない法人の支払利子の額及び関連法人株式等に係る配当等の額がない法人の支払利子の額を含む。
(注2)按分計算上の関連法人株式等に係る配当等の額は、受取配当等の益金不算入制度の適用を受けるものに限る。

 数字を入れた計算例を示せば図表2の通りとなる。

負債利子配賦額の按分計算は「選択適用」

 図表2で示した通り、例えばPでは、関連法人株式等配当額の4%(60)と支払利子の10%相当額の低い方を負債利子控除額とすることになるが、ここでいう支払利子はPにおいて個別に生じた700ではなく支払利子配賦額となる。支払利子配賦額は、グループ全体の支払利子の合計額を各通算法人の関連法人株式等に係る配当等の額の合計額の比で按分した金額であるため、500となる(1,000×1,500/3,000=500)。この結果、Pの支払利子の10%相当額は50となり、関連法人株式配当等の4%(60)よりも小さいため、Pの選択により50を負債利子控除額とする。
 ここでは「選択により」という点がポイントとなる。支払利子配賦額の按分計算は、企業によっては手間とも言える。金額的な重要性なども考慮の上、場合によっては、利子の10%の選択を「放棄」することもあり得る。大綱の段階では強制適用なのか選択適用なのかが不明だったが、政令により「選択適用」であることが明確にされている。

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