税務ニュース2020年08月28日 税賠で税理士法人が過失相殺求め控訴(2020年8月31日号・№847) 元関与先法人も賠償額の見直しを求め附帯控訴
元関与先法人(一審原告・被控訴人)は、税理士法人(一審被告・控訴人)との間で税理士顧問契約を締結していたところ、同契約の終了後に、税理士法人の職員が、元関与先法人の確定申告書類を偽造し、これを取引先の紹介を依頼してきた金融機関に提出するといった不法行為を行った。一審(東京地裁)は令和2年1月30日、税理士法人の選任監督上の過失を認容し、損害額(弁護士費用30万円を加算して60万円)を認定した。
これに対し税理士法人は、原告の対応にも過失があると主張し、控訴審では過失相殺が認められるべきとして控訴した。
税理士法人の主張は、①顧問契約の終了の事実を的確に告知していないということ、②取引関係にあったものの信義として控訴人に対して顧問契約の継続如何についての問い合わせ等がされていれば、今回の事態は回避された、というものである。
本件においては、職員の不法行為を基因とするものであったとしても、税理士法人は、元関与先法人、紹介を求めてきた銀行の対応に不信感を見せている。とりわけ、財務大臣に対する懲戒請求の申立て、警察への不法行為の告発により、税理士法人の業務、信用にダメージを受けたことが、過失相殺を主張する背景として窺える。
一方、元関与先法人は、「たとえ本件不法行為によって附帯控訴人が実際に融資拒否などをされていないとしても、本件不法行為によって被った無形損害は30万円に留まるものではなく、附帯控訴人の態度などを勘案すれば同種裁判例に倣い200万円を下らないというべきである。」などと主張し、賠償額の見直しを求め附帯控訴を行った。元関与先法人は、当初、税理士法人に対して顧問契約解除を通知したにもかかわらず、担当職員の隠ぺい行為もあり、解約後も顧問報酬が引き落とされ続けたことへの不信感がある(顧問契約解除後の顧問報酬については、一審係属中に返還が行われ、請求の縮減が行われている。)。一審判決では、税理士法人の過失が認められたものの、金融機関の信用失墜を招く事態であっただけに、賠償額には納得していないことが窺われる。
本件控訴審は8月5日に結審し、9月30日の判決言渡しが予定されている。
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